【フランス/ペンリー発、2003年12月4日】 12月4日、グリーンピースの活動家40人はフランス、ペンリーの原子力発電所敷地内で、「No Nukes, Go Wind」(原子力はいらない、風力を)と書かれたバナーを掲げてアピール行動を行った。同時に、同原子力発電所近くの海岸に発電用風車の模型10基を使ってメッセージを具体的に表現した。この抗議行動は、原子力発電の設備過剰にもかかわらず、フランス政府が新規の原子炉を同地に建設するとの発表を受けて、原子力ではなく環境にも経済的にもはるかに健全な選択肢である風力発電への投資の促進を訴えているもの。

「グリーンピースはフランス電力公社(EdF)に対して、危険でしかも経済的に不合理で無駄な原子力発電所を無理やり建設することをやめるよう強く要望している。今回建設が計画されているEPR(欧州加圧水型原子炉)とよばれる原子炉はとりたてて新しい技術でないどころか、時代遅れで安全性のきわめて低い設計の原子炉であり、政府はそれを危険なプルトニウム燃料を使って運転しようとしている。この原子力発電所が建設されれば高レベル放射性廃棄物を絶え間なく生み出しつづけることになる。」とグリーンピース・インターナショナルのヤン・ヴァンデプッテは現地で語った。

グリーンピースはフランス電力公社に対して、原子力発電所建設に投資される巨額の資金を、より安全で高い信頼性もすでに証明済みの風力発電設備の建設に向けるよう強く求めている。フランス国民の85%もこの選択肢を望んでいることから、風力発電は大多数の消費者の要望に応えることにもなる。すでにヨーロッパの数カ国ならびに多くの人々は、原子力から脱却してクリーンエネルギーによる未来を支持するとはっきりと表明している。

ところが、フランス原子力産業界はあらゆる良識に反して新たな原子力発電所を国民に押し付けようとしている。これは原子力産業の存続を主たる目的としていることは明らかだ。フランス電力公社は政府の助成金に支えられた原子力でヨーロッパエネルギー市場のシェアを獲得している。フランスによるこの莫大な電力供給は、ヨーロッパの送電網に過度の負荷をかけており、それは今年9月にイタリアで起きた大規模停電の主因にもなった。 (*注1)

グリーンピースは12月4日に『風力vs.原子力2003』と題したレポートを発表した。レポート (*注2) では、同じ投資額に対して風力は原子力の5倍の雇用を創出するだけでなく、2.3倍の電力を供給することができると報告されている。
計画されているEPR(欧州加圧水型原子炉)の建設コストは30~35億ユーロと試算されているが、同じ金額を風力発電に投資したならば、7,616MWの発電設備の建設が可能になり、計画中の原子力発電所が供給する予定の1,550MWを大きく上回ることになる。年間の発電量も風力が650万世帯相当の24TWhであるのに対して原子力はわずか10TWhに留まる。

近年、風力発電分野では産業革命といってもいいほどのめざましい技術革新が起こっている。ドイツでは昨年だけでも3,200MWもの風力発電設備が設置された。これは200万世帯を超える家庭の電力をまかなえる量である。EUでは2010年までに現在の3倍の設備容量、原子力発電に換算すると原子炉14基分の75,000MWの風力発電設備を設置する計画である。

原子力発電はもはや斜陽産業になりつつある。過去4年間に新規に送電網に電力を供給した原子炉は1基もない。また、新たな原子炉が送電網に電力を供給できるまでには少なくともあと10年はかかる。閉鎖されてゆく原子炉は後を絶たない。現実には、すでに風力は原子力をはるかに追い越してしまっているのである。


(*注1)参考文献: Interim Report of the Investigation Committee on the 28 september 2003 Blackout in Italy(2003年9月28日のイタリア停電に関する調査委員会の中間報告)
http://www.ucte.org/

(*注2) 『風力vs.原子力2003』はグリーンピース・フランスが研究機関DETENTEに委託した。原本はフランス語版。 http://www.greenpeace.org/france_fr//” target=”_blank”>http://www.greenpeace.org/france_fr/
英語の要約版は http://www.greenpeace.org/ にて入手可能。


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