【3月12日、ニューヨーク】 国際環境保護団体グリーンピースとニューヨーク に本部を置く憲法上の権利センター(Center for Constitutional Rights)は国 連の全加盟国に対して、国連憲章を尊重すべく緊急総会を招集し(注1)、イラクに対する国際法違反の戦争(注2)を回避するよう要請した。戦争反対の立場をと る両団体は、国連安全保障理事会が国際の平和と安全の維持に関する問題で分裂 していることから、国連加盟国191カ国に『平和のための結集』として知られる 国連決議377を発動して、緊急国連総会を招集するべきであると提言している。

ニューヨークの国連本部入りしているグリーンピースのスティーブ・ソイヤーは 次のように述べている。「安保理理事国のほとんどと世界中の人びとが望んでい ない戦争の承認を、何とか取り付けようと理事国に脅しと買収工作をかけている ブッシュ政権の努力は、いまだ成功していない。国連はその創設理念を守るため にも、ひとつとなって結束しなければならず、世界をさらに危険な状態へと導く 無謀な戦争を仕掛けようとする政権の道具として利用されることがあってはなら ない。」

国連決議377『平和のための結集』は、「平和に対する脅威」を阻止する措置に 安保理の合意が得られない場合、国連総会は24時間以内に総会を開いて事態の対 応を協議、場合によっては対応措置を加盟国に対して提案することができるとし ている。過去50年間にこの決議は10回以上発動されている。(注3)

憲法上の権利センター所長のマイケル・ラトナーは次のように述べている。「 『平和のための結集』決議は戦争を回避するための最後の希望かもしれない。も し通過すれば、国連安保理の承認なしの戦争は完全に違法であり平和に敵対する 犯罪行為になるということをアメリカとイギリスに対して知らしめることになる。」

「一番大きな銃を持ったカウボーイに世界の支配を任せるのなら、国際社会はそ もそも国連など設立しなかったはずである。ブッシュ大統領のイラク侵略計画は、 これまで国際関係を蝕んできたアメリカ合衆国の一国主義の新たな、最も恐ろし い例である。国連は最終的にはブッシュのバグダッド爆撃を阻止できないかもし れないが、それでもこの最後のチャンスを使って平和への努力をするべきである」 とソイヤーは語った。

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注釈
国連決議377は平和の維持は安保理の主要責務であるとしながらも、その責務 が果たされない場合でも「国連憲章に基づいた国際平和と安全を維持する責務を 遂行する権利を国連総会から奪うものではない」としている。国連総会のこの決 議の運用に関しては以下の通り記されている:
『平和に対する脅威、平和の破壊、侵略行為が存在すると認められる事態に対し て安全保障理事会が常任理事国の全会一致の合意が得られないために、その主要 責務たる国際の平和及び安全を維持できない場合、総会は、加盟国に対して必要 に応じて武力行使も含む集団的措置を勧告することを前提に、ただちに事態を協 議し、国際平和と安全の維持あるいはその恢復をはかるべきであることをここに 決議する。この緊急特別会期は総会が会期中でなければ、安全保障理事国の9カ 国(訳注:国連本部のHP上では、7カ国となっている)もしくは国連加盟国の過 半数の要請に基づいて24時間以内に召集することができる。』(グリーンピース 仮訳)
国連決議377の全文は以下で入手可能:
http://nowar.greenpeace.org/ufp/
国連が緊急特別総会を開くもうひとつの理由は、侵略行為を否定している 国際法と国連の基本原則を放棄する姿勢をみせているアメリカ、イギリス、オー ストラリアの立場を問い糺すことにもある。パウエル米国務長官は今年1月のダ ボス会議で世界のビジネスリーダーたちを前に、アメリカ合衆国はイラクが国連 の査察に協力していないと判断した場合、単独でイラク攻撃を実行する「主権を 保持する」意向を明らかにした。出典
また、イギリスは安保理での「不当な拒否権の行使」は無視すると表明してい る。しかし両国とも国連憲章への義務を負っているのであり(合衆国憲法第6条 は国連憲章を含め合衆国の権限をもって締結されたすべての条約を尊重する義務 を定めていて、これを「国の最高法規」と規定している)、したがって、これに 照らし合わせて米英の発言の根拠が追求されなくてはならない。世界中の国際法 専門家は、安保理決議なしのイラク侵略は国際法の侵害であり、また、安保理が イラク攻撃を承認する基盤となるような国際法は存在しないと言明している。
これまでの拒否権行使:
ソ連/ロシア:120回 ロシアになってからは2回
アメリカ:76回 イスラエルを批難する決議を35回阻止している。
イギリス:32回 うち23回はアメリカと同調。単独の行使はジンバブエ関連のみ。
フランス:18回 うち13回はアメリカとイギリスと同調。
中国:5回
詳細
『平和のための結集』決議は1950年以来過去10回以上行使されている。1956 年、エジプトがスエズ運河を国有化したことを受けてイギリスとフランスは軍事 攻撃によって、スエズ運河の一部を占領した。国連安保理の提案した停戦決議案 はイギリスとフランスの拒否権発動によって却下された。そこでアメリカは停戦 と両国軍の撤退を総会に訴えた。これを受けた総会は『平和のための結集』決議 の下に緊急総会を開き、その結果採択された断固とした決議により、イギリスと フランスは1週間も経たないうちに軍をエジプトから撤退させた。
『平和のための結集』決議は次に1956年、ハンガリーに軍事介入したソ連が安保 理で撤退を要求された際拒否権を行使したため、それに対抗するためにアメリカ は再び発動を提起した。緊急総会は開かれ、その結果ソ連はハンガリーに対する 干渉の中止を勧告された。