【ベルリン 2003年6月16日】 16日からドイツ・ベルリンで開催されている国際捕鯨委員会 (IWC)年次総会において、新たに保全委員会(Conservation Committee)を設立することが可決された。

この保全委員会は、鯨類の保全強化を目指すIWC内の小委員会で、捕鯨国やその支持国からは執拗な反対意見が繰り出されていたが、長時間にわたる議論の末、採決の結果は、賛成25、反対20 投票不参加1となった。

提案国のひとつメキシコ代表のアンドレアス・ローゼンタル氏は議論の最後に、「保全委員会設立提案に反対するということは、保全対策を否定することと同義である」と自らの発言を締めくくった。

「保全委員会の設立が、即商業捕鯨の中止を意味するわけではないが、もともと捕鯨産業の生産調整のために設けられた国際捕鯨委員会の方向性を大きく変えるきっかけにはなるだろう。」と、グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当の櫻井淳子は語っている。

保全委員会の設立が提案された背景には、年次総会に先立って開催された科学委員会において発表されたように(*1)、年間約30万頭ものイルカやクジラが漁網による混獲で死んでいるという事実がある(*2)。クジラやイルカの死因の9割は混獲とみられ、このほかにも有害物質の体内濃縮や海の騒音(油田開発にともなう騒音やソナー)、捕鯨・イルカ漁による捕獲など人為的な理由で鯨類は脅かされている。

鯨類は海洋生態系の食物連鎖の頂点に位置する大型哺乳類であり、過去には苛烈な商業捕鯨によってその数を激減させられた。

「今回のIWC年次総会に際してグリーンピースは『海はいま危機に瀕している』と訴えてきたが、保全委員会の設立は、大きな収穫となった。鯨類の保護策は海洋生態系全体の保護にもつながることはいうまでもない。IWC科学委員会には、すでに膨大な鯨類に関する知見が蓄積されている。今後さらに科学者たちの関心が保全へと差し向けられることで、鯨類の保護が促進されることは間違いないだろう。」と、グリーンピース・インターナショナル海洋生態系問題担当、リチャード・ペイジは語っている。

注:
(*1)米国デューク大のアンディ・リード博士ら米英研究グループの発表
(*2)例えば、カリフォルニア湾に推定数600頭しかいない小型のコガシラネズミイルカは、年間39頭が混獲によって窒息死していると報告された。

詳しくはグリーンピースジャパン海洋生態系問題Webサイトをご覧下さい。

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広報担当   城川桂子