グリーンピースは、各国からこどもの身の回りの塩化ビニル製品に添加されている化学物質や重金属を分析しました(2001年6月7日発表。報告書「子どもをとりまく塩化ビニル製品の分析調査」)。
この調査は、世界20ヶ国から玩具の他子どもが使ったり触れたりする塩化ビニル製品など55点を入手し、その添加剤を分析したものです。

日本で購入したサンプルは3つ。塩ビのおしゃぶりとボールとレインハットです。分析の結果から、次のような添加剤が含まれていることがわかりました。

おしゃぶり1:口に入れる部分に塩化ビニルが使われていたもの(対象年齢2ヶ月から):

ビスフェノールA* が407ppm検出されました。これは酸化防止剤として使用されたと見られます。
(1にぎにぎおしゃぶり[ピープル(株)])

塩化ビニル製のやわらかいボール2(対象年齢5ヶ月から):

フタル酸ジイソノニルが検出されました。微量だったので、可塑剤として意図的に入れたのではなく、混入と見られます。
(2なめても安心知育ボール[ピープル(株)])

塩化ビニル製のレインハット3:

可塑剤としてフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が267,000ppmとフタル酸ジイソノニル(DINP)が14,800ppmが検出されたほか、ビスフェノールAが176ppm、有害重金属のカドミウムが1.18ppm、 鉛が179ppmが検出された(安定剤として使用されたものと考えられる)。
(3レインハット [(株)富士洋行。但し同社は製品素材をすべて塩化ビニルから切り替えており、この塩化ビニルレインハットも現在は製造されていない])


軟質塩化ビニルは、多量の可塑剤やその他多様な添加剤を必要とするプラスチックです。
可塑剤などの添加剤は塩化ビニルと化学的に結合していないため、たとえ代替可塑剤であっても、化学物質が溶出してくる危険性は避けられません。
また、今回分析した二つのおもちゃは、いずれも「環境ホルモン対策商品」と銘打たれており、包装にも “人体に与える影響が特に疑われるフタル酸エステル類やビスフェノールAが原料のポリカーボネート等を避け、代替物質に変更しました。” “「有害とわかってからでは遅すぎる、殊に何でも口に入れる乳幼児には心配」という母さんにお勧めします” とありました。

今回の分析でみられた結果は、氷山の一角にすぎないかもしれません。塩化ビニル以外にも、子どもの柔らかい玩具に使える素材はあります。添加剤を多種、多量に必要とする塩化ビニルという素材を、子どものおもちゃに使用することはもうやめるべきです。

日本でこうした軟質塩化ビニル玩具が出回っている大もとの原因は、塩化ビニルの子ども用玩具への使用を未だに規制できていないことにあります。
おもちゃの問題は、子どもの問題。国がきちんと責任を果たすべきです。グリーンピースでは、厚生労働大臣へ、次のような要請しました。

子どもが口に入れる可能性があるため、乳幼児の玩具には、塩化ビニルの使用を法的に禁止すること。

すでに消費者が購入した塩化ビニル玩具についても、これ以上子どもが有害物質に曝露する危険を避けるため、厚生労働省で入手できる限りのデータを公開し、消費者、ことに小さい子どもを持つ親に警告を行うこと。


同時に、厚生労働大臣へは玩具への塩化ビニル使用の法規制を、メーカーへは塩化ビニルを玩具に使用することを中止してくれるよう求めるはがきキャンペーンや電子メールで届けるサイバーアクションを開始しました。グリーンピースでは、消費者、ことに小さい子どもをもつ方々への情報提供も行っています。

パンフレットを入手したい方は phone 03-5351-5400へお電話ください。サイバーアクションに参加してくださる方は、http://www.greenpeace.or.jpへアクセスしてください。



*) ビスフェノールAはホルモンかく乱作用を持つ(人工エストロゲン)ことが指摘されている物質。ビスフェノールAを原料にしているポリカーボネートの学校給食用食器や哺乳ビンについては、教育委員会がその食器の使用を止めたり、メーカーが哺乳ビンの素材を変更したりしてきました。



軟らかい塩ビのおもちゃに含まれる有害物質。子どもがおもちゃを通して有害物質にさらされていることを心配して、各国で企業や行政機関の対応が進んでいます。この通信はおもちゃの脱塩ビに関する前進などを、協力団体、育児ママ達他、関心の高い皆様へお知らせするニュースレターです。