グリーンピース・ジャパンは本日12:30から、塩化ビニル製造工場をダイオキシン特別措置法の特定施設として指定することを求め、環境庁前で「塩ビ=ダイオキシン」と書いた横断幕を掲げてアピールを行った。
また、塩化ビニル工場からダイオキシンを含む廃棄物が発生することを指摘し、これについて公的な調査を開始する必要性を訴えた。
アピールに続いて、ダイオキシン特別措置法の特定施設、水質排出基準の検討を本日午後に行うダイオキシン排水規制専門委員会に対する要望書を提出した。

船とボート

廃棄物焼却施設の他、工業施設からの排出については、環境庁等の調査により、紙・パルプ工場、アルミニウム製品製造工場そして塩化ビニル製造工場の排水からダイオキシン排出が確認されている。これらが、確実にダイオキシン特別措置法の特定施設として指定されることが対策の一歩として重要であるが、殊に、塩化ビニル製造工場については、製造時に多量のダイオキシンを発生するプロセスがあることから、ダイオキシン特別措置法の対象とすることが不可欠である。

これまでに公にされてきた塩化ビニル(二塩化エチレン/塩化ビニルモノマー)製造業から排出されるダイオキシン類については、排水の他、排ガス濃度などの調査結果が提示されている。それらの結果には、二塩化エチレン/塩化ビニルモノマーの製造過程で生じる廃棄物の中に含まれるダイオキシン類についての調査が含まれていないが、この、業界で「ヘビーエンド」、あるいは「釜残」と呼ばれる、塩化ビニル製造時に出るタール状の廃棄物には、高濃度のダイオキシンが含まれているというグリーンピース(米国)の調査結果が出ている。

グリーンピースは米国で、1994年にこの二塩化エチレン/塩化ビニルモノマー製造廃棄物のサンプルを採取し、ダイオキシン分析を行った。この結果、それらの廃棄物には極めて高い濃度(ダイオキシン総量で761ppb~200750ppb)のダイオキシンが含まれていることが明らかになった。高いものは、枯葉剤エージェント・オレンジ製造時の廃棄物中のダイオキシンレベルに匹敵する濃度であった。

報告書は、米国の二塩化エチレン/塩化ビニルモノマー工場の廃棄物に関するものであるが、それら高濃度のダイオキシンを含む廃棄物を生み出している工場と同じ「オキシクロリネーション」プロセスを、日本の二塩化エチレン/塩化ビニルモノマー工場も使っている。
この「オキシクロリネーション」プロセスは、塩化ビニル業界自身が「ダイオキシン類の形成に必要なすべての成分と条件を満たしている。 …(中略… プロセスの反応を著しく損なわずにダイオキシン類の生成を防ぐために、条件をどのように変更し得るか判断することは困難である」(ICI 1994 Report to the Chief Inspector HMIP authorization AK6039)と述べ、ダイオキシン発生を認めている工程でもある。

塩化ビニルは、その製品が廃棄物として焼却される際のダイオキシン発生源として主に注目されてきたが、それ以外に、ダイオキシンインベントリーで高いダイオキシン排出が認められている電気炉や銅の回収などでも、塩化ビニルが工程への重要な塩素供給源となっている。これは、塩化ビニルが国内の塩素需要の3分の1を占める最大の塩素消費産業であることからもうなずけることである。
これに加えて、製造時廃棄物が高濃度にダイオキシン汚染を含む。

これらを考慮すれば、ダイオキシン特別措置法が、国内のダイオキシン発生や汚染をなくすため有効に施行されるためには、塩化ビニルを、製造段階を含めて、主要な対象とする必要がある。
更に、二塩化エチレン/塩化ビニルモノマー施設が水島、新南陽、徳島、川崎など閉鎖性の瀬戸内海や東京湾などに面した地域に作られていることを考えれば、廃棄物、排水のダイオキシンは殊更に厳しい対応が必要である。

更に、ダイオキシンを高度に含むこのような廃棄物の発生実態や処理方法、処理過程における汚染の排出についても詳細な調査結果はやはり提示されていない。このためグリーンピースは、二塩化エチレン/塩化ビニルモノマーからの製造廃棄物に含まれるダイオキシンに関する公的な調査、並びにその処理実態とその過程における汚染物質排出の調査を直ちに開始すべきことを併せて指摘した。