ダイオキシン等の有害物質を排出するゴミ焼却の危険を訴える横断幕「焼却第一安全二の次 TOKYO DIOXIN CAPITAL」を掲げたことで(5月9日)、不当に逮捕、勾留されていたグリーンピースの活動家4人、マーリーン・ヴァン・プック(ベルギー)、アラン・マーク・ベイカー(英国)、クレメント・ラム(香港/カナダ)、ポール・ショット(オランダ)が、本日午後4時45分、11日間におよぶ長期勾留の末に釈放された。建造物に侵入してはいないが、建造物侵入として略式起訴となり、罰金7万円を支払って釈放となった。


【警察の捜査に対する批判】

日本が世界でも最多のごみ焼却炉を有し、ダイオキシンの大気排出も国連環境計画の報告書中で最大であることは海外でも知られてきている。この焼却偏重のごみ処理や、その危険を警告した活動家に対して、日本の警察が逮捕、10日余りにおよぶ長期勾留をしてきたことに加え、グリーンピース・ジャパンの事務所と「虹の戦士」号家宅捜索という過剰反応を示した。また、警察による外国船籍の船の捜索に当たっては、大使館員の立会い拒否や、航海記録の持ち出しなど国際法に違反、あるいは整合性を欠いた捜査や、グリーンピース・ジャパンの会員データベースをコピーして持ち去るなど、横断幕アピールとおよそ関係のないものを押収するなど違法な捜査が行われた。こうした警察の行動に対しては、これまでに国内外の環境団体他多くのNGOや個人から、4人の釈放要請や、不当捜査に対する抗議声明などが、捜査当局へ送られている。*1

一方、留置場では、日本語が通じないことが原因で、大使館員に会える機会が失われたり、日本語以外の文字を一切書かせないなど著しい人権侵害も起こっており、かねてから国際批判のある日本の代用監獄制度(留置場)の非人間性の問題も、国際人権擁護団体から繰り返し批判されている。

グリーンピースの横断幕は焼却偏重によるダイオキシン汚染の現状を警告し、環境や健康を守るための、非暴力による言論活動の一環であった。そうした活動が、警察当局により不当な妨害をうけることは、私達の健康を守り、また次世代へ安全な環境を引き継ぐため市民の活動を妨害し、人権を侵害するものに他ならない。「良き環境政策は、市民の自由な意見なくしては有り得ない *2」のである。今回の一連の捜査機関の対応は、日本が、環境や人の健康の保護や、そのための市民活動や言論の自由に対する認識を著しく欠いていることを露呈したともいえる。今後、グリーンピースは国際的観点からも警察の不当介入を検証する意向である。


【日本の焼却とダイオキシン】

ダイオキシンのように残留性があり、毒性の強い物質の汚染は、国内に留まらず、地球規模の汚染という観点から対策が求められている。世界最大の焼却国で、国連環境計画(UNEP)の報告書によれば、日本はダイオキシン排出の約40%を占めている。*3 国内の既知のダイオキシン発生源としてはゴミ焼却は最大のものであり、すなわち地球規模の脅威でもである。

米国では現地時間5月17日、ダイオキシンのリスクアセスメントに関する新たな知見がワシントンポストに掲載された。これは米国環境保護庁(EPA)の9年に及ぶ研究に関する概要で、肉や乳製品など脂肪を多量に摂る人々ががんになる可能性が高く、これまでの研究で推定されていたリスクの100倍にも相当するというものである。*4

日本ではダイオキシン特別措置法をつくりこそしたが、基準値は全く弱く、これでは環境や人の健康を守ることはできない。新たな知見をもとに今後日本も、ダイオキシン排出を無くすことを目指した厳しい対策を迫られるはずだが、そのためには「焼却第一 安全二の次」の焼却偏重のごみ処理対策から早急に脱却することが不可欠なのである。



*1:1999年3月、グリーンピースが東京ビッグサイトで塩ビ玩具の危険性を訴える横断幕を掲げた際、日本の警察がグリーンピース活動家達を逮捕した事に関して、スウェーデン政府のプレスリリースの中で引用されたスウェーデン環境大臣の言葉「私は、良き環境政策は、市民の自由な意見なくしては有り得ないと確信しています。」

*2:添付資料 国連環境計画報告書(UNEP Chemicals, Dioxin and Furan Inventories: National and Regional Emissions of “PCDD/PCDF, 1999)

*3:添付資料 5月17日付 ワシントンポスト 掲載記事の仮訳