ビのおもちゃの規制について、初めの審議会が開かれました、でも…..

7月27日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・器具容器包装合同部会で、塩ビのおもちゃの規制をどうするか、が初めて検討されました。子どものおもちゃは、食品衛生法で、その安全性などを守ることになっています。今回の審議では、この法律の基準をどう改めるか、ということが話し合われたのでした。そして、「口に入れる塩ビ玩具はDEHPとDINP、それ以外の厚生省が定める塩ビ玩具はDEHPを使用してはならない」という案が出されました。(…でもこの案、審議する前から用意されていたもので、審議によって出てきた案というわけではありません)

そして、内容的にも大きな問題があって、決して安心できるものではないのです。見てみましょう。

審議会のフタル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルに関するおもちゃの規格基準(案)の内容:

合成樹脂性のもので、乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃの製造には、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)[DEHP] あるいはフタル酸ジイソノニル[DINP]を含有するポリ塩化ビニルを使用してはならない。

合成樹脂製のものの製造には、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)[DEHP]を含有するポリ塩化ビニルを使用してはならない。

この規格基準(案)の問題点×と評価できる点○:

×:使用禁止になる物質が1物質(おしゃぶり類については2種類)に限定されており、これでは他の物質による曝露が高くなるという危険が一切考慮されません。

二種類の可塑剤だけを規制対象とすると、他のフタル酸エステル類やフタル酸以外の化学物質が代わりに使われてしまいます。これでは、別の有害化学物質への曝露が増える危険性があります。実際、欧州では、良く使われるフタル酸6種類全てを1999年に規制しました。その理由は、欧州委員会が禁止を決定した文書にこう書かれています。

「2種類だけを規制した場合、もしも残りの4物質が代替として使用を許されることになれば、これらの物質への子供の曝露は増すであろうし、その結果危険性は高くなるであろうと考える。よって、欧州委員会は、予防原則を採用し、(禁止の)決定は残る4種類のフタル酸エステル類についても適用すべきであると考える」。

また、フタル酸以外の可塑剤(アジピン酸、クエン酸、トリメリット酸等)の安全性は、十分確認されていません。

×:おもちゃ以外、例えば粉ミルクや離乳食から摂取するフタル酸エステル類の量も多いことが厚生労働省の研究でも今回明らかになりました。それなのに、問題にされたのは、おもちゃから摂取する量だけで危険なレベルになるかどうか、ということでした。

これでは実際には危険なレベル以上にフタル酸エステル類を摂取してしまうケースが防げません。

規制の対象になるおもちゃの範囲の問題

×:二種類のフタル酸が規制されたのはおしゃぶりなど、口に入れるために作られたおもちゃだけでした。

小さい子はなんでも 口に持っていくし、おしゃぶり以外のおもちゃを長く口に入れていることもありますから、おしゃぶりかどうかだけで線をひくのは、子ども生活の実態には合っていません。

○:一種類のフタル酸の規制については、合成樹脂でできた乳幼児玩具がすべて対象になっています。

子どもは、メーカーの決めた対象年齢のとおりにおもちゃを使い分けたりしないので、乳幼児の玩具全体を対象としたのは評価できる点です。

○:「溶出基準」ではなく、「使用禁止」。

フタル酸エステル類など可塑剤の溶出の度合いは、ばらつきが非常に大きくて、試験方法を決めるのも困難です。そういう不確かな溶出に基準を設けるのではなく「使用禁止」としたのは、当たり前だけど重要なことです。審議会(合同部会)のこの規格基準(案)に対して、グリーンピース・ジャパンでは、「見直そう!子どものおもちゃ」実行委員会と一緒に声明を発表しました。その声明の趣旨は、次の通りです。

「厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・器具容器包装合同部会(7月27日開催)の審議に関する声明」より:

乳幼児の摂取を防ぐべき物質はDEHP、DINPだけではない。塩ビのおもちゃには、他のフタル酸エステル類や、カドミウム、鉛、スズなどの重金属や、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどの内分泌かく乱化学物質、あるいは毒性が十分調べられていない化学物質も使われている。こうした有害物質の使用は、当然回避すべきである。

塩化ビニルは、他の素材と比べても、可塑剤を始め多種多様な添加剤を必要とするプラスチックで、たとえば上記1の物質も、塩ビの子ども用品に使われている。こうした添加剤は、溶出の危険が避けられない。このことから、乳幼児のおもちゃには軟質塩化ビニルを使用するべきではない。

子どものおもちゃの問題は、子どもの健康と安全に関わる問題であり、また、フタル酸エステル類で指摘されている毒性は、生殖毒性や精巣毒性、がんなど、深刻な問題に関わるものである。すでに動物による試験では影響が見とめられている。人体影響との因果関係がはっきりするまで待たずに、危険を回避し予防原則に則って規制を行うべきである。

食品など、おもちゃ以外の経路からのフタル酸エステル類摂取も極めて高くなることがあり、また大気(室内や車内の空気)経由の汚染もある。フタル酸エステルの摂取量をTDIと比較する場合には、各々の曝露経路からの摂取をすべて勘案するべきである。 以上

塩ビのおもちゃのパブリックコメントを出そう !

厚生労働省では今、この規格基準(案)に対して、市民の意見を募集しています。

上に見てきたように、この審議会の規格基準(案)は、今のままでは別の物質による汚染を引き起こす恐れがあったり、食べ物からの摂取量が考えられていないといった問題があります。

みなさんもぜひ、こうした問題を指摘して、有害な可塑剤など、添加剤をたくさん必要とする塩ビは、子供のおもちゃにつかわないよう求めてください。

意見の提出先:

電子メール
[email protected] (厚生労働省医薬局食品保健部基準課調査指定係あて)

郵送
100-8916 東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 (厚生労働省医薬局食品保健部基準課調査指定係あて)

* 締め切りは8月31日です。意見の提出方法の詳しいことは、厚生省ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/public/boshuu/p0801-1.htmlに出ています。インターネットを使わない方は、厚生労働省の上記の係へ。(電話番号03-5253-1111)