【南極海東経46度南緯60度発】

グリーンピースは、12月14日午前0時過ぎ(日本時間)、日本政府が派遣した捕鯨船団に対して、捕鯨中止を求めて説得を開始した。

グリーンピースのキャンペーン船アークティック・サンライズ号 (949トン、オランダ船籍。以下MVAS) にはグリーンピース・ジャパンのキャンぺーナー広野祐子が乗り込んでいる。このとき、広野は船外機付きゴムボートに乗り、捕鯨母船日新丸に接近したうえで、無線を使って交信を行い、「当海域は1994年にクジラサンクチュアリに指定された捕鯨禁止海域であること」「したがって速やかに捕鯨を中止し、立ち去ること」を伝えた。 この交信内容は、日新丸の船内放送で流れ、ゴムボート上からも確認できた。

日本政府の捕鯨船団は、11月6日に、山口県下関港を出港していた。

日本の調査捕鯨は、1987年春まで行われていた商業捕鯨の延長線上にある。捕獲数こそ減ったものの、同じ会社(社名を変更しただけ)・同じ船が、水産庁の命を受けた「調査」として、同じ行為をしているにすぎない。
IWC(国際捕鯨委員会)は、1987年に日本がこの調査捕鯨を開始して以来、毎年、「非致死的な調査に切り替えるか、もしくは調査捕鯨そのものを中止せよ」と、勧告を採択し続けている。それに対して、日本政府は「異議申し立て」を行って、毎年船団を南極海域に派遣しているだけでなく、1994年からは、北西太平洋にも「調査」海域を広げた。

グリーンピースでは、商業的なクジラの捕獲を継続することに強く反対している。クジラの生息数 (特に商業捕鯨の対象となった大型種) は、グリーンピースが捕鯨問題に取り組むようになった1975年当時すでに、商業的には絶滅したに等しい状態に陥っており、かろうじて残っていたのが小型のミンククジラである。商業捕鯨を再開すれば、このミンククジラさえ同じ道をたどることになるのは、企業が採算を求める限り、防ぎ得ない。

日本政府は、資源の枯渇状況を把握するために一旦商業捕鯨の中止 (モラトリアム) を決定したIWCの意向を尊重すべきである。「調査捕鯨」によってもたらされる鯨肉は、日本に持ち帰られ、調査主体である (財) 日本鯨類研究所が業者に卸し、日本国内で高額で流通するため、密漁や密輸鯨肉の温床となってきたことも、グリーンピースが調査捕鯨に反対する大きな理由である。
水産庁はDNA調査などによって違法な鯨肉の流通が防げるとしているが、実際にはNGOの調査によって違法な鯨肉が横行する現実が明らかになっている。

現在、IWC科学委員会では、南半球に生息するミンククジラの数が、巷間言われるよ うな76万頭という数字ではなく、もっと少ない可能性があることが示唆されており、 見直し作業を行うと、50%ということになる可能性も否定できないとしている。この件については、2003年のIWC総会までになんらかの結論が出される予定である。

このところ日本政府は、ODAを利用するなどしてIWC総会での日本支持票を増やすべく画策を繰り返しているため、IWC参加国からは数多くの批判が吹き出している。来年5月、IWC総会が山口県下関市で開催されるのも、支持増強の一環と考えられ、商業捕鯨再開に向けた動きにグリーンピースは警戒を強くしている。

一時的に商業捕鯨を止めたぐらいでクジラが保護されると考えるのは安直であり、日本に捕鯨再開のきっかけを与えれば、再び本格的な商業捕鯨が開始され、クジラを減少させる可能性は大いにありうる。なぜならば、採算を念頭におけば、クジラの資源量温存は二の次にならざるを得ないからである。それが、経済原則なのである。
いま、この国際条約に加盟する国々が、日本政府の行動を止めないことには、再びクジラを絶滅の危機に立たせることになるだろう。

【注】アークティック・サンライズ乗組員の国籍:
アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、ガーナ、ギリシア、アイルランド、日本、スウェーデン、トルコ、チュニジア、オランダ、ニュージーランド、UK、USA。 以上16カ国30名。