福井県高浜町の高浜原発3、4号機で使用される予定だったMOX燃料の検査データねつ造問題で、製造元の英核燃料会社(BNFL)のある英国では、議論がプルサーマル計画の是非にまで及んでいる。
グリーンピース・英国によれば、英国の下院で、「MOXよりプルトニウム固定化の研究を」との動議が、1月25日に出された。グリーンピースでは、本動議を実質的にプルトニウム廃棄処分をもとめたものと評価している。

以下は、その内容 。


早朝動議番号323(Early Day Motion Number 323)
「核の安全と代替としてのプルトニウム固定化の必要性について 2000.01.25」

下院は、BNFLによる最近送られたMOX燃料のデータ捏造によりもたらされた難事を認識している。さらに、それらの出来事により、MOX燃料についてのBNFLの契約がとれないということによって証明されるところのMOX燃料の将来についても疑義がもたれている。そして、BNFLは、セラフィールドにおいて、大幅に保証措置が必要となるMOXよりも、プルトニウム固定化技術という代替を検討すべきである。ゆえに、女王陛下の政府に、プルトニウム固定化のより好まれる方法、すなわち、英国が実行し、地球規模でも推進するような、十分で、開かれた、国民との審議を先行条件として、十分な包括的な、プルトニウム固定化の方法の研究のイニシアティブをとるよう、強く要望する。

チェイター/デビッド(労働党)ベイカー/ノーマン(自由民主党)ブレイク/トム(自由民主党)フォスター/ドン(自由民主党 環境広報官)リウィド/エルフィン(プリード・キムル ウェルシュ民族党)モーガン/アラスダイア(スコットランド民族党)タンネル/アンドリュー(自由民主党エネルギー広報官)ウォレイ/ジョーン(労働党)


また、データねつ造問題は、1月中も連日主要英国紙で報道されているが、その多くが、英国のMOX政策に批判的で、政策の根幹に迫るものもある。(添付資料2)
グリーンピース・ジャパンでは、今回のデータねつ造問題に端を発したプルサーマル計画の「延期」が単なる「延期」でなく、計画の根幹を見直し、計画を放棄するよう日本政府/関係各県に求める予定だ。





【添付資料1:早朝動議番号323】


EDM NUMBER 323
NUCLEAR SAFETY AND THE NEED FOR PLUTONIUM IMMOBILISATIONALTERNATIVES 25.01.00

That this House notes the difficulties caused by the falsification of data by BNFL in respect of recent consignments of MOX fuel; further notes the doubts cast by these events on the future of MOX fuel, as evidenced by the lack of contracts secured by BNFL for MOX; believes that BNFL should be exploring alternative plutonium immobilisation techniques other than MOX which would safeguard much needed jobs at Sellafield; and therefore urges Her Majesty’s Government to initiate a fully comprehensive study into methods of plutonium immobilisation as a prerequisite to a full and open public consultation on the preferred method of plutonium immobilisation which Britain will implement and globally promote.

Chaytor/David (Labour)
Baker/Norman (Liberal/Democrat)
Brake/Tom (Liberal/Democrat)
Foster/Don (Liberal/Democrat Environment Spokesperson)
Llwyd/Elfyn (Plaid Cymru – Welsh Nationalist)
Morgan/Alasdair (Scottish Nationalist Party)
Stunell/Andrew (Liberal/Democrat Energy Spokesperson)
Walley/Joan (Labour)





【添付資料2:MOX海外報道まとめ】


1月15日 英紙インデペンデント
「データ捏造を漏らした “スパイ” 狩り広がる」

同紙は、BNFL内部メモによると、捏造事実を同紙に告発した労働者を探していると報じた。また、BNFLは、捏造が行われた同社のMOX試験プラント(MDF)の労働者120人に作業状況改善を告知する書簡を送り、管理者にはなんらかの懲戒があると警告したという。


1月16日 英紙オブザーバー
「BNFL、ISO認証喪失の恐れ」

同紙は、ISO規格9002を取得しているBNFL社はその認証を失う可能性があると報じた。BNFL社の品質管理体制について3カ月間に及んだ調査は先週終了し、ロイズ・レジスター・クオリティ・アシュアランス(LRQA)のイアン・ホッジキンソン(Ian Hodgkinson)氏はISO認証取り消しは常に選択肢としてありうると述べたという。


1月25日 国際紙フィナンシャル・タイムス
「BNFLは日本に愛されようとやっき」

英国は日本にMOX燃料加工契約を継続してもらうためにやっきとなっていると報じた。全契約量の半分に達する日本との契約が継続されなければ、4億ポンドかけて作った新規のMOX燃料加工工場の運転許可がおりず、もし、許可がおりなければ、1,800人が職を失い、国がその株を49%売りに出す話も確実ではなくなるという。

また、経済学者のマイク・サダニッキ(Mike Sadnicki)氏を以下のように引用(「ウランが安いので、MOXには将来性がない」「再処理産業は軍事的必要性と高速増殖炉開発のため育ったが、両方とも今や消えた。」「プルトニウムの使い道は無い。資産ではなく、重荷だ。」)。さらに、オクスフォード・リサーチ・グループなどと契約する独立のコンサルタントのフランク・バーナビー氏の、MOXに反対するBNFL内の科学者の数が増えており、BNFLは廃棄物処分と汚染除去市場に専念したほうがいいという論が紹介された。


1月26日 英紙ガーディアン
「トラブルの積み荷」

紙面を大きく割き、BNFLの恥について報じた。同紙によると、現在、英国原子力エネルギー庁の警察隊は、ひどく恥さらしな指令—-日本へ行って、MOX燃料を4万マイル離れた英国へ持って帰る—-を待っているという。そうした事態を避けるため、産業貿易省のエネルギー長官と、原子力施設検査官長を説得工作のため日本に送る予定だが、もし、それが成功したとしても、BNFLは、同社による税金の使い方について国民に説明しなければならない、そもそも再処理工場は、英国がプルトニウムを必要としていた冷戦の遺物であって、いまや、40トン-世界を10万回吹き飛ばせる量-もプルトニウムをためこんでいるということは恥であると批判している。