【東京/フィリピン発】

香川県・豊島(てしま)の産業廃棄物不法投棄事件において、公害調停の最終合意(注) が本日調印されるにあたって、グリーンピースは、以下の声明を発表した。

豊島の産業廃棄物不法投棄事件において、大量の有害廃棄物の不法投棄を引き起こした行政の責任を全面的に認めさせ、原状回復することが本日確定した。住民運動によってこうした決定が達成されたことは、日本の運動における重要な成果である。しかしながら、最初の不法投棄から25年もの長い間、行政が、問題を無視し、事実を矮小化しようとし、汚染を放置してきた責任はあまりに甚大である。

グリーンピース・インターナショナルのアジア地域担当のヴォン・ヘルナンデスは、「豊島の問題は、国際的にもよく知られており、日本の廃棄物政策の失敗を象徴していると言える。3億ドルという費用は、問題を最も困難にした末に解決しようとすると、どれほど大きな負担となって返ってくるかということを物語っている。環境や人の健康を犠牲にするこうした間違いは日本でそして世界中のどの場所でも決して繰り返してはならない。」と「虹の戦士号」アジアツアー(‘99.12~’00.05)のコーディネーターとしてコメントした。

国際的に見ても、300億円という資金を投じて50万トンという膨大な有害廃棄物不法投棄現場の浄化作業が実施されたことはかつてなく、世界でも最大規模の原状回復作業となる。

大量の有害廃棄物が不法投棄されてきた背景には、有害物質を使い続け、処理の困難な有害廃棄物を生み出しつづけた産業社会があり、環境や人の健康よりも企業の利益を優先してきた行政の姿勢がある。原状回復するために膨大な費用が投じられることが決定したが、無責任に汚染を排出しつづける仕組みを変えられるかどうか、今後この社会は試されることになる。即ち、より環境負荷のない素材の使用を通して廃棄を最小化し、処理責任を徹底させるという課題を負う。

有害廃棄物が「安き」へ流れ「弱き」へ向かう傾向は世界でも同様であり、有害廃棄物や不法投棄の後始末は、目を背けられ、先延ばしにされてきた問題である。豊島で、その責任と汚染浄化の完遂へ向けて合意が為されたことへ、今後世界の目も注がれることになるだろう。

長く困難な、しかし妥協のない闘いをつづけ、成果を獲得された豊島の住民運動にグリーンピースは敬意を表し、その勝利を称える。この住民運動の成果は、国内外の運動に広く共有されていくであろうと確信する。

グリーンピースは、1996年、キャンペーン船グリーンピース号で豊島を訪れて以来、本部(グリーンピース・インターナショナル)の専門家達の視察、また、今年「虹の戦士」号でのキャンペーンなどを行ってきたが、今後も豊島事件の行方を見守っていく。


(注) 大量の有害廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染を引き起こした行政の責任と被害を全面的に認め、放置されてきた膨大な有害廃棄物を現場から16年後までに搬出、浄化することを決定した。