6月14日午前9時、空の核燃料輸送容器を積んだパシフィック・ピンテール号 (5271トン)が品質管理データねつ造プルトニウムMOX燃料引取りのために福井 県高浜原子力発電所専用港に着岸した。港には、監視のため、また返還輸送への 反対・抗議を表明するため、グリーンピースや高浜町住民、小浜市民、関西市民 など十数人が集まり、抗議の横断幕を掲げた。

グリーンピースの7人は、日本のプルトニウム計画は、日本の核武装につながり かねないという強い懸念を表明するため、「守れ!非核三原則」「STOP!PULUTONIUM」 と書かれた横断幕を掲げた。日本政府高官たちの、日本も核を持てる、という発 言が繰り返される背景には、核兵器を持ちたいという勢力が日本政府中枢にいる ことの表われであり、同じ勢力がプルトニウム計画を推進してきた。今回返還さ れようとしているデータねつ造プルトニウムMOX燃料は255キログラムのプルトニ ウムを含んでおり、50発分の原爆に相当する。日本はすでにプルトニウム計画に より38,000キログラム以上のプルトニウムを所有し、それは原爆7,000発分に相 当する。プルトニウムを普通の原発で燃やすプルサーマル計画は、原爆の材料で あるプルトニウムを減らすためという日本政府の大儀名文は、プルサーマル計画 が滞っている現在も、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し続けている以 上、通用しない。

また、そもそも、データねつ造事件を起こした英国核燃料会社BNFL社は、今回の 返還輸送により、データねつ造事件を水に流し、日本の電力会社との新たなプル トニウムMOX燃料加工契約交渉を始めることをもくろんでいる。返還は、問題 の解決ではなく、問題を覆い隠すものに他ならない。返還は、新潟県では住民投 票によって、福島県では県知事の拒否によって凍結しているプルトニウム計画に 青信号を点すものであり、グリーンピースは、返還に反対し、中止を求める。

グリーンピースは、主に以下の理由からプルトニウム計画に反対している。

プルトニウム燃料には、発熱しやすい、臨界が起こりやすいなど固有の危険性がある。
プルトニウム計画は、核武装につながりかねず、東アジアの軍事的緊張を増大させる。
プルトニウム燃料の輸送時に事故が起これば、取り返しのつかない環境汚染を起こす。
プルトニウム燃料の使用後の処分方法が全く確立しておらず、もって行き場がない。
グリーンピースは、以下を提言している。
原子力発電所の全廃
使用済み核燃料の再処理政策の放棄
プルトニウム燃料の使用中止
背景

高浜原発にプルトニウムMOX燃料が運ばれたのは1999年10月1日。1999年7月に 英国を出港したが、輸送中に品質管理データがねつ造されていたことが発覚し、 英国に返還されることとなっている。

今回の輸送の経過

空の輸送容器を積んだパシフィック・ピンテール号は、2002年4月26日午前9時半 (英国現地時間)に英国中西部バーロウ港を出港。同日、護衛のためのパシフィッ ク・ティール号も数時間後に出港した。5月中旬にパナマ運河を通過した。

高まる国際敵抗議・懸念
カリブ諸国14か国の連合体であるカリブ共同体は5月6、7日、声明を発表し、プルトニウムMOX燃料の返還輸送を「国際法を無視し、拒否された、人を死に至らしめる」と激しく非難している。国際法無視とは、国連海洋法で環境影響評価が定められているにもかかわらず、行っていないことを指している。
米国・カナダ・中南米・南米の国々34か国からなる米州機構(Organization of American States, OAS)は、第32回通常総会(バルバドス、2002年6月2-4日)で今後、カリブ海を通過する核輸送への小島しょ国の懸念について議論すること、また、核輸送が引き起こしうる脅威について、アセスメントをすること、事故やテロに対応するため、対策を調整することが常任理事会に指示された。
アンティグア・バーブーダ政府は声明を発表し、日英に輸送の中止を求めている。「私たち小さな国々は、テロリストが意図的にこうした船を標的にして行動することを恐れている。それは、私たちの存在そのものの終わりを意味する。
これは、夢想でもフィクションでもない。」
問い合わせ
グリーンピース・ジャパン 電話    03-5338-9800
核問題担当 鈴木かずえ
広報担当  城川 桂子

映像についてはグリーンピース・インターナショナル(オランダ)
写真デスク   ジョン・ノヴィス   31 65 381 9121
ビデオデスク  ミム・ロウ      31 20 5249 543

核・プルトニウム問題について詳しくはグリーンピース・ジャパン核問題Webサイトをご覧ください。