9月30日(木)に発生した茨城県東海村での核施設でのウラン臨界事故に関して、グリーンピース・ジャパンは10月1日(金)首相・通産大臣・科学技術庁長官宛に「原子力事業の全面的廃止に向けた国民的議論の開始に関する要請書」を提出した。

午前10時科学技術庁を訪問したグリーンピース・ジャパンの志田早苗事務局長は、有馬長官宛の要請書を科学技術庁職員に読み上げ、手渡した。
この後、グリーンピース・ジャパンのスタッフは「原子力発電に終えんを!」と大きく書いた横断幕を掲げ、志田事務局長が通行人、報道機関に対して、要請書の内容を繰り返し読み上げてアピールした。

今回の核臨界事故については、現時点では事実関係が明らかではないが、グリーンピースは今回の事故を起こした施設の即時閉鎖や今回の事故の原因についての、独立した調査機関による徹底した究明を、引き続き政府・中央省庁に訴えかけていく。

また、この核事故の陰に隠れたしまった感があるが、実は日本の原子力事業にとって大きな岐路となるプルトニウムMOX利用計画が本格的に開始されようとしている。
ちょうど10月1日(金)にはイギリスからのプルトニウムMOX燃料を積んだ輸送船が、関西電力高浜原子力発電所(福井県)に到着した。これは核兵器に転用可能なプルトニウムを含んでおり、東海村の核施設の事故と同様に、地球環境にとって大きな脅威となる極めて重大なニュースである。

グリーンピースは、核不拡散の観点からも、プルトニウムMOX燃料利用計画の即時中止を求めていく。


なお、今回の核施設事故およびプルトニウムMOX燃料利用計画に関するアピール先および主な問い合わせ先は次の通り。

■ アピール先 (政府、中央省庁)
内閣総理大臣、小渕恵三様
100-0014 千代田区永田町2-3-1 (電話:03-3581-0101)
通商産業大臣、与謝野馨様
100-8901 千代田区霞が関1-3-1 (電話:03-3501-1511)
科学技術庁長官、有馬朗人様
100-8966 千代田区霞が関2-2-1 (電話:03-3581-5271)

■ 今回の東海村の事故に対する問い合わせ先
茨城県東海村の相談窓
電話:029-287-0837|029-287-0831|029-287-0832
ファクシミリ:029-282-8969





内閣総理大臣、小渕恵三様
通商産業大臣、与謝野馨様
科学技術庁長官、有馬朗人様

原子力事業の全面的廃止に向けた国民的議論の開始に関する要請書


9月30日に発生した茨城県東海村の核施設でのウラン臨界事故と直後の住民に対する安全措置は、従来指摘されていた日本の原子力事業における安全対策が全く機能していないこと、そして何よりも原子力発電そのものの欠陥を露呈しました。日本の原子力発電史上の最悪の事故といえる今回の事故を通じて、残念なことにまさに放射能の脅威が現実のものとなってしまいました。

今回の核事故は、奇しくも関西電力高浜原子力発電所(福井県)に、核兵器転用可能なプルトニウムMOX燃料がヨーロッパから海上輸送され、到着予定の20時間前という、まさに日本でのプルトニウムMOX燃料利用計画の開始時に起こったという意味では、極めて象徴的な重大事故です。プルトニウムMOX燃料利用計画を通じて、政府と原子力産業は、安全の基準を無視することで商業的な利益を得ようとしていますが、地域住民の安全を確保することだけでなく地球環境の面から考えて、これは決して許されることではないのです。日本の安全対策が危機にある今、危険なプルトニウムを原子炉に使用すれば、大規模な核災害の確率がさらに高まってしまいます。

ドイツでは、既に国家として原子力発電所の廃止を決定しました。しかし、日本ではエネルギー安全保障対策、地球温暖化対策という名目で、今後原子力発電所を20基増設するという計画を政府は決めています。

つきましては、今回の核事故を科学技術への過信を戒める大きな教訓とし、地球環境への負荷をより与えないエネルギー政策に本格的に転換する機会ととらえ、原子力事業の全面的廃止に向けた国民的議論を緊急に開始するよう、下記の通り要請いたします。



今回の核事故を起こした施設の即時閉鎖
今回の核事故の原因についての、独立した調査機関による徹底した究明
日本におけるすべての核施設の安全確保体制の再点検
原子力に関するすべての安全審査体制の再検討
地球環境に大きな脅威となるプルトニウムMOX燃料の利用計画の即時中止
安全性、経済性、核不拡散などの諸観点からみて、何ら合理性のない核燃料再処理の即時中止
原子力に対して国と意見を異にするNGO、市民などからの十分な意見聴取
原子力発電を推進する日本のエネルギー政策についての全面的見直し、特に再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)への全面的転換
以上のすべてに関する徹底した情報公開

1999年10月1日
グリーンピース・ジャパン事務局長、志田早苗