【東京発】

東京電力福島第一原発用MOXプルトニウム燃料の、初めての海上輸送が完了しようとしている。
22日(水曜日)にも荷降ろしされる予定のMOXプルトニウム燃料の品質管理に問題があることを、グリーンピースは訴える。

福島に到着するMOX燃料の集合体32本(約221kgのプルトニウム燃料)は、ベルギー北部のデッセルにあるベルゴニュークリア社で製造された。

この工場は、70年代初頭に稼働し始め、ヨーロッパの中の核燃料製造施設の中では最も古い製造技術を採用している。このため、製造したものの20~30%が品質検査ではねられるという、製造効率の悪さである。つまり、10トンのなかで、2トンから3トンまでの燃料が標準のレベルに達していない。
また、ベルゴニュークリア社では、イギリスのセラフィールドMOX工場で用いられている品質管理工程と似た工程を行っていると、グリーンピースは聞き及んでいる。
そのセラフィールドMOX工場は、先週、高浜原発用のペレット製造に際して、品質検査データをねつ造するとういう、大きなスキャンダルを起こしている。

ベルゴニュークリア社の品質管理の問題もあるが、最終的にMOX燃料を集合体にするのは5M工場である。同工場は、CogemaがオーナーであるFBFC(Franco-Belge Fabrication Company)が運営している。
東京電力福島第一原子力発電所の3号炉用の32本のMOX燃料集合体は、5Mが組み立てた。現在、5Mは、柏崎刈羽3号炉用に契約を受けて、さらに28本の集合体を製造中である。

この5Mは、正式な法手続きを踏まずに建てられた違法な工場である。

FBFCは、ベルギーの原子力に関する法令によって義務化されている公な議論(公聴会など)をせずにこの工場を建てた。その地域の周辺住民には、法的に義務づけられているはずの、建設に反対する機会も与えられないままに、ベルギーの核施設が拡大されたわけである。グリーンピースはこの件に付き、ベルギーの最高裁判所に提訴している。

グリーンピースはかつて、ベルゴニュークリア社のMOX燃料工場建設計画に対して1992年に提訴し、建設差し止めの判決を勝ち取っている(1998)。
このときのベルゴニュークリア社に対する裁判よりも、今回のFBFCに対する裁判のほうが勝算は高いと、グリーンピースの弁護士は確信している。

「この、核兵器に加工可能なMOXプルトニウム燃料の海上輸送は、まもなく福島に到着し装荷されようとしているが、ペレットの品質が非常に問題になる可能性が高く、この燃料を用いられる原子炉の安全面に大きなリスクを与える。
しかも、正式な法的手続きを踏まずに作られた施設で製造されたのである。
繰り返し述べているようにこのMOXプルトニウム燃料は、そもそも安全性を無視した燃料であり、経済的に非常に高くつく燃料である。東京電力がこれを原子炉に装荷するということは、原発の危険性をさらに高める行為である。
危険で、しかも必要のないプルトニウム利用計画をあきらめることは、まだ遅くない」
と、グリーンピースの核問題担当ショーン・バーニーは言った。

グリーンピースは本日、キャンペーン船アークティック・サンライズ号を、福島県沖に派遣した。MOXプルトニウム燃料の到着を目撃し、世界に向けて発信するとともに、MOXプルトニウム燃料の危険性を訴える予定である。


■ アークティック・サンライズ号

元々地震調査船としてノルウェーで1975年に建設され、後に外洋航行機船に改造された。砕氷船としての装備を完備している。1995年にグリーンピースが極地用に購入した。オランダ船籍、総トン数949t、船長49.62m。

船長:ピーター・J・ブーケット(英)。乗員は21名、11カ国にわたる。