2003年3月5日、スイス議会は、原発から出る使用済み核燃料の再処理について、10年間凍結 (モラトリアム)することを決めた。凍結は10年後に見直され、延長で きる。

現在存在する再処理契約については履行されるが、新規に契約を結ぶことはできなくなる。 凍結は2006年7月まで効力を持たないが、2006年7月以前に新規の再処理契約を結ぶ可能性は低く、 実質的に再処理ビジネスはストップする。

スイスは再処理をフランス・イギリスの再処理工場に委託してきた。フランスで は仏核燃料公社コジュマ社が再処理事業を行っている。コジュマ社の最大顧客は フランス国営電力(EDF)だが、EDFとの再処理契約は2007年で終了される。コジ ュマ社は最大顧客からどの程度の発注を受けることができるのかを読めない状態 となっている。イギリスでは英国核燃料会社BNFL社が再処理事業を行っている。BNFL 社は再処理事業の負担により経営が破綻し、破産を宣告している。このため、BNFL 社は既に再処理契約を結んでいるドイツの電力会社に追加支払い交渉を行ってい る。BNFL社の最大顧客であるブリティッシュ・エナジー社は2002年に5億ポンド の赤字を出し経営破綻状態なため、追加支払いを求めることはできないので海外 顧客に負担を求めている。スイスの再処理凍結は再処理事業の厳しい経営にさら なる打撃となる。

日本とフランス・イギリスの再処理契約は終了しているが、追加支払いを求めら れる可能性はある。もともと高い再処理コストは電力会社の経営にとって負担と なっており、電力業界は政府に新たな公的支援を求めていると報道されている。 しかし、将来的にもどこまで膨れ上がるかわからない不透明な再処理コストの穴 埋めのための公的支援を許すのは無責任な施策だ。

日本では使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して通常の原発で使用するプ ルサーマル計画についても、プルトニウムを増やしながら発電する高速増殖炉計 画についても国会の場で話し合って決めるというより、エネルギー関連企業の関 係者により構成される諮問機関の決定を閣議で承認されて決められてきた。スイ スでは原子力をめぐって国民投票も行われ、国会での議論も活発に行われている。 グリーンピース・ジャパンの核問題担当鈴木かずえは「日本でも、エネルギー政 策の決定に市民が参加し、国会の場で議論されなければならない。」と主張して いる。

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