国際環境保護団体グリーンピースは、本日福島県政記者クラブでの記者会見で、「東京電力福島第1原発3号炉でのMOX(混合酸化物)燃料使用計画は、未解決の安全性上の問題を残したままになっており、福島県はこの問題について再検討すべきだ」とMOX使用の危険性を訴えた。

ベルギーからフランスへの初めてのMOX燃料輸送は、3週間以上遅れている。

「プルトニウムの危険性は、製造、輸送、使用のすべての段階にある。原子力産業は、ここ何年も安全性の問題を過小評価してきた。
福島で使用されるMOX燃料は、MOX使用経験のあるヨーロッパですら、まだ解決していない内在的な安全性の問題を抱えている。東京電力、原子力安全委員会、福島県は、これらの問題を無視し、危険な計画を押し進めようとしている。
福島県はただちに東京電力のプルサーマル計画を中止し、透明性のある安全審査を実施すべきである」
と、グリーンピースのショーン・バーニーは述べた。

福島に運ばれる予定のMOXプルトニウム燃料に関する安全性問題で、最も重要なのものの一つは、燃料を製造したベルゴニュークリア社が使用している技術「MIMAS」である。
この技術だと、ウランとプルトニウムを混合してできるMOX燃料の中に際にプルトニウム含有量の多い固まりが局所的にできてしまうのである。フランス政府当局もこれを安全性上の問題として認めており、その結果、フランスでMOX燃料の使用が許可されている17の原子炉でも運転方法に規制が加えられているのである。

これは、全く同じタイプのMOXプルトニウム燃料を使用する予定の東京電力と福島県にとって重要な問題である。現在の「MIMAS」方式で製造されたMOX燃料の場合に生じる不均一性に伴う安全性問題は、何年も欧州で調査されてきたが、現在まで解決策もない状況である。
「MIMAS」は、ベルゴニュークリア社がデッセルのP0工場で使用されている技術である。この方式で作られたMOX燃料が炉内で燃やされると、プルトニウムの含有量の高い固まりの部分では、燃焼度が高くなってしまう。このため、運転中に炉内の中性子分布が影響を受け、安全性余裕が低くなってしまう恐れがある。
フラマトム社の核燃料部の生産開発長であるジャン・ピエール・マルコン氏は、プルトニウムの不均一な固まりの問題をMIMASに「内在的な」ものと表現している(Nuclear Fuel, 1995年11月号)。

「MIMAS」の抱えるこの問題は、関西電力のMOX製造を行っている英国のシーメンス/BNFLの技術では、少なくとも同程度には起こらないことになっている。

しかしながら、新たな商業契約を獲得するという欧州のMOX製造工場間の激しい競争のため、ベルゴニュークリア社/コジェマ社、シーメンス/BNFLは、それぞれ、自社の技術が最も先進的かつ高品質であるという触れ込みで、売り込みを行っており、その中で安全性問題について不誠実なことを言うまでにいたっているのである。
これが最近顕著に表れたのが、ウィーンで開かれた国際原子力エネルギー機関(IAEA)でのMOX会議でのベルゴニュークリア社幹部の発言である。彼らは、「MIMAS」方式では、「細かく分散され、プルトニウムの多い部分はほとんど形成されない」と述べたのである。

しかしながら、フランス政府の施設で行われているMOXに関する国際的な研究計画の責任者は、MIMAS方式の「MOXは、同じような燃焼度ではUO2(ウラン)に比べ破損の可能性が高くなる。」(Franz Schmitz, Institute of Nuclear Safety and Protection, NRC/Industry meeting, Rockville, アメリカ, 1997年12月)と述べている。
フランスのカブリ研究炉で実施されたこの研究は、1993年から98年にかけて行われたもので、日本原子力研究所も一部出資している。それにもかかわらず、東京電力は、MIMAS方式で製造されたMOXの使用計画を推し進めようとしている。以前に東京電力は、「燃料の質に関する仕様は、欧州の標準に比べより厳しい日本の標準に合わせるべきである」と述べていた(市民団体に対する東京電力幹部のコメント・1996年5/6月号 Tokyo Nuke Info)はずである。

「安全審査当局と東京電力がリスクを十分に理解していないにもかかわらず、福島県は危険な原子力発電の実験に手を貸そうとしている。東京電力が私達にどう言おうと、欧州で利用されている同様の危険なプルトニウム燃料が福島の人々を危険にさらそうとしている、ことに変わりはない。何としてもこれを止めさせなければならない」
と、ショーン・バーニーは語った。


[参 考]

ベルギーでのMOXプルトニウム燃料の契約は、プルトニウム燃料製造会社COMMOX社(コジェマ社とベルゴニュークリア社の合弁)と東京電力と契約している東芝の下で進められている。COMMOX社は欧州で2つのMOXプラントを所有しており、ベルギーにあるベルゴニュークリア社とフランスにあるメロー社がそれらの実質的な運転を行っている。
福島向けの燃料は、ベルギーの北オランダとの国境の町デッセルで製造されている。最終製造は、ベルゴニュークリア社からほど近いFBFC社(コジェマ社とフラマトム社の合弁)で行われている。