グリーンピース・ジャパンは、10月3日、MOX差止め裁判の会として福島県を訪れ、以下の要請書を福島県知事に、福島県生活環境部原子力安全対策課を通じて提出した。





福島県知事 佐藤 栄佐久様

要 請 書


東電MOX差止裁判の会
原告代表 林 加奈子(福島県双葉郡)
事務局/東京都渋谷区代々木1-35-1代々木会館4F
グリーンピース・ジャパン内



東京電力福島第一原発3号機用MOX燃料の差止仮処分申立は、9月18日に第2回の裁判が開かれた。追加の申立により、原告は1107名、うち福島県民214名となった。

東京電力より、申立の棄却を求める答弁書が提出されたが、その特徴は私たちの申立理由についてはほとんど認否らしい認否を行わず、また私たちの「本件MOX燃料ペレットの抜取検査において不合格率がゼロであったという検査結果は、統計学的に不正なしにはあり得ない」という主張に関しては、これがBNFL社での不正をあてはめただけの憶測と決めつけ、反論すら放棄していることである。私たちはこの日に提出した書面で、私たちの主張が事実と一般的理論に基づいたものであることを説明し具体的に反論するよう求めた。裁判所は、3時間半にもおよんだ裁判の場で、東京電力に対し具体的に反論するように求め、東京電力はこれを承知せざるをえなかった。

また、東京電力は答弁書において、8月10日に国の輸入燃料体検査の合格証を受けたことを、MOX燃料の品質保証の拠り所としている。しかし同時に東京電力側から証拠として提出された、8月1日付けで東京電力が国に提出した品質管理についての説明書には、東京電力が今年2月に提出した報告書の中身以上のものはなかった。品質保証の確認は電気事業者まかせとなっており、国がデータに遡っての独自の確認をしていないことは、政府答弁書からも明らかである。むしろ、BNFL事件を「教訓」にして、自らに責任が及ばないように独自の調査をしない、というのが、今国が取っている姿勢である。国の合格証はなんらの品質保証にもなり得ない。

東京電力は再調査においてどこまで、MOX燃料検査において不正が無く、品質が保証されることを確認したのか。政府答弁書において「作業員が人為的にペレットを回転させるなどして、合格範囲のデータが得られるまでペダルを踏まずにデータを入力しなかった場合、ベルゴ社の品質部門の人間はどのようにしてその事実を把握することができるのか。また、別の人間が外径測定を評価する場合に、測定された数値でなく、その測定が不正に行われたか否かということをどのようにして認識するのか」という質問に対し、「通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において、MOX燃料ペレットの外径測定は品質部門で行われているところ、測定担当の人間が御指摘のような操作を行った場合、別の人間がその事実を把握することはできないと聞いている。」と回答しているように、MOX燃料の検査時に不正を防ぐ手段はなかったことは明らかである。となると、不正の有無をデータの詳細な分析によって明らかにする以外にない。東京電力が2月報告書に添付したデータには不正があってもそれが隠れてしまうような「加工」が施されていることを、私たちは申立書において指摘した。第2回の裁判では、この問題についても議論があり、こうしたデータの加工が、すべてベルゴニュークリア社が行ったこと、こうした加工に積極的な意味はないことが、東京電力によって明らかにされた。裁判所は、東京電力自身がデータをどこまで確認しているのかについて明らかにするように求め、東京電力は即答できずに後日、詳細を明らかにすると述べた。

東京電力及びベルゴニュークリア社が、不正は無く品質が保証されることを示すに十分なデータを開示していないことは明らかである。新潟県柏崎市長は、ベルゴニュークリア社に直接調査に赴く姿勢を示した。また、柏崎市議会は、情報公開をもとめる意見書を採択した。ベルゴニュークリア社の秘密主義はベルギー国内でも問題となっており、ベルゴニュークリア社のあるデッセル市の郊外に位置するモル市の市長は、私たちの要請に応えて、ベルゴニュークリア社に対して情報開示を求めることを約束した。

裁判は年内に3回の期日が入り、これから具体的な論議がなされる。私たちは、少なくとも裁判継続中は問題となっているMOX燃料の装荷を見合わせるよう、裁判の場で東京電力に要請した。


以上の事態を踏まえ以下の2点を要請する。


司法を尊重する立場から、少なくとも仮処分についての決定が下るまでは、福島第一原発3号機用MOX燃料の装荷を、県としても認めないこと。

東京電力、ベルゴニュークリア社に対しより一層の情報開示を求め、周辺住民の安全を守る立場にある地元自治体として、直接の調査を行うこと。