環境保護団体グリーンピース・ジャパンは、在日米軍で本日搬出準備作業の行われたPCBを含む廃棄物の処理と行方、および地域社会への告知について質問書を米国大使館へ送付した。質問の要旨は、

PCB廃棄物の送致先
焼却ではない環境に害のない処理を行う体制の整備状況
地域社会への情報公開
の3点(添付資料)。


近日中に米国のどこかへ空輸される可能性について、相模原の現地で監視をつづける相模補給廠監視団から情報を受け、米国側に説明をもとめたもの。
米軍のPCBトランス廃棄物については、昨年春にも、その一部を米軍が相模補給廠から移動、処理しようとした際、廃棄物を積んだコンテナ船が、カナダ、米国で入港/荷揚げ拒否に遭い、処分先が決まらないまま4月に横浜港に戻ってきたことは、記憶に新しい。この時、グリーンピースの要請と抗議に対し米国大使館から、「環境に害の内方法で処理をする」という米国の公約が発表された(2000年4月18日)。
しかしながら、その約一月後に南太平洋へ再輸出されたそのPCB廃棄物は、いまだにウェイク島に放置されており、米国の公約は未だ実現されていない。

廃棄物処理においては、地域社会がそれを監視し、意思決定に参加できるよう保証されていなければならないし、廃棄物処理が地域環境に害を及ぼさないよう厳しい規制のもとにおかれなければならない。*2
過去、アメリカ軍施設跡地で著しい土壌汚染が発覚してきた。こうした事実を考えれば、米国側がいかなる理由を主張しようと、それによって有害廃棄物の移動や処理が隠蔽されるようなことがあってはならない。このことを米国は認識すべきである。





*1:PCB(ポリ塩化ビフェニール):

免疫や生殖に害を及ぼし出生時障害の原因にもなる。発がん性物質。国内及び世界の多くの国で禁止されてきた。が、現在も変圧器や蛍光燈などPCBを使用した機器が大量に使用されており、早期の使用中止が求められている。今年5月に採択予定の難分解性有機汚染物質(POPs)国際規制条約で、最優先対策物質として、段階的廃止が決定した12物質のうちの一つでもある。


*2:グリーンピースの主張
焼却処理を行わないこと:この廃棄物がどこで処理されることになろうとも、焼却という手段を用いず、 閉鎖系で無害化処理する必要がある。
汚染者負担の原則:廃棄物処理や汚染を浄化するための費用は、全額、汚染者、排出者が負担すること。今回のPCB廃棄物について、汚染者、排出者は、アメリカ軍である。
責任:このPCB廃棄物は米軍のものであり、米軍から発生し、排出されたものであり、これは米国の問題である。
地域社会の権利の保証:いかなる廃棄物処理においても、地域社会がそれを監視し、意思決定に参加できるよう保証されていなければならない。 また、廃棄物処理が地域環境に害を及ぼさないよう厳しい規制のもとにおかれなければならない。






(添付資料)


アメリカ駐日大使
トーマス・フォーリー殿
2001年2月15日

本日在日米軍の神奈川県相模原補給廠で積み込まれた
PCB入りトランス廃棄物に関する質問書


拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

昨年春、在日米軍のPCBトランス廃棄物を移動、処理しようとした際、カナダや本国である貴国で入港を拒否されるなど大きな混乱をひきおこしたことは、記憶に新しいことと存じます。それらが日本へ送還された際、米国政府は環境に安全な処理を行うことを約束されました。しかしながら、その後も米国内での非焼却の安全な無害化処理の体制は整えられていません。また、米国国防総省が関係地域に対して事前に情報公開を行わなかったことが混乱を大きくしたにもかかわらず、今回も廃棄物の輸送自体や送致先が事前に公表されておりません。こうした実状から、本日相模原補給廠で搬出準備をされているPCB含有廃棄物の行く末と、それに伴う地域社会の知る権利と安全について我々は強い懸念をもっております。つきましては、下記の通り質問をさせて頂きます。

本日相模補給廠で荷積み作業を行ったPCBの送致先はどこか。

在日米軍のPCB廃棄物を環境上問題のない方法で無害化する、と貴国が昨年4月に公約されたが、その体制はいつまでに整えるのか、また今回搬出されたPCB廃棄物もその方法で無害化すると約束できるか。

PCB廃棄物の国内保管・移動先そして送致先の地域社会へ今後どのような事前通告を行うつもりか。

以上、回答は文書で頂きたいと存じますが、それが不可能な場合は、こちらから貴大使館まで伺いますのでご連絡ください。

宜しくお願い申し上げます。


敬具
グリーンピース・ジャパン
事務局長 志田 早苗