本日午前6時10分頃、柏崎刈羽原発3号機用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を積んだ輸送船「パシフィック・ピンテール号」が柏崎刈羽原発専用港に入港した。

グリーンピース・ジャパンは、地元の反原発団体やプルサーマル計画に反対する労働組合など約300人とともに、午前5時からの抗議集会に参加し、MOX燃料の危険性を訴えた。その後、柏崎刈羽原子力発電所を訪れ、東京電力職員に抗議文を手渡した。







以下、手渡した抗議文。





東京電力株式会社
代表取締役社長
南 直哉殿

抗議文
2001年3月24日

グリーンピース・ジャパン
事務局長 志田 早苗
核問題担当 鈴木 かずえ


新潟をプルサーマル実験場にするな!


国際的な反対、日本市民の反対にも関わらず、ウラン・プルトニウム混合酸化(MOX)燃料使用計画を強行しようとしていることに、強く抗議します。
MOX燃料はプルトニウムを含んでいるために、安全性などの面で、通常のウラン燃料よりもさらに問題があり、グリーンピースは以下の理由から利用には絶対反対です。

一、MOX燃料はより危険である。
二、MOX燃料は労働者の被曝量を増やす。
三、MOX燃料の使用済みの処分方法が確立されていない。
四、MOX燃料の使用により核拡散の問題が生じる。
五、柏崎刈羽原発3号機に運ばれようとしているMOX燃料には品質管理データに不正がある疑いがある。


また、MOX燃料はウラン燃料よりもコストがかかることから、そのコストを吸収するために、効率ばかりが重視され、その結果、安全性が軽視される恐れもあります。
また、日本にはエネルギー資源が乏しいためにプルサーマルを行う必要があるといいますが、それなら放射能汚染を引き起こすプルサーマル燃料ではなく、省エネルギーや、風力などを利用する再生可能エネルギーこそさらに取り組むべきと考えます。以下に、問題点の詳細を添付します。


一、MOX燃料はより危険である。

ウランとプルトニウムとは、混ざりにくく、MOX燃料ペレット中にプルトニウムの濃度の高い部分(プルトニウムホットスポット)が形成される。このスポットにおける核分裂は、局所的な温度上昇をもたらし、MOX燃料棒の被覆管に損傷を与える可能性がある。また、MOX燃料を使った原子炉は、プルトニウムの核反応の性質により、制御棒のききが悪くなる。さらに通常のウラン燃料よりも多くの核分裂生成ガスを出すため、燃料棒内での圧力も高まる。全体として大幅に安全性が低くなる。


二、MOX燃料は労働者の被曝量を増やす。

ウラン燃料の製造においては存在しない、アメリシウム241からでるガンマ線に労働者が曝される。また、プルトニウムそのものの毒性が非常に高いため、被曝管理も難しくなる。プルトニウム汚染事故は、1991年6月ドイツのハナウMOX工場で起きており、この事故が大きな原因となって、工場の運転許可が取り消されている。また、同じ年、ベルギーのFBFC社MOX燃料集合体組み立て工場でも労働者がプルトニウムを吸入する事故がおきている。


三、MOX燃料の使用済みの処分方法が確立されていない。

ウラン燃料の使用済みさえ、最終処分地のめども立っておらず、再処理前の使用済み核燃料が各地の原発の使用済み核燃料貯蔵プールを満杯にさせている。電力会社は「MOX燃料の使用済み核燃料も再処理する」とするが、MOX燃料を再処理できる再処理工場は存在せず、その使用済み核燃料を貯蔵する場所もなく、使用されたサイトが核のゴミ捨て場となる危惧は大きい。

四、MOX燃料の使用により核拡散の問題が生じる。

現在の全世界での民事用プルトニウムの備蓄は200トン以上である。そのうち、日本のプルトニウムはおよそ32トンにものぼる。今回のプルトニウム燃料輸送に対し朝鮮民主主義共和国は「日本は核兵器を製造するつもりだ」と報道した。5kgのプルトニウムで核兵器1個を製造可能という事実から、日本のプルトニウム備蓄が東アジアに軍事的核拡散の緊張を増長させていることは否定できない。


五、柏崎刈羽原発3号機に運ばれようとしているMOX燃料には品質管理データに不正の疑いがある。

関西電力高浜原発用MOX燃料の品質管理データはねつ造されていた。それは、燃料ペレットの外径寸法の全数計測データと抜取検査データのヒストグラムを比較することによって市民により暴かれたのである。柏崎原発3号機用MOX燃料の外径寸法の全数計測データは、消去されているとされている。また、抜取検査データは、本来1ミクロン刻みのものが存在するのにもかかわらず、4つづつまとめたものの平均値しか公開されていない。従って、比較による検討ができない。しかし、高浜用燃料のデータねつ造をつきとめた「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」の小山英之氏が、4つづつまとめたものの平均値から本来存在する1ミクロン刻みのデータを予測し、それを正規分布と比較したところ、異常な形が現れたという。異常な形は、不正が行われたこと可能性を示唆している。