5月5日、6日と上関原発予定地の生態調査に参加したグリーンピース・ジャパンは、7日に地元の「長島の自然を守る会」などとともに山口県庁を訪れ、グリーンピース・インターナショナル代表からの上関原発計画撤回要請文(訳文)を副知事に手渡した。グリーンピース・インターナショナル代表が日本の原発計画に関して撤回を申し入れたのは初めて。

綿谷副知事は、要請に対して「(4月23日の “同意” は)手放しの同意ではない」としたが、撤回はしないと述べた。

なお、要請文は、同日、経済産業大臣 平沼赳夫氏、資源エネルギー長官 河野博文氏、中国電力社長高須司登氏にもFAXで送信した。

「長島の自然を守る会」協力の元行なわれた2日間に渡る調査では、5月5日、上関原発計画予定地の向かい側の島、祝島の南西沖およそ20メートル、水深およそ10メートルの場所で、水産庁指定危急種であるナメクジウオが採取された。ナメクジウオは調査のたびに確認されている。

また、同日水産庁指定希少種であるスナメリ(クジラ)が祝島の港で確認された。

調査二日目の5月6日には準絶滅危惧種であるハヤブサが鼻繰島(原発予定地近くの島)上空で確認された。営巣・繁殖活動も過去に確認されている。





<調査速報 — 詳報は後日報告>

今回の田ノ浦(原発予定地)調査で新たに発見された海生生物

フジタウミウシ科(Polyceridae)
リュウグウウミウシ属(Nembrotha sp.)の1種 (発見されたのは、1.5センチメートルの大きさだった)

イソコハク貝
(発見されたのは、1.5ミリメートルの大きさだった。同定した福田氏によれば、この7,80年らい、生貝が採れたことはないとのこと。

– 同定(生物の分類上の所属を決定すること):福田宏氏

*「長島の自然を守る会」では数か月おきに生態調査を行なっている。採集・仕分け・同定への参加・協力を全国から募っている。(費用1万円程度)次回の調査の日程は、決定しだい、同会やグリーンピース・ジャパンのホームページなどで告知する。


— 以下、「長島を守る会」の情報による —

上関原発建設主体である中国電力は、環境調査書段階で、スナメリ・ナメクジウオについて記述せず、ハヤブサも飛翔確認としか記述していない。さすがに中国電力は、山口県・環境庁・通産大臣から追加調査指示を受けたが、その追加報告でも「環境に与える影響は少ないものと考えられる」と結論づけている。原子力発電所建設のために埋め立てられる浜はおよそ10ヘクタールであり、そうした埋め立て、および、放出される放射能や温排水が周辺の海洋生態系を確実に変化させるにもかかわらず、である。

日本生態学会は2001年3月29日年度大会で環境影響調査のやり直しを求める決議を採択している。世界自然保護基金日本委員会(WWF)も上関原発建設計画についての見解で「環境アセスメントの再評価と再実施を行なうべきとする批判的な考え方を支持し、原発計画とその環境や生物への影響を十分に再調査、再検討するべきであり、電源開発基本計画への組み入れや立地許可を拙速に行なうべきではない」との見解を出している。

上関原発についてのくわしい情報は、祝島ホームページ(http://member.nifty.ne.jp/iwaishima/)や長島の自然を守る会(http://www2.ocn.ne.jp/~haguman/nagasim2.htm)、原発はごめんだヒロシマ市民の会(http://www2.ocn.ne.jp/~gomenda/)をご覧下さい。





以下、グリーンピース・インターナショナルからの要請書(訳)

経済産業省大臣 平沼赳夫様
資源エネルギ-長官 河野博文様
山口県知事 二井関成様
中国電力株式会社社長 高須司登様

2001年5月7日

山口県上関原発建設計画撤回要請文 (訳)


グリーンピースは27カ国に支部があり、世界中に250万人のサポーター(会員)に支えられた国際環境保護団体です。

国際環境保護団体の代表として、山口県上関原発建設計画の撤回を要請するため、筆をとりました。

原子力発電所は、放射能を環境に放出しなければ発電ができません。加えて、原子力発電所の、環境へのリスクと経済コストは、原子炉建設を地球規模で停滞させています。例えば、世界的に強まりつつある脱原発の潮流に同調して、米国では、この20年間、新規の原子炉は作られていませんし、1999年、トルコは、原子力発電所建設計画の提案を放棄しています。台湾政府は第4原発中止の決定を2月に覆しましたが、その後、国民投票の実施が検討されているのはご存知と思います。さらに、海上風力発電や太陽光発電のような、原発の代替として、真に持続可能な再生可能エネルギーの使用や発電は、エネルギーの効率化技術とともに、すでに証明ずみの記録を誇っています。

その中で、日本政府が、いまだに、新規の原子力発電所を建てる計画を、しかも、しかも、その地に生息する野生生物の種の多様性・希少性から、自然保護上、大変重要な地域に、進めようとしていることにグリーンピースは深く憂慮します。計画は、当然のことながら、健康と暮らしへのリスクについて心配している地元住民から大変強く反対されています。

持続可能なエネルギー政策実施のため、エネルギー使用の効率化・減を目指さなければならないときに、新規の原発を、多くの問題を抱えたまま、また、多くの反対を押し切って建てる理由はありません。エネルギー使用は増え続ける、という前提こそ、見直し、環境に多大なる犠牲を強いない電源開発のあり方、また、エネルギー使用のあり方を探ることを第一に考えるべきです。

グリーンピース・インターナショナル
代表 ガード・レイポルド(Gerd Leipold)
(署名)