【10月24日 アメリカ、パームスプリングス】 グリーンピースと欧州太陽熱発電産業協会(ESTIA)(注1)は、世界の太陽熱発電産業は2020年までに、技術が革新され、活気を増し、持続可能になっており、76億ユーロ の投資がなされている等の試算をまとめた研究報告書「太陽熱エネルギー2020」を発表した。この研究内容は、太陽熱発電が2020年までに、世界で最も日照の良い地域に居住する1億の人々にクリーンな電力を供給することが出来ることを示した現実的な青写真でもある(注2)。

報告書はカリフォルニア州パームスプリングスで開かれていたソーラーパワー世界会議(the Global Conference on Solar Power)で発表されたもので、2020年までに世界の電力の5%を太陽熱発電によってまかなう実行可能性を詳述している。世界の電力需要はその時までに現在の倍以上に増加すると見られているが、この5%という目標値はそれでも達成可能であるとしている。さらに、この報告書は、たった一種類の再生可能エネルギー技術だけで何が可能かを示しつつ、各国政府が取りうる施策の青写真をも提供している。太陽熱発電は、化石燃料や原子力発電とは異なり、地球環境に破壊的影響を与えることなく、世界のエネルギー需要と発展のニーズを満たすことが出来る、世界規模のエネルギー技術といえる。

グリーンピースのエネルギー問題担当者スヴェン・テスケは、「太陽熱発電産業は飛躍の準備が整っている。世界は速やかに持続可能でクリーンなエネルギー経済へ移行しなければならないということは、気候変動の問題に関する国際社会のコンセンサスである。太陽熱発電は、日照の強い地域において、手ごろで普及し安いエネルギー源を開発する上で、化石燃料にとって代わることのできる最上の選択肢のひとつである。」と述べている。

昨年南アフリカで開かれたヨハネスブルグ地球サミットの際に、「ヨハネスブルグ再生可能エネルギー連合」が設立された。サミットに参加した80カ国以上の国々は、明確で、野心的で、達成時期を明示した目標を設定することによって、世界の再生可能エネルギー源を継続的に増加させていくことに合意した。
報告書「太陽熱エネルギー2020」は、市場条件が適切であった場合、何が2020年までに達成可能かを概観している(注3)。たとえば大気中への二酸化炭素排出では、太陽熱発電で2020年までに計1億5400万トンを削減でき、国際的な地球温暖化防止目標に重要な貢献となる。

「この研究報告書の狙いは、テクノロジーの進歩を更に推し進め、それがもたらす成果を実現することにある。」と欧州太陽熱発電産業協会会長のゲオルグ・ブラクマン(Georg Brakmann)は述べ、「太陽熱発電は”発明”する必要はもはや無い、すでに世界が今日使うために用意ができている。太陽熱発電の拡大は世界で20万人の雇用を生みだすだろう。太陽熱発電の可能性が最も確かなスペイン、アメリカ、メキシコ、オーストラリア、南アフリカの5カ国はそれぞれ、すでに2020年までに100万キロワット<1000メガワット>の太陽熱発電プロジェクトの展開が予定されている」と可能性を強調している。

グリーンピースと太陽熱発電産業協会は、政治家や政策決定者、市民、エネルギー担当行政官、事業者、投資家その他関心部門が、それぞれ具体的な歩を踏みだすことによって太陽熱発電の普及を支援するよう呼びかけている。

(注1)
欧州太陽熱発電産業協会:the European Solar Thermal Power Industry Association (ESTIA)

(注2)
太陽熱発電は、太陽光線を集める装置から得られる熱エネルギーによる電力である。太陽熱システムは集熱器に集められる熱を水やその他の流体を温めたり蒸気を発生させたりする。温水は住宅や商業施設や産業工程で使われる。蒸気は熱利用されたり、タービンを通じて電力や産業用動力に転換されたりして利用される。

(注3)
グリーンピースとESTIAの予測によれば、現在のレベルはほんの35万キロワットであるが、2015年までには設置される太陽熱発電器の容量は500万キロワットを超えると見込まれる。2020年までには更に容量が増え毎年、年間450万キロワット<4,500メガワット>増という速さで普及が伸び、設置容量の世界合計は2,154万キロワット<21,540メガワット>に達するとしている。

報告書「太陽熱エネルギー2020」(英文:PDFファイル)
http://archive.greenpeace.org/docs/SolarThermalPower.pdf

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