9月11日、100カ国以上の国々が、残留性有機汚染物質(POPs)を地球規模で規制する条約策定のための第3回政府間交渉委員会(INC3、ジュネーブ)が終了した。

米国、カナダ、オーストラリア、日本、韓国は、条約の草案中に “発生・排出をなくすことを目標に(with the aim of elimination)” という文言が入ることに反対を唱えたが、EUをはじめ国際社会は、”全廃の目標のもとにPOPsを削減する” ことに対して強い支持を表明した。

INC3が終了した段階で、”発生・排出をなくすことを目標に(with the aim ofelimination)” という文言は、[ ]の中に入ったまま草案中に残っている。

“発生・排出をなくす” という目標なしには、POPs条約は環境や健康をまもるために有効なものとはなり得ない。米国、日本などは、発生・排出をなくす代わりに “コントロール” “管理” するという道を選ぼうとしており、これは事実上、ダイオキシンのさらなる増加と蔓延とを促すものである。

同会議で、日本の政府代表の一人は9日、INCで対策が検討されている、POPsのうち、非意図的POPs(ダイオキシン類など)に関する会合(コンタクト・グループ:9月9日18:00-21:00開催)において、POPの「発生・排出をなくす(elimination)」ことは不可能で、その目標(elimination)は受け入れられない、と発言していた。

しかし、日本政府の公式な立場は「発生・排出をなくす(elimination)」に反対ではなく、支持することを合意しているはず(外務省 *)であるという。

* 外務省地球規模問題課から福島瑞穂国会議員への確認の回答。(9月9日及び10日)

会場で傍聴したグリーンピース担当者に確認したところ、現地で反対発言を行った日本代表は、廃棄物処理(焼却)を担当する厚生省環境整備課の課長補佐 Yasuo Takahashi氏であることがわかった。

健康を守る役割を負っているはずの厚生省が、地球規模で対策を決めるINC3の会合の場で、ダイオキシン等のPOPsの全廃に反対を唱えたということは、人々の健康や環境の安全よりも焼却行政を優先した発言として責任重大である。

残留性の有害化学物質は、環境に長く残留し、発生もとから離れて長距離を移動し、生体蓄積・食物連鎖による濃縮を経て、胎児や母乳を汚染し次の世代を脅かす。このような化学物質が食物連鎖に入り込むのを止める唯一の有効な手段は、汚染を防ぐ政策をとることである。 POPsの発生・排出をなくすという目標を、素材物質の転換や、より有害物質の発生しない工業プロセスの開発・導入などによって達成することこそが、将来の世代が有害物質のない未来を享受することを保障できる。

今回は、参加国の多数が、DDTやPCB、ダイオキシンなどの有害性の強い化学物質の “発生、排出の全廃(elimination)” を支持したことから、総体では会合の結果を肯定的に評価してよいと考えられる。
次回の会議は2000年3月にドイツ・ボンで開かれる。世界が、こうした残留性が強く地球規模の汚染を引き起こす物質の “発生、排出の全廃(elimination)” を公約できる最後の機会.になろうと思われる。

また、有害物質をなくすために公正で迅速かつ効果的な前進のために、世界でも最も資金のある国々が、財政的、技術的なより強い支援を約束することが期待されている。