「汚染なき未来へ」をテーマに、瀬戸内海ツアーを行っている国際環境保護団体グリーンピースは、本日、島の大部分が廃棄物最終処分場になっている、広島県下蒲刈町の上黒島にて、「瀬戸内海をゴミ捨て場にするな」というメッセージを掲げ、直接抗議行動を行った。

4月27日13時36分、「虹の戦士」号が桟橋へ横付けし、ついでグリーンピースの活動家が「瀬戸内海をゴミ捨て場にするな STOP TOXIC DUMPS」と書いた6メートル四方の横断幕を桟橋のたもとのフレームに掲げた。

また、瀬戸内海に面した県の県知事に対して「瀬戸内海を囲む自治体として、瀬戸内海への有害物質“排出ゼロ”目標を掲げ、ダイオキシンなど難分解性有機汚染物質の移入や、廃棄物の持ち込みを止めるための具体的な計画を求める」要請書を発送した。

これに先立ち、グリーンピースは24日、瀬戸内海の沿岸部や島嶼部へごみが持ち込まれている問題に対し、広島県庁の環境整備課を訪ね、交渉を行った。この上黒島の廃棄物最終処分上には首都圏から、有害な焼却灰も送り込まれていることから、今回の交渉は、焼却灰を上黒島へ送っている神奈川県や埼玉県内で活動する市民団体、及び瀬戸内海の環境を守る住民団体の連合である環瀬戸内海会議との合同で行われた。(埼玉県の市民団体は、要望書を交渉団に委託)

瀬戸内海は、あらゆる方向から汚染が流れ込み、水の循環の悪い閉鎖性の海域。地中海や五大湖など世界の閉鎖性水域では、(目標年までに9有害物質の排出を無くす、といった事務レベル、研究レベル、あるいは閣僚レベルの合意、勧告、約束などが行われている。ゼロ目標は決して絵空事ではなく、すでに各国が進もうとしている方向と合致するのである。

グリーンピースは瀬戸内海において有害物質の「排出ゼロ」を求め、10日以降瀬戸内の各地域で活動を行ってきた。有害物質汚染をなくすために、その原因となる廃棄物の持ち込みについても、沿岸府県の、それを禁止する強いイニシアチブが求められている。

(右上) 上黒島の、廃棄物運搬船専用桟橋に接岸し、横断幕を拡げたグリーンピースのメンバーと船長が、廃棄物処理会社の従業員と話し合っている。

(右下) 夕闇が迫り、埠頭には警察が待機した。この後、広島県庁で交渉に当たっていたスタッフから、「県の前向きなコメントを引き出せた」として、アクション終了の合図がとどき、自主的に横断幕をはずし、離岸した。

2000年4月27日

京都府知事殿│大阪府知事殿│兵庫県知事殿│奈良県知事殿│和歌山県知事殿│岡山県知事殿│山口県知事殿│徳島県知事殿│香川県知事殿│愛媛県知事殿│福岡県知事殿│大分県知事殿

瀬戸内海に“排出ゼロ”をもとめる要望書

拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

国際環境保護団体グリーンピースは、「汚染なき未来へ」をテーマに、キャンペーン船「虹の戦士」号で現在瀬戸内海地域でツアーを行っております。陸上の人の活動によって発生した汚染は、最終的に海に行き着きます。陸に囲まれた瀬戸内海は、美しくて繊細な環境である一方で、たくさんの汚染源をかかえており、あらゆる方向から汚染が移入してしまうところでもあります。沿岸には数千のダイオキシン排出源があり、また沿岸部の廃棄物処分場にも都会や工業地帯から廃棄物が持ち込まれています。これらが自然の中で、生き物に、そして私たちや未来の世代に対して何を引き起こすのか、いま誰も確かな答えをもっていません。

一方、世界の閉鎖性水域では、未然防止の原則(予防原則)に基づいた、新たな試みを見ることができます。北海、地中海、大西洋など地域海の周辺諸国の間ではすでに、水域への有害物質の流入や排出をなくすという合意がなされています。これらは、まだ達成されたわけではありませんし、無論、明日に達成できるほど容易なことでもありません。しかし重要なのは、環境への排出をなくすという目標の実現に向けて、こうした海域周辺諸国が中長期的な努力をみずからに課しているという点です。

ダイオキシンなどの残留性の汚染物質は、排出を許し続ける限り、確実に汚染が進んでいきます。こうした脅威を除くためには、有害物質、ことに残留性の汚染物質の排出をなくすことが必要です。今日、いつまでも環境を犠牲にし続けることはできないという認識は共通のはずです。有害物質や廃棄物を際限なく排出しつづける仕組みを変えなければならないときがきていることも、誰もが気づいているはずです。閉鎖性水域である瀬戸内海も、「排出ゼロ」を謳う目標を掲げることが最も求められている地域の一つであると考えられます。汚染の排出、移入ゼロを共通の目標とし、それに向かって進むことは、有害物質依存から脱却し、より環境負荷のない生産、有害廃棄物を生み出さない社会の実現につながっていくはずです。

ついては、瀬戸内海を囲む自治体として、瀬戸内海への有害物質「排出ゼロ」目標を掲げ、ダイオキシンなど難分解性有機汚染物質の移入や、廃棄物の持ち込みを止めるための具体的な計画を策定されることを求めます。

敬具

グリーンピース・ジャパン
事務局長、志田早苗│有害物質問題担当、関根彩子