仏「ル・モンド」紙はプルトニウム燃料ペレット外径データが1ミクロン単位ではなく、4ミクロン単位なのは「それは顧客側からの指定によるものだ」と報じた。顧客側とは、東電のことである。

東京電力福島第一原発3号機用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の品質管理データは、ほとんどが非公開となっている。関西電力高浜原発用プルトニウム燃料の品質管理データのうち、燃料ペレットの外径寸法の抜取検査データは1ミクロン単位のものが公開されているが、東電は、4ミクロンづつにまとめたグラフしか公開していない。
福島地裁に福島原発プルトニウム燃料使用差止め仮処分申請を行っている原告側は、その理由を
「1ミクロン単位のデータを公開すると不正が発覚してしまう恐れから、わざわざ4ミクロン分まとめた粗いグラフを作った」として、不正が行われた可能性を指摘している。

原告側は、これまでも1ミクロン単位でのデータ公開を求めているが、東京電力は
「(燃料製造会社の)ベルゴ社の都合」
「ベルゴ社の競争上の地位を害する恐れがあるため」(上記燃料使用差止め仮処分申請裁判資料など)
として、公開していない。

しかし、仏「ル・モンド」紙記者がベルゴニュークリア社のイヴォン・ヴァンデルボルグMOX部長に電話インタビューをしたところ、4ミクロン単位での公開は「それは顧客側からの指定によるものだ」と答えたという。
代名詞の「それ」が4ミクロン単位での公開を指すことは、文脈から明らかであるだけでなく、執筆した記者にも確認がとれている事実である。


同仮処分申請では、これまで4回の審尋と1回の口頭弁論が開かれている。原告の主張は、以下の通り。

東電は、燃料ペレットの外径寸法の抜取検査において、不合格がゼロであったとしているが、それは、統計学的ほぼありえず、もし、不合格がゼロという記録なら、不正があった可能性がある。

東電が公開している燃料ペレットの外径寸法の抜取検査のグラフは、わざわざ4ミクロン分まとめているが、そこから1ミクロン単位のグラフを予測すると、異常な形が現れる。不正のためではないか。

不良ペレットが使用された場合、事故がおこり、原告に被害が及ぶので、燃料の使用差止めを求める。


1月18日には、回を重ねても具体的な反論を行わない東電に対し、裁判所からの「求釈明」も出されている。
内容は、12項目にもわたるもので、最初に、燃料ペレットの抜取検査の寸法データを公開できない理由について、これまで東電が繰り返している「ベルゴ社の方針」「ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがある」以上の、より具体的な説明を求めている他、東電からの反論である「ベルゴ社の不良品率は低いので不合格ゼロでも不自然ではない」などの具体的な立証や、その他の情報を求めている。

次回の口頭弁論は1月30日(火曜日)午後3時半から福島地裁。
原告側からは、準備書面5や、米国核管理研究所科学部長ライマン博士の論文「沸騰水型原子炉におけるMOX燃料の品質管理の重要性」、上記ル・モンド記事その他の書証が、東電からは、上記求釈明にもとづいた書面などが提出されている。


* これまで裁判所に提出された書面については、以下のサイトをご覧下さい。
http://member.nifty.ne.jp/fukurou-nokai/puru-menu.htm





添付資料:福島地方裁判所からの東電への求釈明事項


ベルゴ社の抜取検査による個々のペレットの寸法データを公開できない理由について、「ベルゴ社の方針」(甲5p24)、「ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがある」(甲14の2p21)と説明されているが、より具体的に説明されたい。

申立書中申立の理由第二章第四の主張に対する反論をされたい。
なお、ベルゴ社の抜取検査に関して、ブレンダー毎の抜取個数、ブレンダー毎に抜取個数が異なる理由を明らかにされたい。
ベルゴ社の抜取検査に関して、抜取率をMIL-STD-105Dに基づいて設定した(甲5p6)ということの具体的な内容について、甲38の1.2を適宜引用しながら分かり易く説明されたい。

ベルゴ社製造に係る福島第一原子力発電所3号機用MOX燃料ペレット外径寸法データについて、BNFL社に対して英国原子力施設検査局(NII)が行ったような、ベルギー国の規制当局による統計分析を含む調査が行われたか。

ベルゴ社製造に係る福島第一原子力発電所3号機用MOX燃料ペレットについて、ベルゴ社による品質管理認定書は作成されているか(甲25p3参照)。作成されているとすると、その記載内容はどのようなものか。

ベルゴ社において製造部門による工程管理に用いているレーザー計測装置と品質部門による抜取検査に用いているデジタル式マイクロメーター(機械ゲージ)とは、測定の精度が異なるか。どの程度異なるか。

債務者は、ベルゴ社の不良率をどの程度と考えているのか。例えば、乙20p12によれば、BNFL社の不良率の100分の1以下という記述がある。
甲2の一般的な統計理論(不合格率の算定公式)や甲45の抜取ペレット数の推定、不合格0の確率論に対して、反論はあるか。

甲64(平成12年11月24日付け小山英之作成の陳述書)について、反論されたい。

乙6p3.4の記述内容について、甲20p30図2p31図5とを関連させるなどして、分かり易く説明されたい。

甲65によれば、ベルゴ社の方がBNFL社よりもプルトニュウムスポットの径が大きいとの指摘があるが、この相違は両者の製造能力に関わる問題か、BWR用とPWR用との製造特性に関わる問題か。

軽水炉(BWR、PWR)、新型転換炉(ATR)、高速増殖炉(FBR)、熱中性子炉(乙17p10)について、プルトニュウム燃料との関係において、分かり易く説明されたい。
平成7年8月のATR実証炉計画の中止決定(甲20p28)とは、電源開発株式会社の大間原子力発電所(乙5p2(注))のことか。なぜ中止となったのか。

海外におけるプルサーマルの実績中、PWR(加圧水型炉)に比較してBWR(沸騰水型炉)による事例が少ない(甲11p30)理由は何か。

以下の年月日を明らかにされたい。
・東芝とコモックス社との加工契約成立日
・ベルゴ社における本件MOX燃料ペレットの加工開始日
・ベルゴ社における本件MOX燃料棒の製造完了日
・FBFC社における本件MOX燃料集合体の組立完了日
・本件MOX燃料輸送船の出港日
・本件MOX燃料輸送船の小名浜港到着日
(東電と元請メーカー東芝とのMOX燃料加工契約成立日は、平成7年4月28日か。乙28の1)