2003年4月10日、朝鮮民主主義人民共和国の核兵器不拡散条約(NPT)脱退が 発効する。グリーンピースは各国のNGOとともに国連安保理理事国に、北朝鮮核 開発問題の外交交渉による平和的解決を支持するよう呼びかけた。

北朝鮮問題を協議するために会合していた国連安保理に宛てた今日付の書簡で、 核拡散防止体制の強化を呼びかけるとともに、アメリカ合衆国を含めた核兵器保 有国に対しては核軍備放棄の義務をはぐらかしつづけることをやめるよう訴えた。

書簡を送ったNGOの一つ「核戦争防止国際医師会議」(International Physicians for the Prevention of Nuclear war)のジョン・ロレッツ氏は「ア メリカ合衆国がイラクに対して先制攻撃をしかけたことで、大量破壊兵器保有の 疑いのある国家を巻き込んだ危機への対応に、危険な前例が作られてしまったこ とを憂慮しています。私たちは、国連安保理理事国に積極的な外交努力を通した 核拡散防止体制の強化により、これ以上戦争を起こすことのないよう求めます」 と述べている。

書簡では北朝鮮に核兵器非保有国としてNPTに残留するよう呼びかけ、アメリカ 合衆国には軍事行動をもって危機に対処することをしないように呼びかけた。こ の問題は安保理理事国と北東アジア諸国の協力を交えた2カ国間の協議によって 解決することができるはずである。

また、この紛争の調停に積極的な役割を果たしたいと表明したアナン国連事務総 長の姿勢を支持しつつ、核拡散防止体制の強化のためにはすべての国の積極的関 与が必要であることも指摘した。

北朝鮮は1994年の枠組み合意を超えて、プルトニウムを生産する原子炉を再稼動 させ、核拡散防止条約から正式に脱退することを1月10日に宣言した。アメリカ 合衆国政府は、北朝鮮を「悪の枢軸」の一角と名指して、北朝鮮に対する先制軍 事攻撃の可能性を除外することを拒否している。

「我々は北朝鮮に核兵器非保有国として国際社会に復帰することを要望していま す。しかし、最も重要なことは、大量の核兵器を保有しているアメリカ合衆国が 核拡散防止条約(NPT)第6条に定められた核保有国の義務の履行を避けつづけて はならないことです。我々はアメリカ合衆国政府に同国の核兵器を廃絶するとい う目標義務を果たすことを強く求めると同時に、包括的核実験禁止条約(CTBT) を批准し、核兵器の“先制使用”をしないという政策を取り入れることを強く求 めます」とジョン・ロレッツ氏は述べた。

さらに書簡では、核兵器保有国が非保有国に対して、核兵器による威嚇、あるい は核兵器の照準をそれらの国に合わせることを即時停止し、たとえ生物・化学兵 器の攻撃を受けたとしても、核兵器の先制使用によって応戦することを拒否する 政策を取り入れることを求めた。さらに、この目的と相容れない原子力政策や計 画を、新型の核兵器の開発・生産も含めて断念することを呼びかけた。

イスラエル、インド、パキスタンを除き、核兵器保有国を含めた世界の大多数の 国が締約している核拡散防止条約(NPT)は、2005年に予定されている再検討会 議の準備会合を4月28日から5月9日の間、ジュネーブの国連支部で開催する。書 簡では核拡散防止体制が直面している危機を早急に打開することを議題に上げる ことが必要であり、締約国は国際協調に基づいた拡散防止機能を遵守して、2度 とアメリカ合衆国とイギリスがイラクに対して犯した独善的行動を繰り返しては ならないと述べている。

「日本政府はイラク戦争を支持した。しかし、核兵器削減の方法として存在するNPT の改革・強化こそが日本の果たすべき義務のはず。イラク戦争に反対したすべて の市民にも、日本政府がNPT準備会合で義務を果たすよう、求めてもらいたい。」 とグリーンピース・ジャパンの鈴木かずえは述べている。


* 1 核拡散防止条約(NPT)第6条
「本条約の締約国は、核軍備の廃棄および核開発競争を早急に終焉させるための 施策を協議する交渉に誠意を持って取り組み…」

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核問題担当 鈴木かずえ
広報担当 城川桂子