環境保護団体グリーンピース・ジャパンは、今年4月にオランダ・ハーグで開か れる生物多様性条約第6回締約国会議(原生林サミット)を控え、調査レポート 「森林破壊の連鎖ll-原生林破壊の犯罪パートナー・世界に残る原生林から日本 市場へ」を本日発表した。

<<<世界の原生林の現状>>>
世界中に点在する人の手の加えられていない原生林には、植物、昆虫、鳥類、動 物など陸上生物の多くが生息している。原生林は、天候パターンをコントロール する役割もあり、地球全体の気候安定化にも寄与している。かつて、この広大な 面積を占めていた世界の原生林は、特にこの30年間だけで、8000年前存在した広 範な原生林のうちおよそ80%が、すでに破壊されるか、姿を大きく変えてしまっ た。現在残されている原生林は、大規模な伐採によって消失する危機に瀕してい る。

<<<今回の調査レポートの特徴>>>
■違法、または破壊的に伐採された木材の世界貿易において日本が果たす役割に ついて、より包括的な情報の提供を試みた。
■原生林がまだ残る5地域:アジア太平洋、アジアロシア(サハリン東北部から 中国東北部の地域)、アマゾン、中央アフリカと南アメリカ(主にチリとアルゼ ンチン)を出発点とする生産者から最終消費への連鎖(chain of custody)を調 査した。これらの地域での伐採作業の多くは非常に破壊的であり、また多くの国 では、そのうちかなりの割合が違法で、汚職や先住民族の権利侵害がはびこって いる。各地域内では、特に危機的状況にある国や森、そのうち十分な情報収集が 可能で、しかも日本の木材需要が重大な影響を与えている場所に焦点をしぼって 調査を行った。
■違法や破壊的な伐採の性質そのものと林産物市場の不透明性のため、全ての破 壊の連鎖を明らかにすることは困難であり、よってこのレポートに記述される例 は氷山の一角でしかない。

<<<本レポートで明らかになったこと>>>
■日本は多くの原生林「破壊の連鎖」に加担している。日本の木材需要が引き金 となり、アジア太平洋、アジアロシア(サハリン東北部から中国東北部の地域)、 アマゾン、中央アフリカ、そして南アメリカ(主にチリとアルゼンチン)にある 世界にわずかに残されている原生林は、危機的な状況にある。
■違法や破壊的な伐採のいくつかは、コンコルド・パシフィック社、リンブナン ・ヒジャウ社、アジア・パルプ・アンド・ペーパー社などのように、伐採・貿易 に関わる会社に起因している。
■ラミン、ベニマツ(または朝鮮五葉松とも言う)やブラジルマホガニーのよう な、絶滅に瀕した樹種の取引が存在している。
■日本国内の合板供給のうち、少なくとも40%程度が違法伐採に起因すると推測 する。これは、単純計算によって導かれる数字である。また、公共事業で、違法 又は破壊的に伐採された樹種が使われていることを加味すれば、日本の公共機関 もこの犯罪に関っている可能性が高いと考える。この現状は、世界に残された原 生林を脅かすのみでなく、合法で適切な森林管理をめざす世界的な努力を阻害し、 更に製品の価値を下げることにより、国際木材市場を不安定にさせている。

<<<原生林保護のための国際的な動き>>>
原生林保護にあたり最も重要な国際的な条約は、1992年にブラジル、リオでの国 連地球サミットで採択され、日本を含む182ヶ国が締約している生物多様性条約 である。条約では、「森林は陸上で、最も生物多様性の高いシステムであり…世 界中の陸棲の種の大多数が存在する」ことを認めている。最近になって違法や破 壊的な森林伐採が世界中で増加していることが、1998年のバーミンガムサミット、 2000年の沖縄サミットなど国際会議によって広く知られるようになった。しかし、 こうした国際的レベルにおいても、これらの約束は実行されておらず、今も世界 中で原生林の破壊が続いている。

<<<日本の現状>>>
原生林に脅威を与えている主要な木材輸入国、 日本は、90年代には、平均で年 間約8,300万m3の木材を消費している。2000年には、世界輸入量のうち、原木 13.4%、合板25.4%、チップ&パーティクル68.9%をそれぞれ輸入しており、世界 第2位の製材輸入国として、世界合計の7.7%を輸入した。日本に輸入される原生 林からの木材は、ファッション雑誌、カラオケ本、コピー用紙やコンパネ用合板 など、使い捨て製品としてその一生を終える。これら林製品の製造の大部分は、 国内の人工林からの木材で、その需要を満たすことが可能なはずである。日本政 府は国内林業への適切な援助をすることもせず、この代替資源を利用する選択を 取らずにきたのである。日本政府は、責任を認識し、数々の国際・国内会議で原 生林保護のための約束をしている。しかし、輸入を規制するための何の手段も講 じず、破壊的に伐採された安価な木材の大量輸入を野放しにしている。

<<<生物多様性条約第6回締約国会議にむけてのグリーンピースの要請>>>
リオ地球サミットから10年後にあたる2002年4月、「原生林サミット(生物多 様性条約第6回締約国会議)」がオランダ、ハーグで開催される。各国政府が集 まるこの会議は、世界の森林生態系が「保護」されるか「消失」させられるか、 運命を決定づける重要な場である。グリーンピースは、この締約国会議を「原生 林サミット」と呼び、このサミットに向け、各国政府に以下の行動をとるよう求 めている。

手付かずの原生林での商業伐採を一時中止(モラトリアム)。
原生林の劣化と損失を止めるための対策を講じる。
少なくとも年間に150億米ドルを供出し、世界原生林基金を設立すること。
<<<日本政府が行うべきこと。日本企業と消費者ができること。>>>
日本政府は、原生林破壊を止めるために、木材貿易から破壊的に産出された林 産物を排除し、原生林保護を援助するという自らの公約を守るために、率先して 行動するべきである。グリーンピース・ジャパンによる グレート・ベア・レイン フォレストに関するレポート(2001年3月)と今回の調査レポートから、 この違法および破壊的伐採の問題が余りに莫大・複雑であるた め、その解決の為には政府の迅速な介入が必要であることは明らかである。日本 の企業や消費者は、政府にこれらの行動を促す圧力をかけることができる。それ と同時に、企業や消費者も、FSC に認定された森林から産出 された木材利用や、また、日本において速やかに実行できる短期的な解決策とし ても、国内人工林から産出された木材や木製品の代替への切り替えによって、原 生林保護のための重要な役割を果たすことができる。 レポートを入手したい方はグリーンピース・ジャパンまで。電話:03-5338-9800