本日午後、862名の市民が東京電力を相手取り、「東電が福島第一原発3号機に装荷しようとしているMOX燃料にも重大な不正疑惑がある」として東京電力福島第一原発3号機でのプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料使用の差し止めを求める仮処分を福島地方裁判所に申請する。原告の代表は地元福島の「ストップ!プルトニウム・キャンペーン」代表の林加奈子さん。
申請には林さんの他、呼びかけ団体の「プルサーマルに反対する双葉住民会議」「いわきに風を」、国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」、「福島老朽原発を考える会(ふくろうの会)」、「原子力資料情報室」、「プルサーマル公開討論会を実現する会」の代表らが参加する。

本日を申請に選んだのは、55年前の8月9日が長崎にプルトニウム爆弾が落とされた日であり、日本で初めてのプルトニウム燃料(MOX燃料)の本格使用差し止めを求める提訴の日にふさわしい、との判断から。

同様の申請は、福井県高浜原発4号機用に英国核燃料会社BNFL社が製造したMOX燃料についても、福井・関西の市民212人によって大阪地裁に申請されている。
訴えに対し、関西電力は当初「高浜4号機用MOX燃料には不正はない」としていたが、福井県議会の要求で公開された膨大な品質管理データを市民側が分析し、不正が明らかになると、結果的に不正を認め、使用を中止した。
BNFL社でのMOX燃料データ不正の実態は欧州でも大問題となり、ドイツは同社製MOX燃料を使用している原発の運転を中止した。また、フランスの核燃料会社コジェマ社でも品質管理データに不正が発覚した。

こうした状況から、市民側はベルギーの核燃料会社ベルゴニュークリア社製の東電向けMOX燃料に対しても不正の可能性があるのではと調査。通産省、東京電力に、東電MOX燃料の品質管理データの公開を再三求めてきたが、通産、東電ともに、「ベルゴニュークリア社の専有情報である」ことを理由に公開を拒んでいる。
関西電力はMOX燃料の燃料片(ペレット)の寸法測定データを全数公開したが、東京電力は全数データはおろか、抜取検査データさえも一切公開していない。

不正の疑義が無いのであるなら、全数データ、抜取検査データを公開できるはずである。それでも、市民側は、通産省、東京電力と質疑応答を重ねる中から、いくつかの重大な「疑惑」を浮かび上がらせてきた。

東電は、福島第一原子力発電所3号機用燃料ペレットの抜取検査時に不合格となった検査ロット(ブレンダー)は無いと答弁(3月24日)しているが、不正を行なわない限り、それはありえない。
ベルゴニュークリア社の検査で用いられた抜取率、判定方法によると、ペレット全体の不良率がBNFL社と同程度であると想定した場合、検査時の不合格率は約36%に達する。それがゼロであるというのだから異常なことである。BNFL社とベルゴニュークリア社でそれほどまでに製造能力に違いがあるとは考えられず、検査において何か不正な操作がされたとみなすほかない。

東電は、「福島第一原子力発電所3号機並びに柏崎刈羽原子力発電所3号機用MOX燃料に関する品質管理状況の再確認結果について」(平成12年2月)において、データを加工してグラフを作成。これは、不正をごまかすものではないか。

ベルゴニュークリア社の抜き取り検査システムには、不正を行なう余地がある>
この点は、東電も通産省も認めている。BNFL社では、さまざまなタイプの不正が行われていたが、ベルゴニュークリア社においても、そうした不正を行うことが可能である。種類によっては、より容易に不正が行われる余地さえある。東電は、BNFL社で行われていたすべてのタイプの不正がベルゴニュークリア社では行われていなかったことを証明すべきである。

なにより、データを公開していないことに大きな問題がある。にもかかわらず、通産省が「ベルゴニュークリア社製MOX燃料には不正の疑義がない」(福島瑞穂議員への答弁書より)としているのは、通産省が規制当局としての責任を放棄していることに他ならない。
原告団は、今回の訴えは、東京電力を相手方としているが、通産省に対しては、本提訴の内容を参考にし、福島第一原発3号機でのMOX燃料使用を中止すべきであるとしている。

原告代表の林加奈子さんは
「福島原発は最近の地震が原因で事故を起こしている。老朽化しているのは間違いがない。総点検をしてくれと東電に申し入れをしたが、東電は聞く耳を持たない。このような状態でMOX燃料を使うのは危険きまわりない。大変不安です。」と話している。




東電MOX差し止裁判の概要


事件名:
MOX燃料使用差し止め仮処分命令申立事件

相手方:
東京電力株式会社

裁判所:
福島地方裁判所

弁護士:
海渡雄一 河合弘之 福武公子 内藤 隆 小島啓達 冠木克彦 内山成樹 斉藤利幸(福島) 大峰 仁(福島)

提訴日:
8月9日

原 告:
原告代表 林 加奈子(ストップ!プルトニウム・キャンペーン代表・福島) 他861名

差し止め請求理由:
●東京電力は、MOX燃料品質管理上のデータを公開していない
●東京電力の報告書では当該MOX燃料の品質は保証できない
●ベルゴニュークリア社の品質管理体制にも不正を行なう余地がある
●東京電力の報告書にあるベルゴニュークリア社のデータには、不正を覆い隠すような加工がされている
●東電MOX燃料の抜取検査は規格に従っていない
●東京電力は、再調査にあたり、はじめから不正の疑義はないと決めつけている
●東京電力によれば、福島用MOX燃料には、ペレット寸法検査で不合格はなかったとのことだが、不正がない限り、それはありえない
●規制当局である通産省は、品質管理データの分析をしていない
●規制当局である通産省は、品質管理データそのものを見ていない

事務局:
東電MOX差し止め裁判の会(151-0053 東京都渋谷区代々木1-35-1代々木会館4階 グリーンピース・ジャパン内)

呼びかけ団体(順不同):
●ストップ! プルトニウム・キャンペーン(福島)
●プルサーマルに反対する双葉住民会議(福島)
●いわきに風を(福島)
●グリーンピース・ジャパン
●プルサーマル公開討論会を実現する会
●原子力資料情報室
●福島老朽原発を考える会
●日本消費者連盟
●ストップ・ザ・もんじゅ東京
●東京電力と共に脱原発をめざす会
●みどりと反プルサーマル新潟県連絡会(新潟)
●プルサーマルを考えよう柏崎市民ネットワーク
●ピースサイクル新潟
●柏崎反原発同盟

8月9日の予定:
●午後1時、福島市民会館に原告団集合
●午後1時半、福島地方裁判所へ申請
●午後3時、福島市民会館にて記者会見
●午後6時より、郡山にて提訴集会
お話:小山英之氏(高浜原発MOX差止訴訟原告代表)他

問い合せ先:
東電MOX差し止め裁判の会(グリーンピース・ジャパン 鈴木 03-5351-5400)

* なお、原告は引き続き募集しています。