本日朝7時20分、日本からフィリピンに違法輸出されていた医療系の有害廃棄物が日本へ返還され、東京港大井埠頭に到着した。
この廃棄物は昨年、国内の産廃処理業者有限会社ニッソーにより古紙と偽って違法にフィリピンの業者へ輸出されたもので、受け手側のフィリピンの会社も、住所地に実在しないペーパーカンパニーであった。
グリーンピース・ジャパンからはスタッフ2名が廃棄物の到着現場に立ち会っており、返還された廃棄物の行く先につても確認する予定。

医療廃棄物は、バーゼル条約で途上国への輸出が禁止されている廃棄物 *1 である。国を越えた有害廃棄物の移動による危険から人の健康及び環境を保護することを期すバーゼル条約に対して、このような違反がおきたことは、国際社会に対する日本の重大な過失である。

*1:付属書I 規制する廃棄物の分類による Y1: 病院、医療センターおよび診療所における医療行為から生ずる医療廃棄物 に該当する。

今回の発覚した違法輸出廃棄物の量は約2000トンと言われているが、日本での不法投棄は年間約40万トンと、国内でも合法的に処理されていない廃棄物の量は膨大である。
廃棄物の違法輸出の背景には、国内で大量の廃棄物を生み出しつづける一方で、排出者にその責任を厳しく問うていないという根本的な問題がある。今回「古紙」と偽って輸出されていた廃棄物は、「国外への不法投棄」の氷山の一角であろう。国内では廃棄物処理・処分の基準が強化され、処理・処分の費用は上昇している。
こうした条件を考えると、今後、日本が廃棄物発生を劇的に減らし、排出元の責任を強く問うことができない限り、日本から途上国への廃棄物の違法な押し付けが拡大する危険性は十分にある。

一方、日本も締約国であるバーゼル条約では、OECD諸国から非OECD諸国への有害廃棄物の輸出について、リサイクル目的のものも含めて1997年12月31日をもって全面的に禁止する決議が1995年の締約国会議で採択されている。しかしながら、日本はこの「全面禁止」の決議には批准していない。 つまり、日本は、有害物質を含む廃棄物を「リサイクル用途」の名目で途上国へ、輸出する道を開いたままの状態にある。

大量生産・大量廃棄をつづけ、自国内で適正に処理できないほどの廃棄物を生み出し、国際条約を破って他国に廃棄物を押し付ける。今回、まさにバーゼル条約の第5回締約国会議の最中に発覚した違法輸出は、こうした日本の実態を世界にさらし、国際社会の不信を招いてしまった。

このような事件が再発しないことを、日本が国内外に保証し、信頼を回復するためには、

廃棄物の輸出に対して厳重な監視を行い、また排出者の処理責任の徹底させること

リサイクル名目の廃棄物が途上国の環境を破壊することのないよう、有害物質を含む廃棄物の輸出をリサイクル目的の場合にも適用する「全面禁止」決議に日本も早急に批准すること

廃棄物の発生量を徹底的に減らし、有害物質使用に依存しない生産と再利用の具体化を急ぐことが必要であり、

グリーンピースは今後日本政府等に対して、これらの要請を行っていく予定である。

尚、現在、グリーンピースのキャンペーン船「虹の戦士」号は、アジア地域における有害物質問題をテーマとした「汚染なきアジア」ツアーの最中。12月にインドでスタートしたツアーは、タイ、そして今回有害廃棄物の輸出先であったフィリピン、香港を経て、4月には約1ヶ月、日本でキャンペーンを計画している。