英・仏・ベルギーのMOX燃料加工工場における、日本向けプルトニウムMOX燃料の生産技術、品質管理は安全性を確保するのに不十分であるとグリーンピースが本日発表した論文は結論づけている。
グリーンピースはまた、福島県知事に対し、東京電力による福島と柏崎のMOX燃料に関する報告書を不十分とし、却下すること、東電に対し、MOX燃料品質管理データの公開を求めること、福島県でMOX燃料使用計画を撤回し、国にもプルサーマル計画の撤回を求めることを申し入れた。

論文は、福島第一原発3号機にプルトニウムMOX燃料を装荷するかどうかについての東京電力と日本政府の決定を前に、福島県に提出された。
昨年の9月にフランスから運ばれたMOX燃料の品質管理確認のため、装荷は延期されている。確認は、 英国核燃料会社BNFL社の関西電力分MOX燃料の品質管理データねつ造があったことから、通産省の指示で行なっていた。

グリーンピースの論文は、MOX燃料ペレットの製造の品質管理の失態を明らかにしている。特に燃料中の「プルトニウム・ホットスポット」を決定づける上で重要な、「均一性」と言われる、ペレットの中のプルトニウムが偏りなく、まんべんなく混ぜられているかどうかを確かめる安全検査の不十分さに焦点を当てている。
ホットスポットは燃料被覆管の破損、放射能漏れ、そして重大な事故のリスクを相当増大させることにつながる。*1
また、BNFL社、ベルゴニュークリア社(以下ベルゴ社)、コジェマ社のプルトニウム/ウラニウム粉末の混合技術では、信頼できる高品質のMOX燃料を製造できないとした。
BNFL社が主張しているように、BNFL社の技術は、ベルゴ社やコジェマ社の技術より優れているが、それでも、一貫してスタンダートの高いMOX燃料の製造には不十分なのである。

*1:日本の原子炉でおこったような冷却材喪失事故では、炉心の過熱をおこし、最悪の事態では、メルトダウンを起こす。


「MOX燃料の品質管理データがねつ造されていようといまいと、粉末技術を基本としたMOX燃料製造工程自体、原子炉で安全に使用できるMOX燃料ペレットを製造することができないのである。福島県知事は、MOX燃料装荷によって自らの負うリスクを理解する必要がある。我々の意見では、そのリスクは負う価値がない」と、論文の著者の一人であるフランク・バーナビー博士は述べている。

東電はベルゴ社のMOX燃料の品質管理についての報告書を通産省に提出している。東電報告はベルギーでのスタンダードの正確なアセスメントを行なうには、全く不十分である。
例えば、報告に関して行われた市民との質疑応答で、MOX燃料ペレットの全ての外径計測データは上書きされ、存在しないとしている。
東電によれば、ベルゴ社は、同社の専有であるとして、あらゆるデータの開示を拒否している。BNFL社がペレット全数計測データを公開したことにより、日本の反原発団体が品質管理データのねつ造と操作を明らかにすることが可能となった。
通産省は東電報告について現在精査中である。通産省は今月14日から17日までベルギーへ調査団を派遣した。

ベルゴ社は、福島第一原発3号機へプルトニウムMOX燃料を供給したコジェマ社のMOXトレーディング・グループに入っており、コジェマ社は東電/関電とも契約がある。同社のメロックス工場では現在、関電用のMOX燃料を製造中だ。
3月24日、コジェマ社の独向けMOX燃料品質管理データにもねつ造があったことが明らかになった。契約主のシーメンスは、BNFL社のねつ造と似ているとしている。

「低い製造技術に伴うデータのねつ造・操作は欧州のMOX産業につきもの。ベルゴ社と東電が潔白なら、情報を公開できるはず。情報を公開せよ。燃料装荷は犯罪行為」とグリーンピースは主張する。





添付資料:福島県知事への要請書

福島県知事、佐藤栄佐久様
2000年3月27日

福島県知事にプルサーマル計画の撤回を求める要請書

グリーンピース・インターナショナル プルトニウム問題担当部長、ショーン・バーニー
グリーンピース・ジャパン 事務局長、志田早苗 原子力問題担当、鈴木かずえ


グリーンピース・ジャパンは、福島県知事に以下を求めます。

一、東京電力による福島と柏崎のMOX燃料に関する報告書を不十分とし、却下すること
二、東京電力に対し、MOX燃料品質管理データの公開を求めること
三、福島県でのMOX燃料使用計画を撤回し、国にもプルサーマル計画の撤回を求めること

理由は以下の通りです。

東京電力の報告書「福島第一原子力発電所3号機並びに柏崎刈羽原子力発電所3号機用MOX燃料に関する品質管理状況の再確認結果について」(以下東電報告と呼ぶ)は、わかりにくく、まったく不十分なものです。以下は、不十分さを示すいくつかの例です。

MOX燃料ペレットの計測データ、プルトニウム均一度など、MOX燃料の品質管理を保証するためのデータがほとんど示されてない。
「データの意図的な変更を防止するようにできている」ので、「データは信頼できる」と結論づけているが、英国核燃料会社(BNFL)が行なったような、外径データ採取の際に、合格値が出なかった時に90度回転させて、再度計測するというデータ操作の余地があることは指摘していないし、従って防止されるとは考えられない。

MOX燃料ペレットの抜取検査は、1検査ロット中32個以上と規定されているが、計算 上、規定数以下しかデータがないのではと疑われる検査ロットが存在するが、説明がない。

そもそも、MOX燃料ペレットの抜取は、準拠されているとするMIL-STD105Dでは検査ロット中32個となっているのに、ベルゴニュークリア社では、32個以上の抜取と規定しているが、なぜ、規格を変更したか、その説明もない。


また、3月24日には、ベルゴニュークリア社の親会社である仏核燃料会社コジェマ社でのMOX燃料品質管理データ不備が明らかになっています。これらの事実は、MOX燃料の品質管理が、安全性を確保できるレベルでは行なえないことを示唆しています。

プルサーマル計画は、ウラン燃料用の原子炉でプルトニウム燃料を使用することの危険性、プルトニウム燃料を使用することから生じる核拡散の問題、使用済プルトニウム燃料の処理方法が全く確立していないという廃棄物問題をかかえています。県民の命を守るために、福島県は、プルサーマル計画を返上すべきです。