【バグダッド、6月24日】 「トゥワイサ- 放射能地獄- 今すぐ行動を!」とバナーを掲げた国際環境保護団体グリーンピースの車列が、白旗をかざしたグリーンピースメンバーの先導のもと、バグダッド南部のトゥワイサ原子力施設の敷地内に駐屯する米軍基地を訪れ、大きな円柱状のイエローケーキ(*注1)混合用キャニスター容器を、同施設を警備中の米軍兵士に手渡した。


小型車位の大きさのこのキャニスター容器は、「イエローケーキ」と呼ばれる高濃度の放射性物質が密封されていた容器で、トゥワイサ原子力施設近くの一般の広場に放置されていた。米軍はこの核物質の存在に気づいていたにもかかわらず、付近の住民によると20日以上も蓋が開け放しのままそこに放置していたと言う。

「もし同様の事がアメリカやイギリスなど他の国で起ったとしたら、村周辺には放射能や汚染除去の専門家達が押し寄せて、この地域一帯は放射能汚染地域として隔離され、住民は緊急医療部隊による診察を受けているだろう。イラクの人々が国際社会の一員である事を忘れてはならない。現在見捨てられた状況にある彼らの危機的な現状に目を向けなければならない。」(グリーンピース・インターナショナル、マイク・タウンズレー)
イラクで現地調査を開始したグリーンピースの放射能専門家は、イエローケーキや放射能汚染された物体が村に散乱し放置されているのを発見した。これら多くの放射能汚染物は原子力施設から村人が持ち出したもので、家屋の修復および水や食料の貯蔵に使っていたものである。これまでの一週間あまりのグリーンピースの現地調査では、以下のことが発見された。

放射能汚染された家々のうち1軒からは標準の1万倍の放射能。
在校生900人を抱える小学校周辺では、標準値の3,000倍にも上る放射能汚染物。
放射性廃棄物を貯蔵していたドラム缶を家の中に保有している住民。
近隣の広場に放置された上記のものより小さな放射能物質。
トゥワイサ原子力施設からの物質に触れてから起ったという数々の異常な疾患の証言
村に捨てられている放射能マークが貼られた数々の物体

グリーンピースの現地調査と本日の行動によって、イラク占領米軍は、トゥワイサ原子力施設から持ち去られた放射性物質に関する調査、封じ込め、汚染除去作業など緊急対処の必要性にまったく対応できていない事が明らかになった。

占領軍は現在まで、国連の専門家であるIAEAによる徹底的なイラクの放射能汚染状況の記録と汚染除去作業を拒否している。バグダッドのアメリカ当局は、住民の健康を守る責任は自分たちにあるとこれまで幾度も強く主張しているが、地元住民への危険性については否定を繰り返している。

「グリーンピースによる現地調査はまだ8日間しか行われていないが、この調査によって放射能汚染が恐ろしいレベルにまで達していることが明らかになっている。米軍はIAEAに権限を返還し、IAEAが現地のモニターと汚染除去作業を軍の制約なしに行えるようにしなければならない。米軍は、ウラニウムは殆ど回収したと信じているかもしれないが、他の放射性物質はどうするのか?
査察官が占領軍の足かせから自由になり、現場に立ち入ることが可能になれば、適切な役割を果たすことができるだろう」(グリーンピース・インターナショナル、マイク・タウンズレー)
その後の現地での動き:
グリーンピースチームは、キャニスターをもって、米軍兵士とともにトゥワイサ原子力施設内部に入った。その後、放射能値が標準の1万倍を超えている村の家に米軍を案内した。

グリーンピースと地域一帯を調査した米軍の部隊は、グリーンピース調査団の指摘した放射能レベルを追認した。軍は放射能汚染物を回収し、原子力施設へ持ち帰った。同行した米軍の放射能部隊の指揮官で健康促進予防医療センターのメラソン中佐はグリーンピースに対し、WHO(世界保健機関)とIAEAは直ちに現地入りするべきだと語った。

同時に、IAEAがグリーンピースに語ったところによると、IAEAの査察官は、当初の限定的役目であるトゥワイサ原子力施設のウラニウム目録の作成が完了したので本日イラクを離れる事になっているという。

(*注1)イエローケーキとは鉱山から掘り出されたウラン鉱石を精錬した黄色の粉末状のもの。

調査団の活動の様子をスライドでご覧ください。
詳しくはグリーンピース・インターナショナル Webサイト(英文)をご覧下さい。

お問い合わせ:
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キャンペーン部長 福田未来子
広報担当     城川桂子