オランダ・ハーグ発 2002年4月19日:グリーンピースは、19日、生物多様性条 約(CBD)会議において、地球上で最も生物多様性の高い地域―世界に残された 原生林―を守るための緊急処置を講ずる機会を逸したとして、各国政府を批判し た。「生物多様性は人類の活動によって、かつてない速さで破壊されている」こ とを認識しながら、各国政府はこれ以上の損失を止めるために必要な行動をとる ことにも、さらには彼ら自身の現在までの努力が、少なすぎ、遅すぎることを認 めさせることにも失敗した。

リオ地球サミット後、各国は今回、初めて世界に残る原生林の運命について議論 した。しかし、19日に発表された閣僚宣言は、先に科学者ら(SBSTTA、科学技術 助言補助機関)から提出された、「最も危機的な状況にあり、環境的にも重要な 森林生態系と生物種、特に原始(原生)林の生物多様性保護の努力を早急に優先 させる必要性」を強調した行動勧告を無視するものである(1)。

フランス、ドイツやロシアを含む数ヶ国は、現在続く破壊を止めるための行動プ ログラムを支持した。しかし、ブラジル、カナダとマレーシアは、この会議が開 かれた2週間で、作業計画を骨抜きにし、会議の進行を阻止することに費やした 上に、森林喪失を止め、違法伐採を規制する事に失敗させた。最終的に採択した 行動計画は、森林の危機の規模と緊急性に、全く釣り合わないものとなった。

「環境大臣らは、残された原生林の運命を決定するために訪れたハーグで、歴史 に残る決断を取れたはずだグリーンピースや、数ヶ国の政府は、原生林破壊を食 い止めるという大きな希望を抱いて来た。しかし、我々の前にあるのは、実際の 危機とは比べ物にならない、取るに足らない手段のみである。各国政府は、彼ら の失敗の結果を受け継ぐ未来の世代に対して、これを正当化することは決して出 来ないだろう。」(グリーンピース・インターナショナル、グドゥルン・ヘン) 生物多様性条約締約国会議が失敗したのは以下の内容が、採択されなかったこと にある。すなわち、:

森林の保護と持続的使用のための責任ある計画が賛同を得るまで、手付かずの 原生林での産業伐採を一時中止すること[モラトリアム]
木材やその他の森林製品が合法、かつ生態的に責任ある方法で生産、取引され ることを確実にすること[対策]
森林の保護と持続的使用に対する基金を、最小限でも設立すること[基金] である。
グリーンピースのキッズ・フォー・フォレスト(2)から、19ヶ国を代表する約 1,000人が、彼らの懸念と希望を表明するためハーグに集まったが、そのうちの 1人、ブラジルから来たアドリアナ・カルバーリョ・ドス・サントス(17歳)は、 以下のように述べた:「この会議の場で、一体どんなゲームが繰り広げられたの か理解できない。彼らが関心を持っているのは、金と自分達の利益だけ。私たち の森林は私たちの将来。私の生きている間に、ジャガーやゴリラの住処が消失す るなんて、本当に信じられない!」「残された原生林の運命は、今年8月にヨハ ネスブルグで開催される地球サミットに集まる各国政府首脳の手中に委ねられた」 (グリーンピース、ヘン)。「グリーンピースは、今後も森林と、そこに住み、 生活と文化を森林に依存する人々の為に、正しい行動を続ける。我々は、彼らの 存続を脅かす全ての者をこれからも暴露していく。」閣僚達は、発展途上国から 米国の製薬やバイオテクノロジー企業が遺伝子資源を盗む、バイオ・パイラシー を阻止、予防する案についても議論しており、この点は宣言にも反映されている。 しかし、グリーンピースは、共有されるべき資源そのものが消失し続けている状 況では、バイオ・パイラシーを阻止する為のどんな合意も不十分だと考える。地 球上の生物多様性の大部分は、未だに保護されていない、残されている原生林内 に存在するのである。

原生林には世界の陸棲生物多様性の80%ほどが存在する。各国政府代表が原生林 の運命について議論した12日間で、すでに、36万ヘクタールの原生林が消失して いる。‐これはサッカー場50万個分の広さに相当する。

(1)科学技術助言補助機関(SBSTTA )は「生物多様性保護にとっての原始 林の重大な価値と、その様な森林が現在大変な速度で消失している状況を認識し、 その保護に大きく貢献するような活動を優先させることに賛同する。」と発言 (SBSTTA第7回会議、モントリオール、2001年11月18日)。

(2)Kids For Forests―グリーンピースの呼びかけに対して集まった、世界19 カ国にひろがる、原生林保護活動を行なう青少年グループ。