【7月25日 ポートモースビー、パプアニューギニア】 マレーシア系企業サムリン(Samling)グループ(注1)の1つであるコンコードパシフィック社に対し、伐採活動の禁止を求めていたパプアニューギニアの地主たちの訴えが認められ、同社の伐採活動に対し暫定的禁止令が下った。この禁止令の発令には、コンコードパシフィック社のパプアニューギニアのウェスタン州における違法伐採の実態を暴露してきたグリーンピースや他NGOの国際的キャンペーンが大きく影響している。

パプアニューギニアには、世界で3番目に広大な熱帯雨林が残されているが、現在、違法や破壊的伐採による深刻な破壊が進んでいる。わずか一握りの巨大なマレーシア系企業によって支配されている伐採産業が、森林に依存する地域社会の数千人もの人々の生活を脅かしてきている。更に、こうした原生林には、およそ1600種の鳥類や3000種の植物が存在するとされている。

今回の裁判に勝利したキウンガ・アイアンバック地域の地主たちは、過去7年間に渡る違法伐採の影響、環境破壊や人権侵害などを、裁判に訴えていた(注2)。パプアニューギニアでは、地主をはじめとする地域住民は、生存に必要な食物や住居、薬草などを森林に依存して生活している。地主たちは、キウンガ・アイアンバック伐採プロジェクトが、インフォームドコンセント(よく説明した上で合意を得ること)なしに進められ、適切な伐採権料も支払われず、更に伐採の影響によって生活が脅かされていることなどとして、同社を相手取って訴訟を起していた。パプアニューギニア政府と政府の林業機関であるフォレスト・オーソリテイは、この伐採プロジェクトの違法性を認知する機会が度々あったにも関わらず、なんら対策を講じて来れなかった。

この暫定的禁止令により、正式な判決が下される数ヶ月後まで、コンコードパシフィック社のすべての伐採と輸出活動は停止させられる。更にコンコードパシフィック社とフォレスト・オーソリテイの間で、昨年末に不正に交わされた「和解証書(Deed of Settlement)」も無効となる。コンコードパシフィック社は、8月11日までに、パプアニューギニア裁判所に控訴しなければならない。

「コンコードパシフィック社の伐採や輸出活動を停止へ至らせたパプアニューギニア裁判所の決定は、もはや多国籍企業は、発展途上国において違法な活動をすることが出来ないということを示している。」と、グリーンピース森林問題担当、ステファン・キャンベルは語っている。「地主をはじめとする地域住民は、かれらの法的権利に関する認識を急速に高めており、今後もコンコードパシフィック社のような企業に対し責任を取らせていくであろう。」と、続けた。

これまでコンコードパシフィック社は、パプアニューギニアで産出された木材を日商岩井(株)や丸紅(株)などの日本の商社や、中国のレイシンホン(Lei Sing Hong)社、カムヒン(KamHing)社に輸出している。

サムリン社のような企業の活動は、来年マレーシアのクアラルンプールで開催される生物多様性条約締約国会議において議論の的になるだろう。

「グリーンピースは、地主たちと共に、これからもこうした企業の実態を国際レベルで暴露していくつもりである。」と、グリーンピース・インターナショナル、フィル・エイクマンは語っている。「政府がその責任を果たす代わりに、地主たちが自分達の森林を保護するための権利を自分達で守ったという事実は、森林問題に対する現在のグローバルガバナンスへの痛烈な批判となるだろう。グリーンピースは、生物多様性条約締約国会議が、世界の原生林とそこに依存して生活する人々を守るための強固な手段となるよう、国際的キャンペーンを展開していく。」

注1.コンコードパシフィック社の取締役および(60%の)支配株主、Datuk Yaw Teck Seng氏は、30年前にサムリン社を起業したマレーシア系木材産業界の巨頭である。
注2. パプアニューギニア、キウンガ・アイアンバック伐採プロジェクトに関する問題をグリーンピースがまとめた報告書(英文):『森林破壊の連鎖― マレーシアの伐採企業、木材市場、パプア・ニューギニアの独善的政治(Partners in Crime: Malaysian loggers, timber markets and the politics of self-interest in Papua New Guinea.)』

詳しくはグリーンピースパプア・ニューギニア キャンペーン Web サイトをご参照下さい(英文)。

お問い合わせ:
グリーンピース・ジャパン
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森林問題担当 尾崎由嘉
広報担当   城川桂子