6月26日から30日まで、デンマークのコペンハーゲンでオスパール条約会議が行われる。開催国のデンマークは英仏の再処理工場からの放射性廃棄物の相当な削減を求める提案を提出する(採択には約国の4分の3つまり12か国以上の賛成が必要)。

アイスランド、アイルランド、スウェーデンはかねてより英再処理工場の閉鎖を求めている。オスパール条約会議では、イギリスのセラフィールド、ドーンレイと、フランスのラアーグにある使用済核燃料再処理施設からの放射性廃棄物の排出を問題視しており、英仏のMOX燃料加工工場のデータ不正で、より批判の声が大きくなっているなかでの会議の開催となり、行方が注目される。議論は、日本の再処理政策にも影響を与えそうだ。

グリーンピースは、デンマーク提案の採択をめざして、各国への働きかけを行なっている。また、英仏の再処理工場周辺の放射能汚染の調査のため、グリーンピース号を派遣、19日には英国領海チャンネル島沖ハードディープ、仏再処理工場のあるラハーグ沖15キロメートルのところでうちすてられた放射性廃棄物のつまったドラム缶を発見した。これは、1950年と1963年に英国が投棄した28,500本ものドラム缶の残骸である。1993年に固体放射性廃棄物の海洋投棄が禁止される前に投棄されたものだが、当然現在も、その残骸からの放射能汚染は続いている。調査の結果は随時発表の予定。
(http://www.greenpeace.org/~nuclear/ospar2000)

英仏再処理工場からの汚染を相当削減するには、再処理量の大幅な削減が必至である。その場合、すでに再処理契約が存在している場合、契約の再交渉が必要となる。汚染削減の上から再処理中止は必要だが、顧客にとっては、経済的にも、コスト削減となる。英国エナジー(BE)は現在すべてのBNFLとの再処理契約を貯蔵契約に変更するように求めており、BEは、およそ260万ポンドほど、契約金を削減することを求めている。BEのファイナンシャル・ディレクターのマイケル・カーワンは「我々が思うに、再処理は経済的にナンセンスだ。そしてすぐに止めるべきだ」と述べている(5月11日付けインデペンデント紙)。デンマーク提案が採択された場合にも、契約の変更交渉が必要となるだろう。



― オスパールとは? ―

オスパール委員会はもともと、オスロ条約(1972年)とパリ条約(1974年)による海洋汚染防止に関する取り決めの履行を確かなものにするために1974年に設立されたものである。事務局はロンドンにある。

1992年9月、オスロ条約の20周年記念の年、パリ条約と同条約が複合する形で、オスパール会議が設定され、北東大西洋の海洋環境保護を進めることとなった。

オスパール条約は、予防原則という考え方が、締約国の一般義務として取り入れられた、法的拘束力をもつ最初の枠組みである。オスパール条約は北東大西洋に接するすべての国々によって批准され、1998年3月25日に発効した。締約国は、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国の15か国と欧州連合である。

オスパール条約が採択された時、北東大西洋に接する国々の環境大臣により、閣僚宣言も採択されている。そこでは、「核施設からの放射性廃棄物の排出を削減する必要性を認識し、適用可能な最適の技術をもってこのような排出のさらなる削減に向けて行動することに合意する」と謳っている(最終宣言、第3章、優先事項と将来の行動の目的)。