【香川県豊島=てしま=発】

本日、グリーンピースのスタッフ(「虹の戦士」号の乗組員含む)13人は、香川県豊島の産業廃棄物不法投棄現場を視察した。キャンペーン船「虹の戦士」号は「汚染なき未来へ」という横断幕を掲げて、現場の沖で待機。

4年間の、1996年7月、キャンペーン船「グリーンピース」号が豊島を初めて視察。その際に、グリーンピースは、問題の緊急性を訴え、一刻も早い原状回復と責任の明確化を求めた。グリーンピースの視察以降、厚生大臣の視察、公害調停の中間合意があり、廃棄物の処理技術の検討がなされるなど、手続き上の進捗や準備が進んでいる。しかしながら依然、原状回復作業の着手どころか、汚染の拡大防止のための措置も取られておらず、4年を経て現場は未だ当時のままである。

こうした現状を憂慮して、今回は現場の再確認をするために、再び視察を実施した。今回の訪問に先立ち現場から採取したサンプルの分析も行ったが、その結果は、重金属や有機塩素化合物など廃棄物から漏洩している物質が相当あり、それらが周囲の環境に流入していることを明瞭に示唆していた。

有害物質を使用し、汚染を排出する大量消費社会の負の部分が押し付けられるという構造のもとで、行政が不法投棄を容認し続けたために起こった豊島事件。問題のおきた原因と責任、そしてなにが引き起こされたかを明確にして、原状回復を行うことが必要である。同時に、有害物質の使用や排出をしない生産消費の仕組みへと転換を進めなければならない。

陸上の人の活動によって発生した汚染は、最終的に海に行き着くが、陸に囲まれた繊細な環境である瀬戸内海は周辺に多くの汚染源をかかえており、あらゆる方向から汚染が移入してしまう場所である。ダイオキシンなど難分解性の有機汚染物質の脅威に加え、沿岸や島などに持ち込まれる廃棄物がこれに拍車をかけている。難分解性の有害物質は、排出を許し続ける限り、環境や人の健康を確実にむしばんでいく。

グリーンピースは、有害物質、ことに残留性の汚染物質の排出をなくす(排出ゼロ)という目標を掲げることを求めて、「汚染なき未来へ」と題した瀬戸内海でのキャンペーンツアーを行っている。同じく閉鎖性の地中海や米国の五大湖などの水域でも、予防原則(未然防止の原則)のもと、有害物質の排出をなくすという目標や勧告がすでになされている。

このまま、有害物質を使用し、汚染を排出しながら、大量消費を続けることはできないと誰もが判っている。これまでの、環境を犠牲にし続ける仕組みを変えてゆかなければならないときである。グリーンピースは「汚染なき未来へ」向かうために、豊島から、これを二度と繰り返すなというメッセージを発する。

「虹の戦士」号は、本日坂出港に入港。4月16日(日)には船を一般に公開し、グリーンピースの環境保護活動と今回のキャンペーンのメッセージをアピールする。場所は、坂出港林田埠頭B号。午前10:00~午後5:00

参考:別添資料「香川県手島不法投棄現場付近の重金属と有機汚染物質」参照








要約:香川県豊島不法投棄現場付近の
重金属と有機汚染物質

グリーンピース調査研究所(英国) 2000年4月7日


1999年11月に香川県豊島の産業廃棄物の不法投棄現場および周辺で、底質、液体、廃棄物サンプルを計7点採取し、重金属と有機化合物の分析を行った。

今回の豊島の投棄現場の分析の結果は、廃棄物から漏洩している物質が相当あり、そうした物質が周囲の環境に流入していることを明瞭に示唆している。今回のサンプル採取においては、まず廃棄物の北岸付近から3検体を採取した。その内訳は古いパイプ付近の沈殿物1検体と、北の境界に沿って掘られた溝から採取した底質1検体、液体サンプル1検体である。また、西の境界に沿って3検体の固形サンプルを採取した。サンプリング時点に、海へ至る日本の排水の流れが起きていた箇所のサンプルを含む。現場内部の廃棄物についても、4~5メートルの深さの穴から掘り出されていた廃棄物の、表面の約5~10cm下から1検体のサンプルを採取した。

サンプルの分析により鉛、銅、ニッケル、マンガン、カドミウム、コバルトが高濃度で含有されていることが判明した。また、この現場の廃棄物の性質がきわめて不均一であることが示唆された。


■ 重金属

豊島の廃棄現場(JP9005)の北の境界に沿って掘られた溝から採取した沈殿物からも高濃度の、鉛、銅、ニッケルが検出された。銅は乾燥重量2.7g/kgと、この試料中で特に多かったが、鉛(0.65g/kg)とニッケル(0.27g/kg)もかなり多かった。廃棄物サンプル中の鉛のレベルは乾燥重量3.5g/kgと特に高く、投棄された廃棄物の有害性を示唆していた。この廃棄物の累積したの現場からは、海に隣接する浸出水排水溝と西の境界の海岸に重金属が排出されていることは明らかである。


■ 有機汚染物質

豊島の廃棄物投棄現場で採取された2件のサンプルで、有機塩素系の汚染物質が検出された。この現場の北にある浸出水排水溝(JP9005)で採取された沈殿物中から、ジクロロベンゼンとトリクロロベンゼンが同定され、現場で採取された廃棄物サンプルからはジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼンが同定された(JP9009)。

さらに、廃棄物サンプルからは他の有機塩素化合物も検出され、ポリ塩化ビフェニール(PCB)と同定された化合物も含まれる。現在策定交渉中の、国連環境計画(UNEP)による、難分解性有機汚染物質(POPs)を国際規制するための条約では、毒性、残留性、生物蓄積性、環境での広い分布を基準として、12種類の化学物質を世界的規制活動の対象とすることになっているが、PCBはその1つである。この混合物の中で同定された主な同位体は、PCB-28(2、4,4’-トリクロロビフェニール)だった。このことは、さほど高塩化ではないPCBたとえば、カネクロール300やアロクロール1242のような物質の調合物が存在していることを示唆している。3塩化のPCBがその他の同族体よりも高い割合で含まれていることが多い(de Voogt & Brinkman 1989)。
このサンプルにはPCBが重量にして8.9ppm含まれていることが判った。

また、クロロベンゼン(特に3塩化と4塩化)がPCB製造の際に溶媒として広く使われていたことにも留意する必要がある(Swami et al. 1992)。埋め立てられた廃棄物中でこれら2種の化学物質が存在するのは、このことから説明できるかもしれない。

有機物スクリーニングの結果からは、豊島の不法投棄現場内の廃棄物に関し、高い有害性がさらに確認され、また、北の境界にある浸出水排水溝の沈殿物から、流動性の高い塩素化合物(クロロベンゼン)が検出できるレベルで存在することを示しているといえる。

この滲出水の溝は海に近く、そのような汚染物質のさらなる移動を阻む有効な物理的障壁も特に存在しないため、浸出水と沈殿物の直接の流入および、有機塩素化合物が固形廃棄物、土壌、沈殿物の中を移動することによって、いずれはこの廃棄物投棄現場が周辺環境に対する塩化有機化合物の排出源になる可能性がある。また、今回の研究では検討していないが、大気への再蒸発と大気を通じた拡散という形でも、この現場がそのような塩素化合物の排出源となる可能性がある。