(グリーンピース・ジャパンの尾崎由嘉がハーグから情報発信しています。)

国際環境保護団体グリーンピース・インターナショナルと、日本支部であるグリー ンピース・ジャパンは、オランダ、ハーグで開かれている原生林サミット(生物 多様性条約第6回締約国会議)にて、環境省副大臣、山下栄一氏に面会し、「原 生林での違法および破壊的伐採からの林産物を大量に消費している日本が、原生 林の生態系消失を防ぐことを優先し、この原生林サミットで、率先した政治的意 思を示すよう」訴えた。グリーンピースは、山下副大臣に対し、要請書と共に、グリーンピース・調査レポート「森林破壊の連鎖II」(1)などの資料を提出した。

グリーンピースは、陸上生物のおよそ60‐80%が生息する、残されたわずかな原 生林のために、条約レベルで初めて森林作業計画の採択について話し合われてい るこの原生林サミットで、原生林の生態系の消失を防ぐことを優先づけるよう各 国政府に訴え、活動を展開してきている。調査レポートでは、世界的に横行する 違法および破壊的伐採の実態を明かし、破壊的伐採による安価な木材輸入を野放 しにし続けている日本政府に責任があることを訴えており、さらに、パプアニュー ギニアにおけるマレーシアの伐採企業による違法行為の実態を示すレポート(2) においても、日本市場の関わりを具体的に示している。

この山下副大臣との面会で、グリーンピース・ジャパンの森林問題担当、尾崎由 嘉は、「日本政府は、世界の原生林の生態系消失を防ぐために、この歴史的な場 である原生林サミットにおいて、リーダーシップを発揮すべきである。莫大な量 の木材や紙製品が日本で消費されている。日本政府は、この会議において、原生 林の生態系の消失を防ぐことを優先させるよう、率先した政治的意思を示すこと によって、世界の歴史的決断への貢献ができるはずだ。」と述べた。

また、日本が、FSCなどの認証木材を政府調達に導入するなど、違法伐採および 関連取引の取り締りを国内でも強化を行い、さらに、GEF(地球環境ファシリティ) などの基金運営を原生林のために費やすなど、各省庁へ勧告を行い、率先した行 動を取ることなどを求める要請書を、山下副大臣へ手渡した。これに対し、山下 副大臣は、「グリーンピースが取り組むこれら森林の問題の重要性を考慮し、受 け取ったレポートなどを参考にしながら、省庁でも、前向きにこの問題へ努めて いきたい。」と、語った。

違法伐採問題に関しては、これまでにも、日本政府自らの責任の認識と、数々の 国際・国内会議での約束がなされているにも関わらず、実際に解決に結びつく行 動は取られていない。3月に開かれた国連森林フォーラム(UNFF)第2回会合では、 「林産物の違法な国際貿易に対処する取組を実施すること」などを含む、「持続 可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」に向けたメッセージが宣言されたが、 原生林を優先づけた行動を起こす責任が取られぬままで終わっている。

先週末にカナダで行われたG8環境サミットでは、森林生態系の消失を防ぐために、 違法伐採および取引の更なる取りしまりに努め、原生林サミットに参加する各国 政府によって、森林の保全が優先づけされるよう勧告がなされた。日本政府はこ れにも賛同してもいる。

(1)グリーンピース・ジャパン 調査レポート
「森林破壊の連鎖II 原生林破壊の犯罪パートナー世界に残る原生林から日本市場へ」
(2)グリーンピース・調査レポート“Partners in Crime: Malaysian Loggers, Timber Markets, and the Politics of self-Interest in Papua New Guinea” (英語)