英国原子燃料会社(BNFL)は9月14日、関西電力の高浜原発4号機に導入する予定の同社製MOXプルトニウム燃料に関して、ペレットのサイズに関する検査データがねつ造されていた疑いがあることを発表した。

関西電力と東京電力および日本政府は、これまで福井県及び福島県の原発安全担当者に対して、同県内の原発でのMOXプルトニウム燃料使用を許可するようにかなりの圧力をかけてきていた。
しかし、今回のデータねつ造スキャンダルのおかげで、MOXプルトニウム燃料の安全性に関する信頼関係に大きな亀裂が入った。また、これを機に福島と福井では、使用に関して大きな論議を巻き起こすことになるだろう。

プルトニウムMOX燃料は、本来大変危険な物質である。製造・輸送・使用の各段階で環境を破壊し、いたるところで核拡散の脅威を引き起こしている。加えて安全性を軽んじた傲慢な原子力産業界は、破壊へのシナリオを自ら着々と書き進めている。
日本は直ちにプルサーマル計画を中止し、プルトニウムMOX燃料の使用をやめて、人々の健康を脅かすような原子力産業界の策略に妥協することなく、現在そして次世代のために将来のエネルギー需要と合致する本当の解決策を見つけることに集中しなければならない。

プルトニウムMOX燃料を積んだ2隻の英国籍の輸送船は、来週には日本に到着し、これよってヨーロッパから日本へのプルトニウムMOX燃料の海上輸送が初めて完結する。この輸送に関しては、日本政府及びBNFL、関西電力などは、くり返し一方的に「プルトニウムMOX燃料は安全である。信頼して欲しい」と説明し、海上輸送を強行した。

海上輸送ルートに面している国々は、ただ彼らの説明を信じるしかない状況が続いているが、今回のスキャンダルで明らかになったのは、沿岸国に対する裏切りである。

関西電力の代表者は、この(データねつ造が行われたプルトニウムMOX燃料の)品質管理検査の際にはセラフィールドで立ち会っており、彼らもまた責任を逃れることはできない。

我々は本日、関西電力に対して、要請書を送付し、データねつ造疑惑に関して、詳細な情報公開を求めるとともに、現在輸送中のものを含むすべてのプルトニウム燃料の使用を中止することを求めた。

我々は日本政府に対して、全ての原子力産業から独立した在野の専門家を起用して、このスキャンダルを解明するよう求める。

原子力産業はもはや自己管理能力を失している。


原子力情報資料室:03-5330-9520
グリーンアクション:075-701-7223
グリーンピース・ジャパン:03-5351-5409




1999年9月14日
株式会社関西電力、秋山喜久殿

グリーンピース・ジャパン・事務局長、志田早苗
グリーン・アクション・代表、アイリーン美緒子スミス
原子力資料情報室・共同代表、伴英幸

要請書


貴社ならびに資源エネルギー庁が本日発表したMOX燃料製造の「データねつ造疑惑」について、私どもは深刻な問題だと厳しく受け止めています。検査不足のペレットが燃料棒に思わぬ傷を与え、放射能漏れの原因ともなりかねません。さらに、BNFLとの契約にかかわる貴社のチェック体制や品質保証にも問題があったと考えます。

このようなデータねつ造事件は、古くは日本分析化学研究所事件、近くは伸光による焼鈍データ改ざん、輸送容器のレジンデータ改ざんと後をたちません。海外でも同様の事件が相次いでおり、かねてより安全性に懸念を抱いていた私たちは、世界の原子力産業の腐敗を確信しました。

今のところねつ造は高浜3号炉用のMOX燃料だけだといわれていますが、それにとどまるのかどうか極めて疑わしい、高浜4号炉用の燃料にも同様の不正が行われていても不思議はないと、私たちは思っています。不正が明らかとなった現在、MOX利用に福井県民の合意は得られないでしょう。

私共3団体は、以下を要請いたします。

このデータねつ造疑惑の下記のような詳細な情報を公開すること。
貴社が燃料製造工程においてどのような品質管理を行ったのか、チェックをどのように行ったのか、果たして不正はこの範囲にとどまるのか、ペレット製造工程全体の問題ではないのか、など

現在輸送中のものを含むすべてのプルトニウム燃料の使用を中止すること。