6月18日、平沼経済産業大臣は、全国の反原発NGO代表者らと初めて会談し、「プルサーマル中止と核燃料サイクル見直しを求める申し入れ書」を受け取った。会談は、刈羽村でのプルサーマル住民投票で、プルサーマル実施が拒否されたのを受け、反原発NGOである「グリーン・アクション」(京都)、「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」のよびかけにより、社民党国会議員の大島れい子氏の仲介により実現した。グリーンピース・ジャパンでも、全国に賛同をよびかけた。青森から福岡まで32団体が名前を連ねた。







プルサーマル中止と核燃料サイクル見直しを求める申し入れ書

経済産業大臣 平沼赳夫 様


刈羽村住民投票の結果、柏崎刈羽原発でのプルサーマルは否定されました

ご承知のとおり、5月27日の刈羽村住民投票で、柏崎刈羽原発でのプルサーマル実施に対して、村民はノーの意思を表明しました。88%という高い投票率で、プルサーマル反対は有効投票数の54%を占めました。長い間こもっていた住民の声なき声が、原発立地点におけるさまざまなしがらみをうち破り、ひとつのはっきりとした形をとって現れたのです。子供たちの未来を心配するお母さんたちが、さまざまな困難を乗り越え、ようやくにして気持ちを外に表した結果なのです。

刈羽村の住民投票の結果は、民主主義的行動決定の正当な手続きによるものであり、それゆえに、柏崎刈羽原発でのプルサーマルは断念するのが当然です。

ところが貴職は、これはプルサーマルについての説明が不足していた結果だ、さらに説明が必要だなどと決めつけています。これほど村民の意思と理性を踏みにじる言いぐさがあるでしょうか。むしろ刈羽村の住民投票の結果は、貴職が多額の国費を消費し、署名入りビラを全戸配布(総額332万円、1戸につき2400円に値する)して説得しようとした影響ではないのですか。

また、刈羽村で「住民の説得」のために配布されたそのビラで貴職は、原子力長期計画にも書かれていない、これまで電力会社がけっして認めようとしなかった本音をさらけ出しています。すなわち、プルサーマルを実施するための差し迫った本当の理由は、実は、青森に使用済核燃料を搬出できるようにするためだと告白したのです。そして、プルサーマルを認めなければ原発は止まり電力不足が起こるぞと、責任を住民に負わせるように、事実上のおどしまでかけているではありませんか。刈羽村の住民が、行政の怠慢から生じるしわ寄せを担え、そうしなければ大変なことが起きるぞとのおどしです。

それに対し、住民は答えを出したのです。その答えはプルサーマルに「ノー」でした。その結果を踏まえて、住民に対するこれ以上のプルサーマル推進の説明などは一切やめるべきです。むしろ貴職の方こそが、住民からの説明をとくと受けるべきです。住民の声に真摯に耳を傾け、それを尊重し、柏崎刈羽原発でのプルサーマルを断念すると直ちに表明すべきです。それをせずに、さらに「理解を求める」とするのは、住民に対する「いじめ」であり、逆効果をもたらすことでしょう。

プルサーマル計画は事実上消滅することになりました

刈羽村住民投票の結果は、直ちに他の予定されているプルサーマル計画に、さらに深刻な決定的とも言える打撃を与えるに違いありません。

この投票結果は、「プルサーマルに関する国民の理解は進んでいない」という佐藤福島県知事の認識を、事実上如実に裏付けるものとなりました。この認識は容易に変わりうるものではありません。しかもこの知事の認識表明の背後には、電力自由化のもとでの電力需要の構造的変化からくる東京電力の方針変更があるのは衆知の事実です。この東京電力の置かれている新たな条件は、福島原発でのプルサーマル実施をますます困難な方向に押しやろうとしています。

また、高浜原発では、いまだにプールに保管されたままの不正MOX燃料が、プルサーマル自体をプールの底に縛り付ける重石となっているかの如くです。この重石を取り除いてくれるはずのBNFL社は経営困難に陥り、新たなMOX燃料加工施設SMPは契約がとれずに四苦八苦しています。今回の刈羽村住民投票の結果は、日本との契約動向に大きな打撃を与えるに違いないし、イギリスではすでにそのような報道がなされています。

こうして、福井・福島・新潟でのプルサーマルはすべて、最低限でも1年間は実施できる見込みがなく、その後の見通しは全く不透明で、簡単に打開できるような状況にはけっしてないと断言することができます。それとも、福井・福島・新潟に代わって、第2陣、第3陣でプルサーマルを真っ先に引き受ける電力会社が具体的にどこかにあるとでもいうのでしょうか。

いまこそ、このような見込みのないものにいつまでも未練をもつのをやめ、プルサーマル計画そのものを中止するべきときです。

六ヶ所再処理施設は目的を失い、使用済核燃料は核のゴミと化しました

こうして、プルサーマルを実施できる見込みがなくなった結果、使用済核燃料からプルトニウムを抽出するはずの六ヶ所村の再処理施設は必然的に目的を失うことになりました。したがって、現在建設中の六ヶ所再処理施設については、直ちに建設をやめるべきです。

この点に関連して貴職は、刈羽村で撒いたビラの中で、いみじくも次のように解説しています。「プルサーマルが進まず、原子力発電所における利用が進まないとなると、使い終わった使用済燃料のリサイクルが困難になります。リサイクルしないなら、使用済燃料を原子力発電所からリサイクル施設(青森県六ヶ所村)に運び出すわけにはいきません」と。すなわち貴職は、プルサーマルが進まなければ、使用済核燃料を六ヶ所に「運び出すわけにはいきません」と正しく指摘しています。無理に運び出せば、青森県民にいわれのない核のゴミを押しつけることになるのは明らかです。

こうして、核燃料サイクル路線は自動的に破綻するに至ったのです。いまや核のゴミが、誰の目にも明らかなあるがままの姿を人々の前にさらけ出すことになりました。いまこそこの現実を直視し、その実態に即した真剣な議論を起こすべきときではないでしょうか。

以上の認識に立って、私たちは次の点を貴職に申し入れします。


申し入れ事項
刈羽村住民投票の結果に基づいて、柏崎刈羽原発でのプルサーマルを断念すること
プルサーマル計画を中止すること
六ヶ所再処理施設の建設を中止し、核のゴミと化した使用済核燃料の青森搬出計画を含む、核燃料サイクル計画を見直すこと


2001年6月18日



賛同団体名(別紙)

(青森)青森県保険医協会環境部、核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団、核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会、グリーン・アクション・六ヶ所、牛小舎
(福島)ストップ・プルトニウム・キャンペーン
(新潟)みどりと反プルサーマル新潟県連絡会、原発反対刈羽村を守る会、プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク、巻原発反対共有地主会
(埼玉)東京電力と共に脱原発をめざす会、プルサーマル公開討論会を実現する会
(東京)福島老朽原発を考える会、東電MOX差止裁判の会、グリーンピース・ジャパン、原子力資料情報室、柏崎・巻原発に反対する在京者の会、ストップ・ザ・もんじゅ東京、ピースネットニュース、柏崎・巻原発に反対する在京者の会、NCC(日本キリスト教協議会)平和・核問題委員会
(神奈川)日本キリスト教団神奈川教区核問題小委員会
(静岡)浜岡町原発問題を考える会、浜岡原発を考える静岡ネットワーク、東海地震を考える市民ネットワーク
(京都)グリーン・アクション
(大阪)美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、ままはぷん
(兵庫)神戸市:さよなら原発神戸ネットワーク
(山口)被爆二世の会
(福岡)九州電力とのプルサーマル公開討論会を実現させる会、脱原発ネットワーク九州