【福井発】

来週福井県に到着予定のプルトニウムMOX燃料の品質に関する不確実性は、極めて基本的なものであるため、関西電力にとって、この燃料を高浜4号機に装荷する前にその安全性を保証することは不可能だと、今日、グリーンピースは述べた。

福井市での記者会見において、環境保護団体グリーンピースは、関西電力用のプルトニウムMOX燃料の集合体8体を生産したMOX実証施設(MDF)—–英国のセラフィールド再処理施設にある—–についての概略を説明した。また、問題点のいくつかについても説明した。

先週、マスコミの報道によって、MDFで製造されているプルトニウムMOXペレットに関する品質管理検査態勢が無視され、現在高浜3号機用に生産されいるMOX燃料のデータシートが捏造されたと言うことが明らかになった。
生産過程そのものという点でも、品質保証という点でも、MOXの品質は極めて悪いものであり、セラフィールドで生産されたMOXはすべて—–高浜4号機ように来週到着予定のものも含め—–廃棄すべきだと、グリーンピースは考える。

「原子炉の安全性とプルトニウムMOX燃料というのは、互いに相いれない概念である。いかに苦しいことであろうとも、関西電力は、利益追求よりも安全性を優先し、このプルトニウム燃料を放棄しなければならない」とグリーンピースのショーン・バーニーは述べた。

グリーンピースは、BNFLの環境面、核の安全性の両面でのひどい実績について説明し、関西電力が、9月27日に到着予定のパシフィック・ピンテール号に積まれているMOX燃料集合体に入っている225kgのプルトニウムの装荷を予定通り進めるとしたら、それは無責任というものだ、と述べた。BNFLと関西電力が提供している情報はまだ極めて限られたものだが、グリーンピースは暫定的な分析を行った。

データ捏造の行われたのは、BNFLによると高浜3号炉用だけに関連したもので、ペレットロット193ロットのうち、22ロットについて、品質保証データ捏造の疑義があるという。同じような形の品質管理体制の無視、データの捏造が、今年、初めに行われた高浜4号機用の生産過程においてなかったと信じるべき理由は見あたらない。

データ捏造スキャンダルとは別に、手作業の抜き取り検査(正確な外径の基準に合っているか否かを判定する)の段階で、MOXペレットの6.6%しか、日常的に検査していないという問題がある。このような数字は、他の産業過程においてなら品質保証を検討する際に十分な信頼区間と考えることができるかもしれないが、プルトニウムに関連した安全性の問題、公衆の健康に与えるリスクなどを考えれば、プルトニウムを扱っている産業としてはまったく不十分なものといえよう。

MDFのBNFLの内部告発者が先週述べたとおり、
「ペレットが大きすぎれば、膨張した際に燃料棒の被覆管を傷つける恐れがある。小さすぎれば、ペレットが振動を起こし、破損する恐れがある」(BNFLの従業員。インディペンデント紙に引用。9月14日)

日本に到着しようとしている高浜4号機用のプルトニウム燃料のペレットの寸法と均質性を確認するには、プルトニウムMOX燃料集合体の264本の燃料棒をすべて取り外し、それぞれ何らかのX線検査を行わなければならない。
X線は、燃料棒が8体の集合体の中に収まっている限り、すべての燃料棒を透過することはできない。ペレットの表面の均質性を検査するには、非分散性X線ミクロン検査が必要だが、これは、ペレット毎に行わなければならない。
関西電力がこのような検査を、恐らくはJNCの運転する東海村工場で行うとしても、日本で燃料集合体を組み立て直すオプションは存在しない。これは、BNFLが英国でやるしかない。

この燃料に残された唯一のオプションは、これを放棄し、非経済的で危険なプルトニウム計画を押し進めようとする日本の試みの新たな失敗として、帳簿から抹消することである。

「このプルトニウム事件に関わったすべての関係者が、関西電力も含め、安全余裕をすでに無視している。
核産業で基準が破られているという事実の一端が、産業側の透明性によってではなく、マスコミによって明らかにされた今、関西電力は、BNFLの低い品質水準を受け入れるのではなく、安全を重視しているとの姿勢を公衆に示して見せるために行動すべきである。これは、このプルトニウム燃料を高浜4号機に装荷しないこと、そしてヨーロッパへの返送もしないことを意味する」とバーニーは述べた。

[解説資料:BNFLの「品質」ミス/福井に迫り来る惨事]