厚生労働省が昨年決定した、フタル酸エステル類を含むポリ塩化ビニル(塩ビ)製のおもちゃに対する規格基準の改正が本日8月1日付で発効した。この改正で、塩ビ製おもちゃの一部に始めて規制がかかることになる。これは、1998年からグリーンピース・ジャパンをはじめとする多くの市民団体、消費者団体が、塩ビおもちゃの子供に与える悪影響を指摘した結果、厚生労働省が検討を続けていたものである。1999年より塩ビおもちゃを規制しているEU(欧州連合)の規制と比較すると、発効まで4年遅れていること、対象となる物質が少ないことなど子供の健康の安全性、環境への影響を考慮すれば課題も残るが、この決定により塩ビの与える人体への影響を少なからず厚生労働省が認められたことになる。

今回の決定は、食品衛生法第29条第1項において準用する第7条第1項の規定を以下のように改正するものである。 「合成樹脂製のもので、乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちやには、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)あるいはフタル酸ジイソノニルを含有するポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を使用してはならない。
上記以外の合成樹脂製のおもちやには、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)を含有するポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を使用してはならない。」 この規格基準(案)の問題点(×で印す)と評価できる点(〇で印す):

×:使用禁止になる物質が1種類(おしゃぶり類については2種類)に限定されており、これでは他のフタル酸エステル類やフタル酸以外の化学物質による曝露が高くなるという危険が一切考慮されない。
×:おもちゃ以外、例えば粉ミルクや離乳食から摂取するフタル酸エステル類の量も多いことが厚生労働省の研究でも明らかになっているが、問題にされたのはおもちゃから摂取する量だけで危険なレベルになるかどうかということだけである。これでは実際には危険なレベル以上にフタル酸エステル類を摂取してしまうケースが防げない。
×:2種類のフタル酸が規制されたのはおしゃぶりなど、口に入れるために作られたおもちゃだけである。
〇:1種類のフタル酸の規制については、合成樹脂でできた玩具がすべて対象となっている。
〇:「溶出基準」ではなく、「使用禁止」になっている。
〇:対象が3歳未満ではなく、6歳未満とされEUの規制よりも範囲が広い。
塩ビおもちゃ規制を求める一連の活動で、塩ビ自身の危険性が消費者そして生産者に伝わり、多くの製品で塩ビ離れが進んだ。しかし、建材などをはじめとする生産量の多い工業製品にはまだまだ多くの塩ビが使用されている。塩ビは、その製造、廃棄時にダイオキシンをはじめとする多くの有害物質を排出し、それ自身も多くの有害化学物質を必要とすることから環境にもっとも悪いプラスチックとされており、今後使用が段階的に廃止されていくべきものである。

「環境への影響を考えず、一時的な利益だけのために塩ビを使用できる時代は過ぎ去りつつある。環境に影響の少ない製品を開発することが企業のイメージの向上にもつながる今では、企業が塩ビを使用しつづけていく事はますます厳しくなっていくだろう。すでに代替物質が多くできているので、それへの移行が今後も進むであろう」と、グリーンピース・ジャパンの有害物質問題担当の佐藤潤一は語っている。

グリーンピース・ジャパンは今後も、おもちゃに限らず塩ビ製品の代替を求めて活動していく。

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グリーンピース・ジャパン
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有害物質問題担当 佐藤潤一
広報担当     城川桂子