グリーンピース・ジャパンが事務局をしている東電MOX使用差止裁判の会は、データ公開を求めて4月10日刈羽村、4月11日柏崎市、新潟県に対して要請書を提出した。

新潟県では、情報公開に関しては、一般的に求めていく必要がある、とした。東京電力は、ベルゴニュークリア社との交渉の上、データ公開とはならなかった、と認識している、と述べた。

要請項目の2番目の装荷の中止に関しては福島県の状況を踏まえて東京電力に県、市、村、に説明するように求めているが、県にはまだ説明がないとした。要請項目の3番目に関しては、現在行なわれいる実験は、国の安全審査を覆すものとは思えないと、した。

裁判の会としては、非常に不満が残る対応だったが、今後とも、あらゆる機会をとらえて要請行動を続ける。特に安全性の問題については、今後国レベルでの議論をおこしていきたいとしている。

新潟県 県知事 平山 征夫様

要請書

2001年4月11日
東電MOX燃料使用差止裁判の会
原告代表 林 加奈子(福島県)

私たちは、福島県で開始されようとしているプルサーマル計画の実施に際し、搬入されているMOX燃料の品質に対し、大きな不正疑惑を抱き、その使用差し止めを求めてこの度行動を起こした会です。残念ながら司法判断は不正の証拠不充分により却下となりましたが、その処分決定直前に、当該知事の政治的判断により、来夏までの使用が差し止められる結果となりました。つきましては、県民930人を含む総勢1915人の原告と、これを支持する多数の声を聞いていただきたく、お願いに上がりました。

つきましては、以下を要請いたします。

一、東京電力に対し、MOX燃料ペレットの外径寸法抜取検査の結果(元データ)をベルゴニュークリア社から入手すること、及び、開示することを正式に申し入れて下さい。

二、四月から予定されている柏崎刈羽原発の定期点検期間中にMOX燃料の装荷を許さないよう表明してください。

三、今後予定されているMOX燃料安全性研究の実験において安全性が確認されないうちに、プルサーマル計画が開始されることのないよう国・事業者に求めてください。

数々の疑惑を残して東電福島第一原発3号機用MOX燃料使用差止め裁判は終了しました。つまるところ東京電力が、たった一つのデータを裁判においても開示(提出)しなかったからです。そのデータとは、疑惑のもたれているMOXペレット外径寸法抜取検査の測定結果(元データ)で、それこそが不正疑惑の解消のために必要不可欠なデータでした。何の加工もしていないわずか9516ケの数値が記入された、製造ロット70個分のシートです。(柏崎刈羽では62ロット分)さすがに裁判所も、処分決定理由の中で、「ペレット外径寸法の検査データが重大な製造ノウハウにかかわるものとはおよそ考えがたい」と断じています。非開示の理由として、東京電力では「契約上ベルゴニュークリア社の工場の外に持ち出せない。東京電力自身も入手していない」と主張、一方国では「ベルゴニュークリア社の競争上の地位を害する恐れがあるから、更なるデータの開示を指導するつもりはない(政府答弁書)などとしています。そこには、地元住民の生命・財産を守らなければならないという責任感など微塵もみられません。「安全優先」とは口ばかり、国・事業者まかせにしていたのでは住民の安全は守れません。裁判所は、彼らの主張の妥当性をはっきり否定したのです。地元自治体として、東電に対し、自ら当該データの入手と開示を求め、「各方面における検証を可能に」(裁判所の判決文より)してください。

ここで「各方面における検証」というのは、関西電力用BNFL社製MOX燃料の不正事件のときに、市民有志が、公開された生データを分析して不正を指摘することができた事実を意味しており、国が召集したBNFL問題検討委員会の中で専門委員が発した反省の弁です。一方で、国の規制当局である通産省や、事業者の関西電力では、英国規制局が分析した統計的分析結果に対して極めて甘い評価を下し、不正を否定できないという英国側と評価が分かれ、最終的にはそれを認めざるを得なかった、という恥ずべき経緯を踏まえています。どんなに価値ある証拠でも、曇りのある目で見たのでは真実は見出せないのです。従って、データの公開とは、そうした各方面の検証を可能とするものでなければならないし、国の検討委員会においても、今回の仮処分決定を下した福島地方裁判所においても、明言された言葉です。

今回の仮処分においては、文書提出命令をかけられないという制約の下で、東京電力が逃げ切ったということでしかありません。東京電力が公開しているわずかの、しかも意図的に加工を施した図を元に私たちが苦心して行った立証では不正と断定することができなかった、というのが裁判所の判断です。「”不正操作があった”とは認められない」ということです。加えて「証拠を示さない以上、不正があったものとみなすべき」という私たちの主張も裁判所は退けました。私たちとしては大変不満の残るところですが、実は、こうした判断は、冒頭に指摘した、たった一つの生データが開示されなければ、このまま疑惑が晴れることもない、ということを意味し、東京電力にとっても決定的に不利な結論となっています。仮処分決定において逃げ切れても、社会的に逃げおおせてはいないのです。

この東京電力に対して、生データの入手と、公開を要請し、各方面での検証を可能にさせることができるのは、いうまでもなく地元自治体(新潟県・柏崎市・刈羽村)です。逆にデータの公開もなしに、燃料の装荷は認めるべきではありません。

安全性の論点については、裁判所は判断を回避してしまいました。しかし、12月末の証人尋問においてようやく裁判所が安全性議論に関心を示し、英国核物理学者のフランク・バーナビー博士が「日本のどの原子炉であれ、MOX燃料を装荷することは危険すぎる」と証言されたことが、福島県知事のプルサーマル拒否の明言に大きな影響を及ぼしたことは間違いがありません。

私たちは、原発立地県としてはじめて原子力政策の見直しを掲げた同知事を強く支持するとともに、新潟県においてもこれに足並みをそろえ、県民の意見に耳を傾け、ともに住民本位の行政に取り組まれるよう衷心よりお願いいたします。不正疑惑をめぐる対応に象徴される国・電気事業者の姿勢を糾す一歩へと、私たちの投じた司法への訴えを、ご活用いただければ幸いです。

刈羽村と柏崎市への要請は、同じ内容です。