東京電力福島第一原発3号機用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の使用差止めを求める仮処分申請の審尋が3月1日10時より1時間15分間行われ、裁判は結審した。

「この裁判には二つの争点がある。一つ目は、MOX燃料を製造したベルゴニュークリア社の品質管理データに不正があったかどうか。それについては、不正があったということを証拠を示して立証できた。二つ目は、不正のため不良ペレットが混入していた際の危険性。それについては、国の研究所である日本原子力研究所の最新の実験報告などの証拠を示して立証できた。有利な判決を期待できると思う」

「長い間使用したMOX燃料のPCMI破損* と言われる破損についての実験は日本原子力研究所でこれから行うことになっており、このMOX燃料が使われれば、福島県が実験場となってしまう」

「ここ1週間の福島県知事のプルサーマル実施拒否発言は、裁判も影響していると思う。原告は、県にも裁判の経過を説明し、MOX燃料の危険性を示す証拠を出してきた。それが、プルサーマルには “危険が内在している” という発言(産経新聞2月27日付)につながったと思う。この裁判の原告約1900人のうち、福島県民は900人以上を超えている。また、おおよそ半数は福島県民であり、知事の言葉は福島県民の声を代弁している」と
原告側の海渡雄一弁護士は述べた。

また、同じく原告側の河合弘之弁護士は
「この裁判で東電の秘密主義が明らかになった。原告側は、品質管理データの公開を要求してきたが、東電は、”ベルゴ社が出すなというから” として、開示を拒否した。契約上の守秘義務事項を明らかにすべきだ」と述べた。

原告代表の林加奈子さんは裁判を行った感想として、
「最近の県知事のプルサーマル拒否の発言は県民の気持ちを反映していると思うが、1年延期、とかそういう問題ではなく、許してはならないと思う」と語った。

原告団事務局のふくろうの会(福島老朽原発を考える会)の阪上武さんは
「東電は不正の有無については立証責任を放棄し、安全論争についても、まともな反論ができなかった」とし、
同じく原告団事務局のグリーンピース・ジャパンの鈴木かずえは
「決定は、差止めしかない」と述べた。

決定の申し渡しについては、裁判長は、
「できるだけすみやかに出そうと考えています。いつ出すかは、1週間前か、2、3日前になるかはわからないが、事前にお知らせします」とした。

本日午後6時半からは会津若松で報告会が開かれる。これまで、福島市、郡山市、いわき市で報告会が開かれてきたが、会津では初めて。




*PCMI破損とは:
長い間燃料を燃やし続けると、被覆管は縮んでいくが、ペレットは膨張していくので、ペレットが被覆管を押す。これをPCMI(ペレット—被覆管機械的相互作用)というが、出力が急上昇する事故の際には、このPCMIによって燃料棒が激しく破損する。これをPCMI破損という。




尚、プルトニウム輸送船は現在タスマニア島南西480kmの所を航行中であることを、グリーンピースは飛行機での探索により確認した。