国際環境保護団体グリーンピースはこれまでで最も多量の高レベル放射性廃棄物を積んだ輸送船を探索し、監視するための船を派遣すると発表した。

英国船籍の核のゴミ輸送船「パシフィック・スワン号」は昨年12月20日にフランスを出港して、青森県六ヶ所村をめざして航行中であるが、現在位置は秘密にされている。近日中にアルゼンチンとチリの経済水域である200海里域内を通過すると見られている。グリーンピースは、ホーン岬を通過する「秘密の航海」を暴くため、現在アルゼンチンのウシュワイアに監視船を待機させている。

「この輸送は浮かぶチェルノブイリだ。スワンに積まれている核のゴミは9600万キュリーに相当すると推定される。危険であり、そもそも完全に不必要なものだ。私たちの海域に入ってほしくない。英国核燃料会社BNFL社がこの死を招く船の通過を『影響が全くない、安全な航行』と主張しているのは許されない。」(グリーンピース・アルゼンチンのマーティン・プリエト)

この輸送船は、航路にあたる海域周辺国の何百万という人々と環境を脅かしている。
すでに、12月21日、ブラジル、ウルグアイ、チリ、アルゼンチンから抗議声明が出ている。12月29日には、チリの外務大臣がチリの経済水域200海里へ侵入すべきでないと国営放送で発言している。

この輸送を担当している輸送会社PNTL社の広報、ビル・アンダーソンは先週、今後10年間に高レベル放射性廃棄物の輸送は20回も計画されていると発言した。

通常の輸送なら20日間も輸送時間を短縮できるパナマ運河航路を取るところだが、政治的な反対が強く、断念したようだ。ホーン岬航路は1995年の最初の高レベル放射性廃棄物輸送に使用された。当時も、武装艦を出して自国の海域から出るようにと命じたチリ政府を始めとして強い反対の国際世論があった。

「パシフィック・スワン」は192本の高レベル放射性廃棄物ガラス固化体を積んでいる。このガラス固化体はフランス国営の核燃料会社であるコジェマ社のラ・アーグ再処理工場でプルトニウムが分離された際の廃棄物である。このガラス固化体に1メートル以内に近づくと1分以内に致死量の放射線を浴びるという非常に危険な廃棄物である。もし、環境中に放出されれば、何千年もの間、環境を死滅させる。

「この貨物のたったひとかけら分の放射能が漏れても環境と人間にとって大惨事となる。このような危険な貨物を南アメリカ海岸沖に送ることは、環境を全く無視して、なりふりかまわず利益だけを追求している態度だ。まして、ホーン岬のようなこれまでに多くの船舶が事故を起こしたような危険な海域なのにもかかわらず。」(マーティン・プリエト)

グリーンピースは繰り返し、日本政府の、原発の使用済み核燃料から核兵器生産に転用可能なプルトニウムを取り出す計画の中止を求めている。このプルトニウムを使っての本格的な発電はいまだ行われていないし、経済的にも見合わず、安全面からも、核拡散の脅威という面からも正当化できない。

なお、現在、英仏で、東京電力柏崎刈羽原発用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の輸送の準備がすすめられている。もし、高レベル放射性廃棄物の到着予定の2月後半までにプルトニウム燃料の輸送が開始されれば、史上初のダブル輸送となる。