日本での核事故史上最悪の事故、東海村臨界事故がおこり、日本政府が強化したのは、安全対策ではなく、広報対策だった。住民の被爆量を過小評価し、健康調査をまともにやらずに責任を回避するのが、日本政府にとっての事故対策である。

臨界事故以降も事故はたえない。新型転換炉「ふげん」での冷却水漏れ事故(1999年10月)、六ヶ所村放射性廃棄物ドラム缶液垂れ事件(1999年10月に公表)、大飯原発での海水漏れ(2000年2月)、高浜原発での冷却水漏れ(2000年8月)、福島原発の配管破断(2000年8月)などなど・・・。
この上に、ウラン燃料よりも、事故のおきやすさ、深刻度が増すウラン・プルトニウム混合酸化(MOX)燃料の使用を推進するなら、東海村の事故で日本政府は何も学んでいないことになる。

今年、グリーンピース・ジャパンは多くの反原発団体、環境団体とともに、福島MOX燃料の使用差止めの訴えを起こすことを呼びかけ、現在1000名を越える原告が東京電力を相手取り仮処分を申請している。安全を担保するためのデータが公開されていないことが大きな主張だ。しかし、「企業秘密」を理由に、まったく不完全なデータしか公開されていない。「企業秘密」を安全性より優先するならばどんなに広報を強化しても、市民の不安は消えるはずもない。

二人の労働者の命という犠牲、何百もの人々の健康や、健やかに暮らしたいというささやかな願いを壊されたという犠牲をはらった代償がより危険なプルトニウム利用であってはならない。しかし、新長計(「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」)案でも、また、すでに破綻した高速増殖炉計画にしがみついている。

たとえ事故がなくなったとしても、日常的な労働者への被爆や、環境への放射能排出はなくならない。事故という形で、原子力の残虐性が目に見える形となったが、今後は、命や環境を犠牲にしない電力のあり方を使い方を含めてより真剣に考え、また、行動に踏み出していくべきである。

困難な道ながら、スウェーデンは、一基目の廃炉を実現し、脱原発の道を歩みだした。ドイツもようやく脱原発への具体的な道筋に政府と産業界が合意した。電力の57%を原発にたよるベルギーも脱原発を政策に掲げた。たしかに、電力を隣国から輸入できる欧州と日本には違いがある。再生可能エネルギーへの取り組みが北欧などよりはるかに遅れているのも事実である。

事故防止は脱原発しかない。そして、よりリスクの高いMOX燃料の利用はいますぐやめなければならない。