10月3日、英国政府がMOX (ウラン・プルトニウム混合酸化物) 燃料加工工場の運営を許可することを発表したことに対し、グリーンピースは、その違法性を指摘し、提訴を検討していることを明らかにした。

今回認可されるMOX工場は英国の西部セラフィールド核施設内にあり、すでに5年前に建設されていた。運営しているのは国営のBNFL社 (英国核燃料会社) だが、英国政府は近い将来民営化したいとしている。セラフィールドには規模の小さい試験施設的なMOX工場が1993年から操業しており、ここで作られた関西電力高浜原発用MOX燃料にデータ不正があった。その燃料は来年にも英国に返還輸送される見込み。

グリーンピースは、欧州の法令では、運営許可を与えるには、経済的正当性、つまり、採算が取れることが証明されていなければならないが、英国政府はそれを証明できないまま許可を与えるとして、提訴を国際環境保護団体「地球の友」と検討中である。このMOX工場には今まで4億7千万ポンド (約846億円) もの税金がつぎ込まれている。しかし、MOX加工契約は現在のところ数件しか見込まれていない。有力な顧客の日本の電力会社は、MOX加工の新たな契約を一社も結んでいない。

また、グリーンピースは、MOX工場稼動による「核ジャック」のリスクも指摘する。MOX燃料から核兵器の材料となるプルトニウムを取り出すことは可能であり、テロリストがこの工場をプルトニウム欲しさに “ジャック” する可能性もある。

10月1日にはアナン国連事務総長がテロリストによる核やその他の大量破壊兵器入手のリスクを削減しようと世界に呼びかけた。英国政府がMOX工場を認可するならばその呼びかけを無視することであり、核拡散のリスクを増やすことにもなる。

さらに、このまま日本へのMOX燃料の海上輸送が続くなら、核を積んだ輸送船は、テロリストから見れば、ネギをしょったカモであろう。去年の10月に、イエメンのアデンで米駆逐艦「コール」にテロリストと思われるボートが突っ込んで爆発が起こり、駆逐艦が大破するという事件があった。おそらく世界最強の駆逐艦でさえ、ほんの数人の行動により破壊できるのである。

核輸送船を守るには、核の輸送を止めるしかない。核ジャックを防止するには核輸送・核施設の閉鎖しかない。