国際環境保護団体グリーンピースは、英仏の複数の情報源をもとに、日本へのウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の2回目の輸送が、1月17日にも行われる可能性があると発表した。英国船籍の武装核輸送船「パシフィック・ピンテール号」(5,271トン)が14日にも、母港のバロー港(英北部)を出港、フランスのシェルブール港に向かう見通し。護衛艦の役割を果たすと見られる武装核輸送船「パシフィック・ティール号」(4,862トン)はその2、3日後にフランスへ向かう見通し。15または16日にはシェルブールに到着し、プルトニウム燃料積み込みは17日に行われ、その日中に日本へ向けて出港する可能性がある。プルトニウム燃料は、現在ラ・ハーグ再処理工場で保管されているもようであり、工場からシェルブール港への輸送は14日から行われる見通し。

グリーンピース・ジャパンでは、10日、新潟県知事に目前に迫る輸送について危険性を警告し、燃料の安全性を確認できるデータが公開されていないこと、当該燃料を製造したベルゴニュークリア社(ベルギー)には、品質管理上の不正の疑義があること、などから、改めて輸送の中止を求める要請書を送付した。(別紙)

現在、日本の高レベル放射性廃棄物を積んだ核輸送船「パシフィック・スワン号」が大西洋を航行中であり、すでにアルゼンチン、チリ、ウルグアイ政府からの抗議声明が出ている。ダブルで放射性物質の輸送を行うのは、日本は世界の海を私物化するのかと非難されかねない。高レベル放射性廃棄物にせよ、プルトニウム燃料にせよ、海上で放射能が漏れるような事故が起これば周辺の海域は広範囲に汚染され、観光、漁業にとって壊滅的な状況となる。

グリーンピースは、核兵器に転用可能なプルトニウム燃料の海上輸送を中止させたいとしている。





新潟県知事への要請書添付

要請書
新潟県知事 平山征夫さま

目前に迫るプルトニウム燃料輸送の中止を !
2000年1月10日


国際環境保護団体グリーンピースは、英仏現地の複数からの情報により、柏崎刈羽原発用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の日本への輸送が来週17日にも行われる可能性のあることを知りました。そこで、あらためて、貴県から、輸送中止の要請を東京電力、日本政府にしていただくよう、お願い申しあげます。理由は以下の通りです。

当該燃料について安全性を確認できるデータが公開されていない。

柏崎刈羽3号機用プルトニウム燃料は、ベルギーのベルゴニュークリア社で製造されたものです。燃料の所有者である東京電力は関西電力用プルトニウム燃料のデータ不正事件をうけて通産省から、東電用燃料についても再調査を求められ、その結果を報告書にまとめています。しかし、その報告の中では、燃料ペレット寸法の抜き取り検査データをはじめとする燃料の安全性を確認できるようなデータは公開されていません。柏崎市で行われた、通産省によるMOX燃料の品質保証に関する説明会でも、データ公開を求める声が相次いだにもかかわらず、商業上の秘密であることを理由に公開がなされませんでした。原子力学会倫理規定(案)では「会員は、組織の守秘義務に係る情報であっても、公衆の信頼感・安心感を失わないために必要な情報である場合には、これを速やかに公開しなければならない。この場合、組織は守秘義務違反を問うてはならない」としています。


ベルゴニュークリア社製の福島原発用プルトニウム燃料には重大な不正の疑義がある。

東京電力は、福島原発用プルトニウム燃料の寸法抜き取り検査の際に、不合格はなかったとしていますが、それは数理統計学上ありえず、不正が行われた可能性があります。柏崎刈羽用燃料については、不合格のブレンダー(バッチ)が一つ発生したということです。重大な疑義の生じている会社の、同じ時期に製造された燃料を受け入れるのは許されません。


他にも、そもそもプルトニウム燃料は、ウラン燃料よりも危険である、使用済みの燃料はどうするのか、労働者の被曝も増大する、などの理由がありますが、これまでも再三指摘させていただいているので、ここでは繰り返しません。最後に申し上げたいのは、知事には、この輸送、この使用を止めるお力がおありということです。新潟県の環境、県民の命を守るために、プルトニウム燃料の輸送、使用を認めないでください。また、日本が再処理政策を取りつづけているために、再処理工場の汚染に苦しむ英仏の方々にも思いをはせていただきたいと思います。


グリーンピース・ジャパン
核問題担当 鈴木 かずえ