オーストラリア、タスマニア州のスティックス渓谷で、7月1日より原生林の破壊停止を訴えるアート展が開始されている。主催するのは、オーストラリアの環境保護団体ウィルダーネス・ソサエティー(注1)。今年はオーストラリア史上最大の環境保護活動の成果であったフランクリン・ダム建設停止(注2)から20年目にあたり、7月1日はダム建設停止が決定された日にあたる。同団体では、この日を記念して、タスマニア原生林の現在の窮状を世界に伝え、原生林保護のための契機を築く為に、このアート展を開催するとしている。アート展は7月13日まで続けられるが、7月5日と6日にはワークショップが行われ、現地のアーティストたちによる住民の原生林への思いが表現されることになっている。

タスマニアの原生林は樹齢数百年もの老齢樹と温帯雨林からなり、それが地域特有の森林生態系を支えている。ところが、近年、伐採企業による原生林の破壊が進み、破壊された土地の大部分はユーカリの植林地へと転換されている。伐採を進めるのは主にガンズ社(本社:オーストラリア・タスマニア州)だが、ここから産出された木材の90%以上は木材チップとなり、紙製品用に日本へ輸出されている。

グリーンピース・ジャパンは、昨年末にタスマニアの原生林破壊の現場を視察し、原生林保護活動の一環としてウィルダーネス・ソサエティーの活動を支援している。又、ガンズ社と取引のある日本企業に対し、タスマニアの原生林破壊に関わる木材の輸入を停止するよう呼びかけている。

Photo: El Grande after regen burn, Florentine Valley, Tasmania 2003 写真 〜 The Winderness Society
「オーストラリア裁判所がフランクリン川保護の決定を行ってから20年間、私達は地域社会にとって重要な多くの場所の保護活動で成果をあげてきた。しかし、この温帯雨林を守る闘いは未だに終わっていない。タスマニアの原生林を守る新たなキャンペーンは、タスマニアに住むすべての人々が一緒に参加できるものにしていきたい。伐採の進むタスマニアの原生林の行く末を案じる全ての人々はスティックス渓谷を訪ねて、アートのワークショップに参加して欲しい。」と、ウィルダーネス・ソサエティーのナショナル・キャンペーン・ディレクター、アレック・マーは語っている。

「このアートを通じて繰り広げられるキャンペーンは現在のタスマニアの状況をオーストラリア本土ばかりでなく広く世界に伝えるものになると思う。タスマニアの森林破壊の現状とそこに住む人々の原生林への思いを理解し、この問題を直視して、購入を続ける日本企業は環境にも社会的にも責任ある製品を消費者へ届けていくよう見直していって欲しい。」と、グリーンピース・ジャパン、森林問題担当尾崎由嘉は語っている。

アート展はタスマニアでの日程を終了した後、オーストラリア本土でも開催される予定になっている。

(注1)ウィルダーネス・ソサエティー(The Wilderness Society):オーストラリア国内の自然保護のために地域レベルで活動するオーストラリア最大の非営利の環境保護団体。グリーンピースは、タスマニアの原生林破壊問題に関して、情報交換を行うと共に、同団体の活動を支援している。 Website :http://www.wilderness.org.au/
(注2)フランクリン・ダム建設停止:1960年代より、タスマニア南西部のフランクリン川にダム建設プロジェクトが進められた。プロジェクトの推進者はタスマニア州政府よりも資金力の大きいタスマニアの電力会社とダム建設会社。これに対し、多くの住民がダム建設による原生林の破壊を懸念し、1976年よりウィルダーネス・ソサエティーのメンバーが中心となってダム建設反対運動を繰り広げた。反対運動が展開される中、調査によって、数千年前のアボリジニーの遺跡などもフランクリン川付近で発見され、文化的価値も認識されるなど、ダム建設反対運動はオーストラリア史上最大の環境保護活動となった。ダム建設問題はオーストラリアの最高裁へ持ち込まれ、1983年7月1日、フランクリン川でのダム建設を停止すべき、と言う判決がくだされた。

詳しくはグリーンピース・ジャパン森林問題Webサイトをご覧下さい。

お問い合わせ:
グリーンピース・ジャパン
東京都新宿区西新宿8-13-11NFビル2F
電話 03-5338-9800 FAX 03-5338-9817
森林問題担当 尾崎由嘉
広報担当   城川桂子