本日午前12時10分、グリーンピースのクライマー4人が豊島清掃工場(豊島区上池袋二丁目5番1号)に併設された建物に登り、日本の「焼却礼賛主義」を批判する横断幕を拡げた。横断幕には、工事現場の標語をもじった、十文字のマークと「焼却第一、安全二の次」「TOKYO,DIOXIN CAPITAL」のメッセージが書かれており、日本の焼却偏重が人の健康や環境の安全を脅かしている実態を指摘している。

日本は世界で最も多くごみを焼却している国であり、即ち最もダイオキシンに汚染されている首都東京の、最も高い煙突を持つ焼却炉から発信するもの。

グリーンピースは、昨年の12月から、インド、タイ、フィリピン、香港を巡り、有害物質汚染の問題を告発してきた。この、グリーンピースアジア地域キャンペーンの終着点である日本では、4月10日から瀬戸内海地域で「汚染なき未来へ」をスローガンにキャンペーンツアーを行い、本日、が最終のアピール活動となった。

日本には一般廃棄物用の焼却炉だけを数えても約2000基ある。世界全体で約3000あるとされる焼却炉の約3分の2が日本に集中していることになる。国連環境計画(UNEP)の報告書によれば、日本は世界でも最大のダイオキシン類の大気排出国となっている。*1
焼却は事実上、高額の費用を掛けて、ごみをさらに有害な廃棄物にする仕組みである。焼却炉は、ごみをなくすわけではなく、投入したごみの重量の約30%は残渣となり、がんや免疫や神経系の異常をひき起こす極めて有害なダイオキシンなどの有害化学物質や、鉛などの重金属を含む「毒の灰」として残る。焼却灰の持ち込まれる処分場でも、有害な灰の飛散が周辺の環境汚染や健康被害を引き起こしている。

また焼却炉は、ダイオキシン類や、鉛、水銀などの重金属、一酸化炭素、二酸化炭素を大気中に排出している。

この問題は国内だけにとどまらない。焼却という、財政的、環境的そして健康上の問題を引き起こす技術が、アジアの途上国のごみ処理モデルとして輸出されてきていることを、グリーンピース・インターナショナルのヴォン・ヘルナンデスは指摘する。
(ヘルナンデスは、フィリピンで活動する傍ら、今回の「汚染なきアジア」ツアーのコーディネーターを務め、現在来日中)

全世界が残留性有機汚染物質(POPs)の全廃を目指す条約の策定に向けて努力をしており、今年の秋には、最後の条約交渉会議が開催される予定である。これまで日本は、ダイオキシン類など残留性有機汚染物質の全廃目標に否定的である。日本は、焼却礼賛のごみ行政を改めない限り、ダイオキシン類の発生をなくそうという世界の努力をも阻んでいることになる。

現在の焼却偏重のごみ処理を、早急に全面的に改めなければならない。そのためにはごみの回避こそが鍵であり、廃棄物の最少化と、再使用可能な設計や、再生利用できるよう有害物質を含まない素材選定にもっとも重点をおかなければならない。現在、地方自治体が勧めているRDFやガス化溶融炉も、基本的に焼却の技術であり、循環型社会とは相容れない。

本日「循環型社会形成推進基本法」案の衆議院通過が見込まれているが、循環型社会は「ごみを燃やさない」社会を実現できるものでなければならず、焼却からの脱却が基本原則のなかに組み込まれることが不可欠である。

*1) International Toxic Equivalency emitted into air. Source: UN Environment Programme, Chemicals Division. Dioxin and Furan Inventories:National and Regional Emissions of PCDD/PCDF (Geneva:Inter-Organization Programme for the Sound Management of Chemicals,May 1999)