本日から始まった、日本からフィリピンに違法輸出されていた有害廃棄物の東京都大田第二清掃工場での焼却処理という措置について、グリーンピース・ジャパンはスタッフを現場に派遣し、状況調査を行った。その結果、現状での焼却処理の実施は不当であるとして、本日厚生大臣へ申し入れ書を提出した。(添付)

今回、海外へ不法投棄された産業廃棄物の処理を、税金を使って、かつ公的な焼却炉で行うにあたっては経緯と責任の全貌を説明することが必要なはずだが、これは国からも都からも明らかにされていない。排出業者の特定とその責任追及がまず行われるべきであるにもかかわらず、それらを明確化する前に、不法輸出という国レベルの不始末の処理を、一方的に自治体の施設に負わせてはならないし、そうした前例を作ってはならない。

また、本日、グリーンピースでは大田第二清掃工場と、廃棄物コンテナのおかれている品川区八潮の現場を確認したが、大田第二清掃工場では医療廃棄物を処理した経験が全くなく、また、八潮のコンテナ・ヤードでは、白い消毒液が外まで流れ出しており、周辺環境の安全が保証されているとは言い難い状況であった。

今回の措置のように、国レベルの不祥事の全貌を明らかにせず、また排出業者の責任追及もおこなわないまま、問題になった当該廃棄物を慌てて焼却する行為は、日本政府の場当たり的な対応とも映りかねず、国際的にも不信を増大させることにつながる。今後、同様の被害を途上国に対して与えないことを日本が期するためにも、当該廃棄物の処理を停止し、その間に、問題の経過を全て明らかにし、排出者の責任を問い、かつ、国としてバーゼル条約における有害廃棄物の輸出の全面禁止に批准することが不可欠である。




厚生大臣、丹羽雄哉殿
2000年1月19日

フィリピンへ不法輸出された有害廃棄物の処理に関する申入書


厚生省は、日本からフィリピンに違法輸出されていた有害廃棄物の焼却が、本日から大田第二清掃工場で開始しました。しかしながら、都の一般廃棄物の焼却施設において、本来そこで処理するいわれのない産業廃棄物を焼却するという措置については次のような問題があります。

国の説明責任について:

海外へ不法投棄された産業廃棄物を、公的な資金によって設立、運営される焼却炉で処理するにあたっての理由の説明が、国からも都からもなされていません。廃棄物を輸出した業者には当該廃棄物の処理能力がないと判断されたとしても、その次に行われるべきことは、排出業者の特定とその責任追及であるはずです。これらを行わずあるいは明らかにせずに、不法輸出という国レベルの不始末の処理を、自治体に負わせることは許されません。

焼却する廃棄物の内容について:

当該廃棄物は、内容物の検証を行う以前に、大田第二清掃工場へ焼却のために搬入されました。公に説明を行うにあたっては、廃棄物の内容について詳細に情報を公表することが必要です。また、同清掃工場はこれまで医療廃棄物を取り扱ったことがなく、また、職員もその経験がないとのことであり、廃棄物の内容によっては、予期しない危険も起こり得ます。

消毒作業について:

八潮に現在廃棄物コンテナがおかれている区域の一角では消毒作業が行われているが、そこでは消毒液が外まで流れ出している状態で、周辺環境への一次、二次汚染等が配慮されていない恐れがあります。


これらの点から、現在行われている移動、焼却作業を、調査結果の公表や、処理に当たっての正当な説明と準備のないまま続けることは許されません。国の予算で行われる作業である以上、全てが公に説明されなくてはなりません。

また、国レベルの不祥事の全貌を明らかにせず、また排出業者の責任追及もおこなわないまま、問題になった当該廃棄物を慌てて焼却する行為は、日本政府の場当たり的な対応とも映りかねず、国際的にも不信を増大させることにつながります。今後、同様の被害を途上国に対して与えないことを日本が期するためにも、当該廃棄物の処理を停止し、その間に、問題の経過を全て明らかにし、排出者の責任を問い、かつ、国としてバーゼル条約における有害廃棄物の輸出の全面禁止に批准することを要請致します。