【インドネシア・バリ2003年6月11日】国際環境保護団体グリーンピースは、インドネシアのバリ島で9日から11日まで開かれているコールトランス会議2003[CoalTrans Conference 2003](注1)で、石炭利用の段階的廃止と再生可能エネルギーへの転換を求めた。

同会議には世界から350社を超す大規模な石炭産業関連企業が集まり、今後の石炭市場などについて議論や意見発表を行っている。開幕日の9日にはグリーンピース東南アジアの気候変動・エネルギー担当者も、会議の壇上で発言し、「地球温暖化解決のために石炭産業界のなすべき事は、石炭利用の段階的廃止を明日でなく、今日から開始する事だ」などと会議参加者に訴えた。(注2)

グリーンピースは同会議出席にあたり、石炭産業の地球温暖化への影響を以下の ように分析している。

増え続ける石炭利用と補助金
年間35億トンもの石炭が燃やされ、世界の二酸化炭素排出量の40%が石炭に由来している。1973年から93年までの20年間に世界の石炭使用は36%増加したが、アジア地域での増加は実に162%であり、東南アジアでの石炭の輸入は今後も年14%の割合で増加すると予測されている。
最新の科学の知見を集めた国連環境計画の気候変動に関する政府間パネルの報告書は「今後の気温の上昇率は20世紀において観測されたより大きくなると予測されており、それは過去一万年の間に前例のない幅の上昇となるであろう」と警告している。またアジア開発銀行の研究でも、たとえばインドネシアでは海面上昇により年間113億ドルもの経済損失が見込まれるという。
それでもなお、地球温暖化への加担の大きい石炭の利用が世界やこれらの地域で急速に伸びている理由は、その低価格性にある。そして、石炭の価格が安い最大の理由は、政府や世界銀行などの融資機関による多額の補助金で手厚く保護されているからである。こうした補助金が石炭利用を加速させ、再生可能エネルギーの普及を阻んできたのである。
日本のかかわり
アジア地域へ最も多く石炭を輸出しているのはオーストラリアである。オーストラリアの輸出金融保険公社からの2700万ドル(97年実績)という多額の補助金のほか、日本も海外エネルギー融資の一環として補助を行っている。そして忘れてならないのはオーストラリア産の石炭を最も多く輸入しているのは日本であるということである。日本は石炭の輸入・消費と、石炭産業への補助金という二重の意味で重要な責任を負っているのである。この会議には日本から伊藤忠商事(株)や第一中央汽船(株)が参加している。
コールトランス会議2003 に対するグリーンピースの主張は以下のとおりである。

石炭の燃焼が気候変動に与える影響の深刻さは認識されているにもかかわらず、この会議で石炭業界は新たな石炭市場の開拓を議論している。石炭産業はこうした世界を危険にさらす確信犯的な振舞いをやめ、再生可能エネルギーを基としたエネルギー供給へと転換すべきである。先進工業国の中でも欧州などでは、気候変動問題への対策として石炭利用の段階的廃止に向っている。
オーストラリア、日本など石炭産業へ補助金を投じている諸国は、それをやめ、再生可能エネルギーへの補助へと振り向けること。
(注1)コールトランス会議(CoalTrans Conference 2003):石炭の利用技術 や市場等に関する関連業界の国際会議。CoalTransは日本語でもそのまま「コー ルトランス」と関連業界では呼ばれている。

(注2)コールトランス会議2003 の模様 (英文)
グリーンピースジャパン地球温暖化問題Webサイト

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