欧州連合(EU)の欧州委員会は12月7日、フタル酸エステル類6種類* を含んだ、3才未満の子どもが口に入れる塩ビのおもちゃと幼児用品を緊急的に禁止する決定を採択した。
これに先立ち、12月1日にはEUの製品安全委員会がこれらの塩ビ製品について緊急禁止措置をとることを加盟国の代表による全会一致で票決していた。
欧州委員会のこの決定を受け、EUの全加盟国は10日以内に、かんだり口に入れたりするおもちゃでフタル酸エステル類を含む製品の出荷を早急に停止することとなった。

EUの緊急禁止(Emergency Ban)が、製品に適用されるのはこれが初めてのことで、塩ビのおもちゃがその最初の対象となったわけである。
また、これまで各国レベルでの塩ビのおもちゃの規制はいくつも取られてきたが(資料2参照)、今回のEU全域での禁止措置のような国際的な規制も初めてのことである。

以下、フタル酸エステル類DINP、DEHP、DBP、DIDP、DNOP、BBPのうち一種類以上を含む、3才未満の子どもが口に入れることを意図した、軟質塩化ビニル玩具および幼児用品を史上に出すことを禁じる措置を適用する欧州委員会1999年12月7日の決定より(抜粋)


(17) EUの毒性、生態毒性および環境に関する科学委員会(CSTEE)は、この領域に関する最新の研究結果を考慮し、こどもが塩化ビニルでつくられたDEHP、DINPを含む特定の玩具や幼児用品を使用することにより、これらの物質への曝露に関しては安全の余地が少ないことを懸念する根拠があることを確認した。

(18) 研究実験によってDINPの腎臓と肝臓への悪影響やDEHPによって引き起こされる精巣への害が見とめられた。よって、一定の条件下においてはこれらの物質が健康に深刻な悪影響をもたらす可能性がある。殊にこれらの点に基づいて、CSTEEは上記の結論に至った。

(19) CSTEEの見解に照らし、フタル酸エステル類を含む口に入れる特定の軟質塩化ビニル玩具や幼児用品を使う幼い子どもは、日常レベルにおいて安全と見られる以上のDINPやDEHPの曝露をうけやすい可能性があると欧州委員会は考える。

(20) CSTEEはその他のフタル酸エステル類(DNOP、DIDP、BBP、DBP)の滲出は低く、現在の使用条件においては危険性はないものと見ている。が、もしもこれらのフタル酸エステル類が可塑剤として高い含有濃度で用いられた場合には、滲出はより高くなるであろうと欧州委員会は、見ている。

(21) 欧州委員会は、DINPやDEHPの2種類を可塑剤として問題の製品に使用することを禁止した結果としてもしも、DNOP、DIDP、BBP、DBPが代替として使用を許されることになれば、これらの物質への子どもの曝露は増すであろうし、その結果、危険性は高くなるであろうと考える。よって、欧州委員会は、予防原則を採用し、(禁止の)決定はこれら4種のフタル酸エステル類についても適用すべきであると考える。

(22) 幼いこどもはまた、塩化ビニル玩具や幼児用品以外の発生源からのフタル酸エステル類の曝露も受けているであろう。しかし、こうした発生源からの曝露レベルは、CSTEEの見解によれば、十分なデータがないため定量化できない。しかしながら、このような、他からの曝露があることはこの問題の危険性を考えるときに考慮に入れるべきである。

(23) 上記の深刻な影響は、曝露してからある時間が経過するまで明白にはならないが、当該製品に伴う危険性は即時におこる。なぜなら、それはフタル酸エステル類を直接摂取することになるからである。このような製品は、子どもが通常の範囲の時間で使うことで、その後の生涯に深刻な影響を伴う著しい曝露につながる恐れがある。

(24) よって、欧州委員会は、フタル酸エステル類を含む軟質塩化ビニル製の子供向け玩具や幼児用品は、健康に深刻かつ即時の危険性を呈することを免れないと考える。

(34) 欧州委員会は危険な物質の売買と使用を制限する欧州指令(76/769/EEC)の修正案を提出し、DINP、DEHP、DIDP、DNOP、DBP、BBPを3才未満の子供向けの口に入れることを意図した軟質塩化ビニル玩具と幼児用品禁止することを禁止する準備を提案している。さらに、このような製品がもし上記のフタル酸エステル類を含んでいたら市場に出すことは許されない。加えてこの修正案には、その他の3才未満の子どもを対象とした、口に入れる可能性のある軟質塩化ビニル製の玩具や子ども用品は、子どもが口に入れないことを確実にするため、表示をつけなければならないとする狙いもある。

[抜粋・仮訳:グリーンピース・ジャパン]