【ヨハネスブルグ / 東京発:2000年12月10日】

UNEPのもと南アフリカ ヨハネスバーグで開催されていた 難分解性有機汚染物質(POPs)を国際的に規制する条約策定のための最後の政府間交渉(INC5)は、最も危険なPOPsの段階的廃止を含む合意をして、本日終了した。

合意された条約文書は、既存のPOPsの全廃を目標とし、また産業活動により新たに生み出されるPOPsに対しても生産使用に終止符を打つものとなる。
対策が優先されるべき12のPOPsは、もっとも危険な人工化学物質であり、環境に蓄積し、人の健康を地球規模にわたって汚染してきた。
これらのPOPsの生産、排出が始まって以来数十年を経て今日、国際条約でこれら物質を全廃し、新たなPOPsを地球環境に放出する出口が閉ざされることとなったのは画期的である。



素材・工程の代替

ダイオキシンなどの非意図的なPOPsの全廃を達成するために、ダイオキシン類を発生する物質、製品、製造工程について、汚染を引き起こさないものへ代替する必要があることも合意された。ダイオキシンは、廃棄物焼却や、塩化ビニルなどの生産工程で塩素を用いる工業において発生する。

日本のダイオキシン特別措置法では、素材対策を組み入れることができなかった。しかし、合意された条約案の文書にはダイオキシン対策として素材・工程の代替の必要性が明確に盛り込まれた。
この代替に関する合意は、産業界に対して、製造における素材や工程の改善を求める強力なメッセージである。


予防原則

会議では、POPs条約が予防原則に基づくことも合意された。予防原則は、日本では先のダイオキシン特別措置法をはじめ国内法では明記されておらず、だからこそ最も日本で必要とされている原則といえるだろう。
予防原則に基づくことにより、物質が害を引き起こすと考えるに足る理由があれば、科学的な証明を待たずとも、そうした物質を環境へ放つことを止めるために予防的な手段を講じることが求められる。そして、科学的な因果関係が証明されていないという理由によって、対策がいつまでも引き伸ばされる事態を回避することもできるだろう。


支援基金

途上国がPOPsを全廃していくための資金的支援も合意された。世界のPOPs問題を解決するために、多くの途上国が参加し、対策をとることが必要条件と考えられているためである。

「条約への合意ができたことは、汚染なき未来への歴史的で重要なステップである。が、これを有効なものとするためにはまだ多くの作業が必要である。”基礎は作られた”、が “実質化はこれから” である」ケヴィン・ステアーズ(Kevin Stairs グリーンピース・政策担当)